ルナはユニコーンを連れて、インフルエンス教国の中心地へとやってきた。
石造りの街並みは、魔王軍の襲撃の名残が随所に見られ、崩れた建物や焦げた壁面が痛々しい。
しかし、道端では復旧作業に励む人々の姿があり、その表情にはどこか明るさが漂っていた。
「ふああ、すごいところですにゃ。
こんなに破壊されているのに、みなさん元気そうに見えますにゃ。」
ルナが目を丸くして街を見回すと、コメント欄も新情報を教えてくれる。
にゃん民: ニニギが連れてきたVSinger系VTuberが毎晩ライブやってるらしいぞ
にゃん民: 戦えないけど、歌でバフかけられるってウワサ
にゃん民: だから士気が上がってるんだな
「へえ〜。VSingerさんがライブで歌って、みなさんを元気にしてるんですねにゃ。すごいですにゃ。」
道行く人々はルナの姿を見ると、敬意をこめた軽い礼などをしてくれる。
どうやら天照ニニギが呼びかけた“VTuber保護”の取り組みが成功しており、街の雰囲気は明るく保たれているようだ。
やがてルナは、教国のシンボルでもある大きな教会の前へと足を止める。
白く高い石の壁には女神インフルエンシディアのシンボルが刻まれ、信仰の重みを感じさせる。
「ここがニニギさんのいる教会……き、緊張するにゃ……」
大きな扉を押して中に入ると、天井の高い聖堂が広がり、ステンドグラスから差し込む光が床に優美な模様を描いている。
ルナは思わず息を呑むほどの神秘的な空間だ。
「お待ちしていました、ルナさん。」
奥まった場所から聞こえてきた声に振り向くと、そこには黄金の髪と猫耳、頭上に天輪を戴いた天照(てんしょう)ニニギの姿があった。
圧倒的な存在感を放つニニギは、穏やかな笑みを浮かべ、ルナに歩み寄る。
かつてネコノミコトと呼ばれた伝説のVTuberが、本当に目の前にいるのだ。
にゃん民: うおおおお!ついに邂逅!
にゃん民: ルナちゃん、念願の対面か…胸熱!
ルナの胸は高鳴り、思わず声が震えるほどの感動を覚えていた。
彼女の憧れでもあるVTuberが、今は異世界に降り立ち、教国を守る救世主となっている。
「ファ、ファンです! 握手してください!」