魔王城の廃墟周辺には、VSingerたちが歌うバフの旋律がかすかに届く。だが、ドラゴンの威圧感はその上をいくように感じられた。
「撃てー!」
誰かの号令に合わせて、一斉に魔法や銃弾がドラゴンへと雨のように降り注ぐ。
しかし、漆黒の鱗はまるで要塞のように硬く、光の残滓が散るだけで大きなダメージを与えられない。
シャムも死神の鎌リッパーを構えて突撃するが、その巨体に振り回された尻尾の一撃を受け、弾き飛ばされてしまう。
空中で何度か回転し、地面に激突するシャムの姿に、コメント欄が悲鳴を上げる。
にゃん民: シャム、今のはヤバくね!?
にゃん民: 大丈夫かよ!
シャムは立ち上がろうともがくが、呼吸が乱れ、傷が深いようだ。
他のVTuberたちも同じようにドラゴンのブレスや尻尾攻撃で一人また一人と倒されていき、空気が重苦しい絶望感に包まれる。
「くっ……こんなの、どうすれば……」
ニニギが汗だくになりながらも意地で空中へ舞い上がり、最後の切り札を放つ体勢をとる。
「神魔滅却――アマテラスブラストッ!」
その宣言とともに、天輪が輝き、ニニギの両手から極太の光線が走る。
ドラゴンの胸部を盛大に貫くように命中し、漆黒の鱗が一瞬で砕け散る。
確かなダメージを与えたはずだった。しかし、ドラゴンは反撃のブレスを直後に吐き出し、ニニギを真下へと叩き落した。
「ニニギさん……っ!」
ルナが叫ぶも、時すでに遅く、ニニギは瓦礫の山に叩きつけられ動かなくなってしまう。
VTuber連合の仲間たちも、次々に力尽きていく姿が視界に入り、絶望感がルナの胸を締め付ける。
「わ、わたしには……無理なんだにゃ……」
“美咲”としての弱い心が顔を出し、ルナの中を侵食する。
「はぁ……やっぱりわたしには……無理なんだ……」