シアに案内され、ルナは街中を少し歩いた後、小さな宿屋の看板の下で足を止める。
宿屋は木造りで、家族で営んでいるらしく、奥には薬屋も併設されている。
「ここが私たちの家なんです。
宿屋と薬屋を一緒にやっているんですよ。」
「えっ、シアさん家ですかにゃ?
ご家族で頑張ってるんですねにゃ!」
ルナが微笑むと、コメント欄が反応する。
にゃん民: 宿屋と薬屋併設とか便利すぎ
にゃん民: 家族経営RPG感あるw
にゃん民: 母親が薬屋で、おばさんが宿屋担当かな?
中に入ると、威勢のいいおばさんが笑顔で出迎える。
頬が赤らんだ優しげな女性で、エプロンを身につけている。
「あら、シア、帰ったのね!
……その方は?」
「おばさん、ルナさんっていう冒険者さんです。
私が襲われていたところを助けてくれたんです!」
「ええっ、本当なの!?
まぁ、なんてお礼をしたらいいか……」
おばさんは感激して目頭を押さえる。
にゃん民たちは「いいおばさんっぽい」「優しそう」とコメントで盛り上がる。
「今、母は体調が悪くて自室で寝てるんです。
だから薬屋の方はしばらく私が手伝っているんですが……
とにかく助けてくださったお礼に、今晩の宿代は無料でいいですよ!」
「え、無料でいいんですかにゃ?
そんな、悪いですにゃ……」
ルナは恐縮した様子で頭を下げる。
「気にしないで!あなたはシアの命の恩人だもの。
宿代くらいサービスさせて。
あと、夕飯も食べていってちょうだい!」
「い、いえ、それはさすがに……」
コメント欄にも「やったあ飯タダ!」「ルナちゃん大勝利!」などの声が沸くが、ルナは躊躇する。
「みにゃさん、食事まで無料はちょっと申し訳ないですよねにゃ……
私、お礼はしたいんですにゃ。」
ルナはあわててカバンを探るが、手持ちの通貨がない。
思わず困った顔になる。
「……手元にお金がないですにゃ。
魔石を売ればいいのかにゃ……?」
にゃん民: あ、そういえばスペチャあるよね?
にゃん民: スペチャで引き出しとかできるのかな?
「スペチャ……
そういえば配信画面に『引き出し』みたいなアイコンがあるですにゃ!」
ルナは試しにVTubeスタジオのUIをいじると、「換金」ボタンらしきものを発見。
押してみると、次の瞬間、手元にこの世界の通貨「ゴルド」が出現する。
「出た……!これがゴルドですかにゃ!?」
驚くルナに、コメント欄も大興奮。
にゃん民: スペチャ換金キタwww
にゃん民: 3割取られたりしないの!?
にゃん民: リスナーが出資してるようなものか?
「おばさん、このゴルドで食事代を払いますにゃ!」
「まあ、すごいわね。どこからそんな……
でも助けてもらったんだし、そんなに気を使わなくても」
「いえ、シアちゃんのお母さんが大変な時にわるいですにゃ。
せめて食事代だけでもお支払いさせてください!」
感動的な言葉に、コメント欄は拍手喝采。
にゃん民: いい子すぎる!
にゃん民: 美味い飯をゴルドで払うルナちゃん偉い
にゃん民: 我々の視聴が飯代になったw
にゃん民: よかった、我々のスペチャはホストに消えはしなかった(涙
おばさんはにこりと笑い、しばらくすると温かなスープやパン、野菜たっぷりの料理がテーブルに運ばれてくる。
「これが異世界飯……みにゃさん、本当にありがとうございますにゃ。
これ、めちゃくちゃ美味しいですにゃー!」
ルナは感動しながら頬張り、コメント欄も「うまそー」「飯テロ!」「本当に食べてる?」と盛り上がる。
こうしてルナは、にゃん民たちの力で手に入れたゴルドを使い、異世界の宿屋で温かい食事を楽しむことができた。