シャムは薄暗い一室で、自分の配信を終えた後、虚空を見つめながら回想に沈んでいた。
窓もない、朧な光が揺れる室内は、冷たく殺伐とした雰囲気に包まれている。
(……昔から、あたしはずっと寂しかった)
子供の頃、両親は仕事か何かに忙しく、ほとんど相手をしてくれなかった。
家には物質的な豊かさはあっても、温かい言葉や愛情は欠けていた。
(誰もあたしを見てくれない。誰もあたしを肯定してくれない)
手近な手段で注目を集めるため、若い頃から男に媚び、甘ったるい声を出し、身体を投げ出してきた。
VTuberになった後も、その癖は変わらず、事務所のマネージャーが少し優しくしてくれただけで心を傾け、関係を持った。
(なのに、あの男は結婚してたんだって?ふざけんな)
復讐するしかなかった。
配信でマネージャーを晒し上げ、醜態をさらし、諌めてきた同期VTuberを逆恨みし、個人情報まで掲示板にばらまいた。
そうすれば、あたしが痛い目を見る?知ったことじゃない。どのみち誰もあたしを本当に愛してなどいない。
ならば世界を憎み、世界から奪うしかないのだ。
(全部敵だ。
あたしより可愛いやつ。
あたしより人気があるやつ。
あたしを認めないやつ。
みんな消えればいい)
シャムは唇を舐めるように歪め、眉をひそめる。
ふと耳に入った噂——あのVTuber、猫神ルナが復活したという報せを聞いて、血が煮えたぎるような怒りがこみ上げる。
(あんなおばさん、中身がバレて人気が落ちると思ったのに……
復活したって?許せない、許せない!)
両手で髪を握りしめ、シャムは細い声で呟く。
「地獄に叩き落としてやる……もう一度、アイツを粉々にして、泣かせてやる。
VTuberなんて、このあたし一人でいい。
アイツがまた上がってくるなら、何度でも叩き落としてやるわ……!」
嫉妬と憎悪が混ざり合い、シャムの瞳は暗い炎に包まれる。