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1魔.無双戦姫インフレーション
1魔.無双戦姫インフレーション
すたーげいざー
異世界ファンタジー冒険・バトル
2025年04月17日
公開日
1.7万字
連載中
剣と魔法のファンタジー世界。 レベル1~99の勇者と魔王が主役の王道的な世界。 しかし、それらはいつしか戦姫という 規格外の戦闘レベルを持つ少女達の登場によって 瞬く間に過去の物となってしまった。 彼女達の戦闘レベルは100から千万億兆京それ以上の者までおり、それらを競って戦う彼女達の手に世界の実権は握られていた。世界を彼女達から取り戻すには強くなるしかない。 レベル1の勇者レックス。転生を繰り返した勇者の魂には無数の星が刻まれている。

第1話 圧倒

━━━━転移した先はコロシアムだった。


「あははは!みたまえ、クズ同士が滑稽に戦う様を!!」


記憶が朦朧としている。何かされたか?


「異界の人間だと?ハッ、見ものじゃないか。」

「賭け金を20倍!!2000億賭けよう!!」


ギラつく快晴の日光に照らされた観客はその高貴な服装に似合わない下劣な欲望の嘲笑で、俺達を見下している。


『アユザキイチマ、レベル5』

『ツリル・オハゲッサ、レベル15』


魔法かなんだか知らないが、アナウンスが流れる。


目の前のみすぼらしい中年の男は、両手で大斧を持っていた。

その瞳の奥は緊迫していて、まるで追い詰められた生物としての圧のある眼差しを、俺に向けてくる。


俺はその瞳の奥に、助けてくれと訴えかけてくるようなモノを

感じ取っていた。


……。


━━━ザクッと鈍い音がした。男の斧が俺の右腕を切断していた。


「ぬああああっ!!!ぎぃぃぃっ!!!」

その衝撃に思わず声を上げると、右腕の切断面は焼けるように熱くなり、

ドクドクと全身がサイレンを鳴らす。


気は張ってた筈だ。しかし急に時間が飛んだかのような感覚があった。突然だった。


「ああっ!!……す、すすすまない……首を、首を一撃でやるべきだった……。

オ、オレの覚悟が甘かったせいだ!!傷大丈夫かい?

いや違う!グスッ……ダメだダメなんだ!!ルミィ!マーサ!許してくれっ……!こうするしかないんダァッ!」


男は錯乱し、涙でグシャグシャになりながら戦斧をブンブン振り回して、俺に攻撃を仕掛けてくる。


俺は大きく距離を取るため、全力で走って逃げる。


客席から歓声が巻き起こる。


「もっと楽しませろ!」

「おいふざけるな!お前にいくら費やしたと思ってる!!」

「さっさと殺せ!いけぇーーーっ!!!」


俺はなんでこんな事をしているのだろう。


苦しい。辛い。悲しい。


俺は別に死んでもよかった。俺には何もないからだ。


何もないってのは身体があるなしとかそういう事じゃない。

俺の心の中には、そんなキラキラした物とか熱いものとかそういうものが無いのだ。

生きる希望とか喜びとかそういう物。

いまやりたいことを正直に書けと言われたら、きっと安楽死と書くだろう。

ここが死に際ならそれも丁度良いとすら思っていた。

もう十分生きたんだから良いだろうと。


それでも心臓は動いて俺を苦しませてくる。

もし神様がいたとして、どうして俺をこんな目に合わせるのかと聞いたら

キミを苦しめるためと言われても、自然と納得して一生笑っているだろう。


「はぁ……はぁ……。重いっ。クソっ!何で、何でこんなことに……!」


男は重い斧を構えられなくなり、体力が切れて膝をついた。


「いまだ!!殺れぇっ!!」

「やーれ!」「やーれ!」「やーれ!」

「どちらかが死ぬまでやるんだぞ分かってんのかぁっ!!!!!」

「やーれ!」「やーれ!」「やーれ!」


やれや、やれやと煩い。

気持ち悪い怒号を飛ばす貴族達を見てふと思った。


殺人を嫌がる人間に殺人をさせようと叫ぶ輩。

参加したくもない命懸けのゲームに参加させられ、

勝たねば死ぬ加害者。そしてその被害者。


正直逃げたい。

さっさと逃げて居たい場所で

幸せに生きれば良い。


だが、逃げ場があるとは限らないし、逃げた先で無事に生きられる保証はない。


人の作った宙に浮いた仕組みの世界は、場所を計算に入れてない故、

自然の世界よりも機械的で冷徹で残酷だ。


だからこそ、逃げようにも逃げ場は塞がれ、恐怖だけが増大し、争いの闇鍋が気持ちの準備をする為に、ごうごうと煮詰まっていくのだ。


気に入らない。


平和で幸せな世を目指すなら、恐怖から来る正義は決して本物の正義では無い。


枠を維持する為の詭弁だ。


しかし、世界がそれを望むというなら、

俺は世界を切って捨てる力が欲しい。


世界は何に支配されてるのだ。

人は何に従っているのだ。


それを見極め、断ち切りたい。


そう、心が立ち上がった時だった。


『───ミチビイテヤル。』


切断された右腕に様々な色の光が凝縮され、それは光をも吸い込むような暗黒の腕となっていた。


そして、その手に握られていたのは、これまた真っ黒なロングソード。


「うわああああああああああああっ!!」

相手のオッサンが再び、がむしゃらに、切りかかってきた。


手に持つ漆黒の剣を片腕で軽く振るうとバウっと衝撃波が発生した。


「うわあああああっ!!!」


男は発生した衝撃波により、まるで塵のようにぶっ飛んだ。

斧も風に煽られる落ち葉の様に吹き飛んだ。


「ぐはぁっ!!ゲホッゲホッゲホッ!!」


男はコロシアムの壁へ背中を強打。鈍い打撃音と共に、硬い石の上に伏せる形で倒れた。


「あぁっぐ!ああっ!!ルミィ……!マーサ……!」


「うおおおおおおおお!!!!やれぇ!!いけぇ!!トドメ刺せェッ!!」


……。


観客の雑音をよそに俺は男にゆっくり近づいていく。


「ああっクソッ!!こんなところで……!こんなところで……!!俺は……っ!!ルミィ……マーサッ!!絶対に生きて家に帰るんだ……はぁ……はぁ……。生きて帰るんだっ……!」


壁に寄りかかりながらも、男が手を天に向かって上げた瞬間だった。


「スキルッ!『この手に武器をッ!』」

男がそう叫ぶと、どこからともなく青い光が集積していき、それは先程握っていた巨大な斧となっていた。


「俺には、妻も子供もいるっ!死ぬわけにはいかないのだ!……あぁっ……!」


俺は男の握る斧の面を黒剣で弾いた。

男の情けない悲鳴と共に、カァンと無機質で冷たい音が冷酷に絶望を響かせた。


男は全身が震えており、顔は明らかに絶望の色に染まっている。


ふと彼の拳に目をやると強く固く握り締め、震えていた。


それは俺も同じだった。


……。



「早くしろ!!やる気あるのか!!」

マジックスキル『クロファイアボール!』


観客席から聞こえた怒号と共に、闇の火球がオッサン目掛けて放たれた。


バチィィィンッ!!!……という音と共に、煙が蔓延する。俺は剣でその攻撃を弾いていた。


「はぁ……気にいらねぇな。」


俺は男をじっと見つめたあと、男に手を差し出した。


「!?……ど、どういうつもりだ!?!?」

男は困惑していた。


「家に帰るんだろうオッサン。ならこんな馬鹿馬鹿しいところ、さっさと出ようぜ。」


オッサンはしばし戸惑いの表情を見せるも、俺の右手を両手で握った。


「おいおい!!キミィ?つまらんことするな!!」

「はぁ〜っ!?」

「賭け金はどうするんだ!?」

「闘争を放棄するなど戦士、いや男にあってはならん!」

「馴れ合うんじゃないキサマら!そうだ!勝った方には褒美を……!」


『なるほど。そういうつもりであれば、私が出ます。』


そう、どこからか女の声が鳴り響いた途端、観客の嫌な気配が一斉に鎮まり、それらは恐れと畏敬に変わった。


遥か上空から現れたのは、色素の薄い金髪の女騎士だ。


いや騎士というより、姫?いや剣は持っているのだが、服装はよく見たら鎧ではなくドレスだ。


しかも鉄板すら仕込んでおらず、ヒラヒラとしている。特殊な防具であると思われるが、防御を目的としてるようには思えない。


一言で言ってしまえば着飾るための物だ。


「リリア様だ!リリア様が出られた!!」


女は3m近くある長身で、それも場所が場所なら千年に1人とか一万年に1人とか言われるだろう天使のような顔の美少女だった。


そしてなにより、服の露出はほぼ着ていないと言っても過言でない程に激しい。スイカのような巨大な乳が殆ど丸出しになっていて、少し動くだけで、たゆんたゆんと艶かしく揺れる。


男であれば例外なく鼻の下くらい伸びそうな容姿だ。


しかしながら、横のオッサンは四つん這いになってひれ伏す様に地に手をついていた。


「終わった……。戦姫が出てきちゃおしまいだ。」

「戦姫?なんだそれは?」


「あなた方を処します。」


俺は戦姫と言われる目の前の少女を視界に捉え、俺は剣を構えた。


「見逃しちゃくれないみたいだな。いいぜ。お前を戦闘不能にしてここから脱走してやるよ。」


「やめるんだ!!勝てっこない!!アンタここの人じゃないからそんな事言える!!いいか?!この世のレベルの限界というのは、本来どう頑張っても99なんだ!!しかし戦姫は特別だ!!それ以上のレベルが無制限に許されている!奴らの圧倒的なレベル差で勇者も魔王も全部やられちまった!!奴らはそれまでの良くも悪くも均衡が取れてた世界を壊してしまった突然変異なんだ!!」


「……装備が手薄だな。本当に戦う気あるのか?」


「?……あははは!!うふふ……まぁ、勝てますからね。……というか教えてあげます。戦姫の生身は何よりも柔らかで、どの部位も鎧より頑丈なのです。大剣でも斧でも最高位魔法でも傷一つつきません。それに、普通の人間よりも遥かに高い運動量になるので、このくらい露出してないと熱くてやってられませんわ。」


「へぇ……そんでそんなペラペラと情報話してよかったのか?」


「?……まさか本当に勝つ気でいらっしゃいますの?私の戦闘レベルは300。これが何を意味するかお分かりですか?レベル200でも全員レベル99の4人勇者パーティ100組を1人で簡単に片付けられる程の格。そして、そのレベル200が100人いても圧倒できるのがレベル300です。わかったかな〜?アタマ弱い子じゃわからないかしら〜?」


「黒剣ヤタガラス。」

関係無い。剣を構えなおす。


「はぁ……わかっちゃいませんね。」


『アユザキイチマ、レベル5』

『戦姫リリア、レベル300』


アナウンスが終わった直後である。


バッッッッ━━━キィィィィィィン!!!!

と、まるで世界を置き去りにするかの様な破壊音と共に、崩壊する様な感覚が俺の身体を走った。


「戦姫スキル『非情なる必殺の一撃』。レベルが99より下の相手を一撃で屠るスキルよ。あなたのレベルは5。もう死んじゃってるかしらね。」


「……終わりですな。」

「さぁさ、今日はもうおひらきにしましょう。」


切断されていたのは俺の黒い右腕だけだった。


「あなた……!なんで!?!?間違いなく命を刈り取った筈なのに!!」


マスター設定『ターゲットを黒腕に変更』。

彼女の発動スキルの対象になった瞬間、彼女のスキルに設定されていない

ターゲット設定を無理矢理追加し、ダメージの無い黒腕へとターゲットを逸らしたのだ。


黒腕はすぐさま元の形状へ戻った。


スキル『インスタント魔神眼(マシンガン)』

リリアの瞳に細やかな光が凝縮され宝石のようにキラキラと光を放つ。


「なるほどね。目標を相手のスキルに付与したと……そんな反則みたいな事できる奴なんて初めて見たわ。でもスキルでなくてもただの技なら目標もなにもないわねっ!!直接攻撃よ!!」


スキル『真神眼(マシンガン)起動』。

俺の機械でできた左目の機能を起動するスキル。


『止裏眼(トリメ)』。

真神眼の機能。数秒だけ世界が極端に静止して見えるようになり、

尚且つ自分はその止まった世界で通常通りの速度で動ける機能だ。


ロケットのような速度で肉薄してくるリリアの姿を捉える。


なんとなくだ。まるでそうしろと言わんばかりに、客席を見回し、最後に目の前の戦姫様を視界に捉えた。


そして、右手に握られた黒剣を上に翳す。


ヤタガラス抜剣スキル『刹裸(セツラ)』


きらりと、漆黒の刃が日光を得てきらりと鋭く輝いた瞬間だった。


布を鋏で切る様な音と硬い金属が砕ける音がコロシアム中にシャクシャクキィンと鳴り響いた。


何の音だ?と周囲がキョロキョロと見回していると、彼らの服がパズルのように切断され地に落ちた。


客席の貴族達は例外なく、一糸纏わない産まれたままの姿となっていた。


「きゃあああああああああああああああああああああああーーーー!!!!!!」


貴族達はギャアギャアと大混乱し、女は男を叩き男は狼狽えている。


刹裸。武器も含めた装備一式を切断し丸裸にするスキル。

切断した装備は一定期間後、くっついて元に戻るのだ。


ヤタガラスの一撃は殺伐としたコロシアムを

一瞬で混沌のヌーディストコロシアムにしてしまった。


「な、なんだ!?!?!?これは!?!?!?」


そして、刹裸の巻き添えを喰らったのは貴族達だけではない。


目の前の戦姫リリアの身体も例外なく、中身の肌色が曝け出されていた。


「……っ。」


戦姫様の身体は一言で言えば凄まじかった。

元の世界では考えられない異様なスタイルの良さ、ばるんと豪快に弾けた乳房は、両手でも溢れてしまう程豊かでありつつも、上半身のシルエットはしなやかで高貴さに満ち満ちている。


そして尻から足先の下半身はむっちりとした質感を感じさせながらも脚先は細くその造形美に息を呑まざるをえない。


……見惚れていたがそれどこじゃない。

問題は彼女がこれでどう出るかだ。


「……。」


彼女はその裸体を曝け出したまま動かない。


チャンスだ。が、この剣ではおそらく彼女に傷一つ付けることすらできないだろう。

彼女の身体を傷つけられるイメージが湧いてこない。

さっきからそうだが、心にもない事の為にスキルは浮かんで来やしない。

それに、事を成せば浮かんだスキルはすぐ消えてしまう。


「にげるぜ!!オッサン!!俺の剣じゃ切れねぇ。」


「あ、ああっ!!」


戸惑いながらも、俺はオッサンと走ってコロシアムの外へ出た。


「どっちへ行けば良い!?」

「わからん!!目隠しで連れて来られたからな……。」


「クソっ……とにかく身を隠す為に……。……?」


使用したスキルは消えていた。


どうしようか。落ち着け。心を忘れるな。


俺はオッサンを無事家へ送り届けたい。

そしてオッサンは家族と幸せに暮らす。それを目指すんだ。


六感スキル『無形羅針(ムケイラシン)』

指をこめかみに当て、念を用いて行くべき方向を知るスキルだ。


「捉えた。」


行き先はここから東、日の昇る方向だ。


◼️◼️◼️


大混乱のコロシアムに1人の戦姫。

戦姫リリア。


戦闘レベル300のスーパースペックレベルを持つ彼女。しかし戦姫としてはまだまだ未熟で、

上位陣には程遠い。コロシアムに人を集めて無双し満足するのが精一杯であり、それが楽しみだった。

まるで神話の神のような優越感が彼女を支配していた。


そして正に今、その神話に傷がついた。

許せない気持ちに支配され、冷静さを失っている。


とある国の酒場にいる旅の老婆は語った。

「お前達、最上位種族という物を聞いた事はあるかね?頭に羽がついていて、それは恐ろしい力を秘めた

最強最悪の種族さ。この戦姫とかいう連中はおそらくその……。」


リリアのレベル数値が突然跳ね上がった。


レベル20億。


そして、とあるスキルが自動で発生した。


繧オ繧、繧ュ繝ァ繧ヲ繧オ繧、繧「繧ッ繝九う繧ソ繝ォスキル『オムニジァイアLv.1』


発動したスキルは巨大化と進化を同時発生させるものだった。

が、それだけではない。彼女の頭の両脇に光羽が3枚浮き出た。


「ニンゲンさん♡えっちぃことしましょお♡」


戦姫リリアの瞳の奥にハート模様が浮かびあがり、

両手を広げると、コロシアム内にいた人間達の体は浮き始め、風に舞う砂の様に空中を舞った。


「「「「「「「ギャァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」」」」」」」


貴族達と、その関係者は人の塊となり、

リリアの局部、胸と股の間を隠くすように張り付いていく。


「いや〜ん♡えっちぃ♡」


頬を赤くしながらゆっさゆっさと、化け物の様な巨大な乳房を揺らし、くねくねと揺れる。


「ほらほら〜?ちゃ〜んとしがみつかないとおっぱいから落ちちゃうぞ〜?」


揺れで振り落とされそうになりながら、ギャアギャアと叫ぶ裸の人間達を見て

リリアは恍惚とした表情で舌なめずりした。


「……。」


スン。と、瞳の光が消え、まるで魂がなくなったかの様に先程までの恍惚とした表情が消える。


六感スキル『無形羅針(ブギョウラシン)』


リリアの光羽がうえにピンと張ると、リリアはイチマ達の方向へ淡々と操られているかのように、首を向ける。


「もっと良いの、みぃ〜つけた。」


そういうとリリアの身体は直立のまま更に大きくなっていき、

約10mあるコロシアムの壁が膝にも届かず脛ぐらいの大きさにまで巨大化した……。


巨大化が終わるとリリアは、おもむろに足を後ろに大きく上げていく。

むっちりとした美脚は一流の職人が掘り出した美術品の如く美しく、

そしてその脚を太陽がギラギラと照らし、地上に影を落とす。


「な、何だぁ!?あれは!?!?!?あんなの見た事ねぇ!!」

「とにかく走ってこの街から逃げるぞ!!」


コロシアムの外の街、俺が見たその地上の人々は、その骨と皮だけの手で巨大なリリアへ手を向けている。


「神様だ。神様が降臨なされた……。やっと、やっとあの世へ行ける。」

「なんと神々しい……。わたし達はこれを見るために生まれてきたのですね。」

「おなか……空いた……。」


後ろに上げたリリアの足が降り降ろされた。

振り下ろされた右足は弧を描きコロシアムの壁目掛けて接触し

爆発音のような音を立てた。


ズッシャアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!


コロシアムの壁は吹きとんだ。


壁の外壁と共に外の人間達が塵のように吹き飛ぶ。


「くっそぉぉぉっ!!!!」

「どわああああああああ!?!?!?!?!?!?」


俺とオッサンもその衝撃波で吹き飛んだ。


俺の目に映る蹴り上げた脚を天高く上げる

リリアの姿を見て俺はゾッとした。


……本能がいっている。普通の巨大化では無い。アレはまずい。


ただ単に大きくなるだけでは無い。

あの頭の光線の様な羽のエフェクトは……!?!?!?


それに、今はアレに対抗できるスキルは持ち合わせていない。どうする!?

いや今は逃げることだけ考えろ。逃げて時間を稼いでそれから、


「逃げようとしてもダメだよ?この世界全部リリアのオモチャなんだから。」


目の前にリリアの顔が現れた。目の奥に光はなくゾッとするぐらいに深い。

おそらく分身体だ。


「ふふっ……。」


にんまりと笑うと、巨大なリリア本体の下に向かって何か引力のような物が発生しているのか

この街の人間達がぐんぐん吸い寄せられていく。


「ギャァアアアアアアアアアアアア!!」


おそらく人口1万人。その規模の人間がリリアの足元に集まった。

それはもはや人間の塊の人間の山だ。


「そんじゃいくよー?せーのっ!!」


リリアはグッと体勢を低くして屈伸した。

そしてブワッと全ての音をかき消すような、圧倒的な虚無の波を起こして空中に浮き上がった。


地上の全てがその巨大なリリアの神々しい肉体に釘付けになっている。

快晴の空に漂っていた少数の雲を消しとばすと彼女の体が更に巨大化し

太陽の光が彼女に巨体で隠れた。


そして、今度はその肉体がぐんぐんこちらに近づいていき、

街全体が彼女の巨体により夜のような真っ暗闇になった瞬間。


彼女の生尻と股肉に押し潰されただろう、1万人の血飛沫が波のように溢れ、


ドッ!!!!「あへぇぁぁぁぁぁっ!!!!!」狂ったケダモノのような色っぽい嬌声と共に大地震がまきおこ

シャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!衝撃で吹き飛

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ街の瓦礫が宙を舞っているオオオオオオオ老若男女子供だろうと赤ん坊だろうと関係なくオオオオオオオオオ宙を舞っているオオオオオオオオオ血飛沫も一緒に舞っているオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ屋根が瓦礫になって吹き飛ぶオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオよく見れば物乞いのような人間ばかりだオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオゴミだオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ彼女にとってオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ僕らは人間ではなくゴミなのだろうオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ


━━━吹き飛ぶ中で記憶が断片的に呼び覚まされた。この光景を俺は何度か体験した事があった。身に覚えがあった。この圧倒的なパワーと理不尽さ。


……スキル『メモリーバックアップ』


目が覚めた。途中の記憶が飛び飛びになっていてあまり覚えていない。


「んあっ♡んはぁんっ♡きもちぃいィ〜♡」

巨大なリリアがクネクネと身を捩る姿が見える。

リリアの上半身は後光が刺して神々しくなっているのに対し、

その下は滅茶苦茶に潰された人間達の屍体でまさに地獄の様相を呈していた。


俺は随分と遠くまで吹き飛ばされたようだ。

「おいっ!しっかりしろ!!」


ツリルのオッサン。彼が駆け寄ってきて俺に手を差し伸べた。


「大丈夫か!?……お前に抱き抱えられて、俺は着地したは良いが、お前が瓦礫の山に突っ込んじまって……!」


俺は手で制して、問題ない旨を伝える。


「良かった……。とは言ってられねぇ。あの戦姫、暴走してここいら一帯、俺たち意外全部消し飛ばしやがった。」


彼女の落下地点を中心に巨大なクレーターが出来上がっていた。

街はそのクレーターの周りに瓦礫の山の残骸となっていて、俺はその一部に突っ込んだらしい。


「ここで倒す。」

「できるのか?」

「ああ、記憶が少しだけ戻った。」


俺は剣を両手で構え、腰を落として担ぐような姿勢をとる。


ふと声が聞こえた───。


『『『『『『『『黒刀ヤタガラス 揺龍(ユグドラ)』』』』』』』』

当たった対象のチカラを一定期間別々の並行世界へ分裂させ、弱体化させる技だ。


━━━無意識だったか。いつの間にかリリアの脳天に刃を食らわせていた。


刀が帯びた10億Hzの振動が1秒程与えられた事により、

彼女の力の根源が10億パターンの別世界へそれぞれに分散し、流れ込んでいった。


戦姫リリア。レベル20億の10億分の1。

現在実質、レベル2だ。


リリアの額には真っ二つの切れ目が入り、

その巨体のまま倒れていき、ズッシャアアアアアアアアアアっと

巨大な轟音と地震を起こして動かなくなった。


終わった。


俺は空中を浮遊しながら、

オッサンの元へ着地し少しバランスを崩してすっ転んだ。


「いっつぁっ!」

「す、すげぇ……やりやがった……!!」


俺はその場で大の字になって倒れ、熱く照りつける太陽を腕で隠した。


オッサンが駆け寄ってきた。

「ツリルだ。ツリル・オハゲッサ。帰ったら娘を紹介したい。」

「えぇっ!?!?」


続く。

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