目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

9-6 同接Down

 ドワーフの里から少し離れた荒野で、猫神ルナは押し寄せるハイオークの群れと対峙していた。


 ユニコーンを後方に待機させ、ネコ発勁(はっけい)やにゃんこ百烈掌を駆使して応戦するが、どうも手応えが重い。


「みにゃさん、何か変ですにゃ……いつもより敵が硬い気がするにゃ!」


 ハイオークの分厚い皮膚に拳が沈み込むものの、以前ほどの決定打になっていない。

 コメント欄も不穏な空気を感じ取っているようだ。


にゃん民: これヤバいんじゃないか?

にゃん民: 攻撃通りにくい…?

にゃん民: まさか同接下がってる?


 ルナははっと気づき、自分のステータスを確認する。


「同接が……いつもよりだいぶ減ってますにゃ……どうして?」


 にゃん民が理由を説明してくれる。


にゃん民: だって今大手企業Vから何から大量に来たから異世界Vチャンネルが飽和状態

にゃん民: しかもヴァリンとかいうやつが魔王軍殲滅配信やってるんだよ

にゃん民: さらに天照ニニギが戦力を集めようとチャリティー配信してるらしいし


 ルナは驚きと共に、少し寂しそうに目を伏せる。


「ヴァリンさんが魔王軍を……ニニギさんもチャリティー配信を?

 なるほどにゃ、そりゃあ私の同接が下がるはずですにゃ……」


にゃん民: 許せねえよ、裏切り者だろ!

にゃん民: みんなルナちゃん一筋でいてほしい!

にゃん民: 裏切り者…は言いすぎかもだけど、俺たち古参からすりゃ複雑


 ルナはすぐに首を振る。


「みんな、そんな言い方しないでにゃ。VTuberが増えるのはむしろ嬉しいですにゃ。

 いろんな人が配信を楽しんでくれるなら、それはとても幸せなこと……」


 それでもハイオークは待ってくれず、ルナは必死に拳を繰り出してようやく群れを追い払う。

 同接が下がっているせいで、ステータス補正も弱まり、辛うじて勝利を収めた形だ。


「はぁ、なんとか……」


 疲れた息を整えながら、ルナはコメント欄から新たな情報を拾う。


にゃん民: そういえば天照ニニギがVTuberをインフルエンス教国に集める宣言出したぞ

にゃん民: みんなそこで保護してるらしいよ

にゃん民: ニニギってネコノミコトなんだっけ? マジで会いたくね?


 ルナの瞳が一気に輝く。

 かねてから憧れていたネコノミコトがこちらの世界に来ている!?


「ニニギさんがいるなら、ぜひお会いしたいですにゃ!

 あの伝説のVTuberに……!」


にゃん民: 来たああ!ルナちゃん大興奮!

にゃん民: 夢のコラボ待ったなし!


「よーし、進路変更ですにゃ。インフルエンス教国へ向かいますにゃ!」


 ルナはユニコーンに乗り込み、疲れをこらえつつも熱い想いを胸に抱き、天照ニニギの元へと進路を定める。


 にゃん民も「行け行け!」と後押しし、配信は興奮に包まれていた。




この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?