(ひゃはあ! 時を戻したところで状況は何も変わらない。愚か、おろか!)
巻き戻された時空を見ながら、マリシャスヘイターは内心の興奮を隠しきれずに小躍りするように笑う。
「デス・ストリングス! さあ、再度奴を貫くのだ――」
パアンッ!
鋭い銃声が響くと同時に、ヘイターの糸がルナの心臓への軌道から強引に逸れてしまう。
まさに一瞬の横槍に、場の空気は凍りついた。
「ルナさん! 大丈夫ですか!?」
声をかけてきたのは、崩れかけた建物の屋上に陣取り、スナイパーライフルを構える小盛(こもり)めしだった。
隣には美射流(びいる)ぐびと狗田しゃけもいる。ばえすぽっ!9期生の3人組が、颯爽と現れたのだ。
「ま、間に合ったにゃ……!」
ルナは胸をなで下ろす。
「な、何? なぜ援軍がいるんだ!?」
マリシャスヘイターが動揺し、木製のお面の奥で表情をこわばらせる。
ルナは応えるように、口を開いた。
「Vスキル〈シーク〉で巻き戻せるのは“配信内の時間だけ”なんですにゃ。
配信外で駆けつけてくれたばえすぽっ!の皆さんには、その巻き戻しは適用されないってことですにゃ!」
にゃん民: なるほど、だから助けが呼べたのか!
にゃん民: ばえすぽっ!熱すぎ!
ばえすぽっ!の3人が、それぞれ武器を構え直す。しゃけがライフルを指差して合図し、ぐびが前衛に進み、めしが長距離射撃の体勢を整える。
「さあ、ここから反撃開始ですにゃ!」
ルナがユニコーンに指示を出し、シャムを回収し安全圏へと避難させる。
体のダメージはなかったことになったが、死の記憶がシャムの精神にダメージを与えているようだ。