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第2話 天才少女の家族はどこへ

この少女が春を?


『そのままの意味だな?君。本当にそんな…』


「あんたもやりたいなら1時間2万でどうだい」


そうぶっきらぼうに言われた。


そう言うと、彼女は下を向き、また咳をして少しトキシリアを吸った。


『僕にそんなつもりはない。トキシリアをやめる約束なら教会で養ってやるが…』


「そうだね…。そろそろ金が尽きそうなんだよ。養ってくれ」


そう言い彼女は立ち上がった。


口を慎んで慕え…と言いたいところだが、彼女はそれを忘れさせた。


彼女は美しい、青い目をしていた。


長い黒髪が日に当たり、少し茶色味がかっていた。


何より、澄んだ彼女の碧眼は、僕が見た中で1番綺麗な物だった。


その瞬間、彼女に全てが輝いて見えた。




一目惚れってやつだ。


何もそんなこと知る由のない彼女は本を拾いあげた。


彼女と話していて気づかなかったが、その本は異言語で書かれていた。


この王国の教育水準は貴族を除けば、極めて低い。


国の言葉が読み書きができるものはそうそういない様に思える。


そんな中、1人の少女が異言語を…


『それ、どこの国の言葉?』


「この本?知らないよ。図書館で借りてたらなんとなく読めるようになっただけ」


教会に向かい歩いていた。


どうやら彼女はエンバーというらしい。


数年前、彼女の毒親だった母が弟を殺し、エンバーまで殺そうとしてきたので、逃げ出したそう。


その数日後、家に帰ると母と弟の亡骸があったそう。


父の姿がその後、見つかることはなかった。


エンバーはその後、スラムに入り浸り、安い食べ物を買ったり貰ったりして生きていたそう。


しかし、トキシリア薬を吸うとお腹が空かず、気持ちが安定すると仲間に教わり、始めたそう。


「3年経った今でも、父の屍どころか情報さえ見つかっていないって」


素っ気なく、でもどこか寂しそうに、悔しそうにそう言った。


負の感情がエンバーを取り巻いている様だった。


それでもエンバーは綺麗だった。儚く見えた。






あの強気で無愛想で薬物中毒者の彼女に僕は恋をしてしまった。


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