ドワーフの里から少し離れた荒野で、猫神ルナは押し寄せるハイオークの群れと対峙していた。
ユニコーンを後方に待機させ、ネコ発勁(はっけい)やにゃんこ百烈掌を駆使して応戦するが、どうも手応えが重い。
「みにゃさん、何か変ですにゃ……いつもより敵が硬い気がするにゃ!」
ハイオークの分厚い皮膚に拳が沈み込むものの、以前ほどの決定打になっていない。
コメント欄も不穏な空気を感じ取っているようだ。
にゃん民: これヤバいんじゃないか?
にゃん民: 攻撃通りにくい…?
にゃん民: まさか同接下がってる?
ルナははっと気づき、自分のステータスを確認する。
「同接が……いつもよりだいぶ減ってますにゃ……どうして?」
にゃん民が理由を説明してくれる。
にゃん民: だって今大手企業Vから何から大量に来たから異世界Vチャンネルが飽和状態
にゃん民: しかもヴァリンとかいうやつが魔王軍殲滅配信やってるんだよ
にゃん民: さらに天照ニニギが戦力を集めようとチャリティー配信してるらしいし
ルナは驚きと共に、少し寂しそうに目を伏せる。
「ヴァリンさんが魔王軍を……ニニギさんもチャリティー配信を?
なるほどにゃ、そりゃあ私の同接が下がるはずですにゃ……」
にゃん民: 許せねえよ、裏切り者だろ!
にゃん民: みんなルナちゃん一筋でいてほしい!
にゃん民: 裏切り者…は言いすぎかもだけど、俺たち古参からすりゃ複雑
ルナはすぐに首を振る。
「みんな、そんな言い方しないでにゃ。VTuberが増えるのはむしろ嬉しいですにゃ。
いろんな人が配信を楽しんでくれるなら、それはとても幸せなこと……」
それでもハイオークは待ってくれず、ルナは必死に拳を繰り出してようやく群れを追い払う。
同接が下がっているせいで、ステータス補正も弱まり、辛うじて勝利を収めた形だ。
「はぁ、なんとか……」
疲れた息を整えながら、ルナはコメント欄から新たな情報を拾う。
にゃん民: そういえば天照ニニギがVTuberをインフルエンス教国に集める宣言出したぞ
にゃん民: みんなそこで保護してるらしいよ
にゃん民: ニニギってネコノミコトなんだっけ? マジで会いたくね?
ルナの瞳が一気に輝く。
かねてから憧れていたネコノミコトがこちらの世界に来ている!?
「ニニギさんがいるなら、ぜひお会いしたいですにゃ!
あの伝説のVTuberに……!」
にゃん民: 来たああ!ルナちゃん大興奮!
にゃん民: 夢のコラボ待ったなし!
「よーし、進路変更ですにゃ。インフルエンス教国へ向かいますにゃ!」
ルナはユニコーンに乗り込み、疲れをこらえつつも熱い想いを胸に抱き、天照ニニギの元へと進路を定める。
にゃん民も「行け行け!」と後押しし、配信は興奮に包まれていた。