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●さものすけ @samosamoGOGO

【速報】

うちの学校のプールの水が一夜にしてなくなる


よっしゃあああああああああああああああああああああああ!これでプールの授業がなくなるぜえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!

ひゃほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!


つ 【干からびたプールの写真】



●YAffffoooo @Jk2kaBlO89

 返信先: @samosamoGOGO

喜びすぎだろwwww

そしてお前自分のガッコバレたけどいいのか?



●さものすけ @samosamoGOGO

 返信先: @Jk2kaBlO89

ガッコくらバレてもいいわwww

そこそこでかい学校だから生徒の数も多いし。

いやあ、今週からプールの授業始まるからマジ苦行だったんだよね。しかも今年、梅雨入ってるわりに雨降らないし。

雨降らないんじゃ中止になってくれないしさあ



●YAffffoooo @Jk2kaBlO89

 返信先: @samosamoGOGO

めっちゃイイネ伸びてるじゃん。有名人だなオマエ!

写真と一緒にアップしたからなのかな?

しかし、一晩で水なくなるってどういうこと?プールの水ってことはすげー量あったはずだよな?



●さものすけ @samosamoGOGO

 返信先: @Jk2kaBlO89

さっぱりわからん。

昨日帰る時は確かに水溜まってたはずなのに、今朝登校してきたらなくなってたんだよね。で、不思議なことに栓が抜けてるってこともなかったらしい。

栓しまったまんまなのに水がなくなったって

それと、プールに入るには鍵が必要なんだけど、鍵もしまったまんまだったと



●YAffffoooo @Jk2kaBlO89

 返信先: @samosamoGOGO

え、何それミステリーじゃね?

栓を抜いたわけじゃないのに水がなくなったってどうやったんだ。いや、それだけなら栓抜いたあとで戻せばいいのかもしれないけど……。

プールに入る鍵もかかってたって。フェンス乗り越えたとかじゃなく?



●さものすけ @samosamoGOGO

 返信先: @Jk2kaBlO89

それが、先生たちが話してるの聞いちゃったんだけど。うちのプール、昔盗撮被害があったから防犯カメラつけてたみたいなんだよね。

そのカメラに犯人の映像とか全然映ってなかったみたいなんだよ。フェンス乗り越えてプールに何かしたなら映ってるはずなのに

突然プールの水が沸騰したみたいになってなくなったとかなんとか……



●YAffffoooo @Jk2kaBlO89

 返信先: @samosamoGOGO

なんだそれ、ミステリーじゃなくてファンタジーじゃん!お前の学校、変な生き物でもいるんじゃないの?



●さものすけ @samosamoGOGO

 返信先: @Jk2kaBlO89

それはあるかもしれぬ。

いや実際、この間六年生の女子が、変な動物に襲われて指を噛みちぎられる事件が起きてるんだよね。

靴箱からネズミみたいなのが飛び出してきたっていうんだけど、結局ソレ見つかってなくてさ。

だから本当に、うちの学校には変なものがいるのかも。もしそうならちょっと面白いんだけどwww




 ***




――面白いんだけど、じゃないよおおおお!


 スマホの画面を見て、かさねは頭を抱えたのだった。学校のプールの水が消失した事件。もしやと思ってネットで調べてみたら、早々にツイッターに写真と動画を上げている人間がいるではないか。しかも複数。

 多くが、プールがこれで中止になることを喜ぶ者や嘆く者、そしてこの不可解な事態を面白がる者ばかりときている。状況的に見てもだいぶ異常な事件だというのに、誰も彼も深刻さが足りなすぎる。

 そもそも、ネットリテラシーはどこに行ったんだと言いたい。自分の学校を明かすだけでも危ない、という認識がユーザーたちにはないのだろうか。小学生がうっかり個人情報を漏らしてしまってトラブルに発展するケースが後を絶たないのも頷けるというものだ――小学校高学年にもなれば、ある程度自分でものを考えることもできるはずだというのに。


――鍵がかかったままのプールに侵入して、しかも水を蒸発させるとか!そんなの人間技じゃない……。


 これも、カードの精霊の力を借りたものだろうか。

 炎属性の精霊の力、もしくは水の温度を変えられそうな水属性の精霊の力ならそれくらい可能かもしれない。この小学校にて、プールの授業を受けたくない生徒がカードの精霊の力を借りて悪さをしてしまった――なんてことも十分に考えられそうだ。

 というかむしろ、もうそれで決め打った方がいいのかもしれない。他に、このようなとんでもない事態を引き起こせる魔法に心当たりなどないのだから。


「大変なことになったみたいやんなあ」


 休み時間。緊張感のない声で、江留が話しかけてきた。


「うちもプールの授業はそら受けたくなかったけど……でも、これがヤバイってことはうちにもわかるで」

「そりゃそうだよ!だって授業できなくなっちゃう……」

「いや、それだけやないって、かさねちゃん。そもそも、プールの授業を六月からやるのは何でかって知っとる?まだ寒いことも多いのに」


 そういえば、とかさねは目を瞬かせる。確かに、今年はまだ暑いが、例年なら水に入るには寒いということも少なくはない。六月から開始するより、七月から残暑の厳しい九月までやった方が効率が良いような気がしてしまう。

 暑い時期にプールに入れた方が、歓迎する生徒も多いはずだというのに。


「前にテレビでやってたんやけどな。プールの授業って年間で十時間やらなあかんってことになってるらしいで。で、七月スタートやと、すぐ夏休みになってまうやろ?九月までやったところで、結構プールできる日って少ないんやって。だから、なるべく早めに始めて、予備日を作る必要がある、と」

「あー……」


 言われてみればそうかもしれない。それに、ヤバイ、という意味も理解できた。

 つまり、ここでプールができない日が続くと、既定の授業日数を終わらせることができなくなる可能性があるということだ。スケジュールを考える先生たちは頭を抱えていることだろう。

 ましてや、水が抜けた原因がわからないというのが恐ろしい。もう一度水を入れたところで、また同じように干からびてしまうかもしれないからだ。それも、噂であったように“突然沸騰した”のがもし本当となると――生徒たちが入っている間に同じ現象が起きる可能性がある。

 つまり、危険が及ぶ可能性もゼロではない、ということだ。


「それに加えて、純粋に水道代もヤバイ」


 眉間に皺を寄せて続ける江留。


「これもテレビでやっとったんやけどな。25メートルプール一杯分って……家庭の浴槽の約五年分にもなるんやて」

「ご、ご、五年分?すごい量だね!?」

「せやろ?で、学校の水道代っちゅーのは業務用の料金で計算されるから、一般家庭とはちょっと違うらしいんやけど……都内の場合は大体二十七万円くらいとかなんとか」

「に、に、にじゅうななまんえん……」


 思わず眩暈がした。とんでもない金額だ。しかも、プールの水を一度入れたら入れっぱなしでいいというわけでもないはず。掃除のために入れ替えなければいけない時もあるだろう。

 それが失われたということは、二十七万円が溝に流されたということに――。


「う、うわあ。もったいない!」


 犯人はなんてことをしてくれたんだ、と思ってしまう。多分、プールを阻止したいだけだっただろう小学生は(多分だけど)、そんなことまで考えてはいなかったのだろうが。


「うっかりプールの水を抜いてしまった先生はクビになるー、なんて噂もあるくらいやからなあ。まあ、笑い話で済まされへんのは確かやろね。公立の小学校やから、運営のためのお金ってみんなが払った税金で賄われるんやろーし?あ、そういえばやらかした先生自身に弁償させたっちゅー話もあったなあ」

「ひいいいいいいい」

「そんなわけやから、まあ先生たちも犯人捜しに躍起になってるやろーし。事故なら早急に対処しないとあかん!って空気にはなっとるやろね。なるべく早くプールの授業は再開させたいやろうしなー」

「う、うわああ……」


 これは、と頭から血の気がひくかさね。もし、本当にカードを使った小学生の仕業なら――そしてそれが発覚したら。彼ないし彼女、の保護者にどれほどの請求がいくかわかったものではあるまい。

 いや、発覚しなかったとしてもだ。そのとんでもないお金や水資源を無駄にさせるわけにはいくまい。恐らく、先生たちがもう一度水を入れたら、きっと同じことを繰り返すことだろう。


――や、やばいやばいやばいやばいやばい!ぜ、絶対止めなきゃ……!


 自分の責任ではなかろうが、見過ごすことはできない。今日の夜にでも、魔術師に相談しようと決めるかさねだった。


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