崩れ落ちた城壁の向こうから、か細い声が聞こえてきた。
傷だらけで瓦礫に埋もれたニニギが、必死に声を張っているらしい。
「……ルナ、ちゃん……あなたに……すべてを……託す……から……」
かすれたその声は、奇跡的にルナの耳へ届いた。
ハッと息を呑んで振り返ると、ニニギが震える腕でVTubeスタジオを操作しているのが見える。
ルナの眼前にコラボ申請受け入れの通知が立ち上がる。
「ニニギさん……!」
ルナは戸惑いながらも、そのUIをタップする。
すると、ほかの仲間たちからも次々と“コラボ申請”が一斉に届き始めた。
「こ、こんなにいっぱい……どどど、どうしたら……?」
ルナは動揺しつつも、次々と画面に溢れる“OK”ボタンを連打し、すべての申請を受け入れ始めた。
「……ルナちゃん、あなたはいつも笑顔で配信をして、自分も視聴者も楽しませてきた。
それこそがVTuberという存在の理想形。
だから、私たちの力を、あなたに託すわ……!」
「ルナ!あいつを倒すのよ!!」
「ルナ先輩!私たちの力を使ってください!」
脳裏に響く仲間たちの声に、ルナの目に涙が滲む。
まだ立ち直れない自分を、みんなが信じてくれている。 いま、応えなければ――。
「みにゃさん……わたし、やりますにゃ……!」
突如、ルナの身体から金色の光が溢れだす。
まるで世界の闇を払うような輝きが広がり、VTuber連合がバフを乗せ合った“最後の連合コラボ”が完成する。
「にゃ……猫神ルナ、アマテラスモード……!」
羽衣を纏うかのように柔らかな衣装に変わり、頭上には天輪が浮かぶ。
ドラゴンから漏れ出す漆黒のブレスがまたしても迫ってくるが、ルナは空へ大きく飛翔して、それを躱した。
「ファンのみにゃさんがいる限り、VTuberは絶対に滅びません!
わたしが証明してみせるにゃ!」
その一声に、炎を吐こうとしていたドラゴンの動きが一瞬鈍る。