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第6話 謎の鍵

 「高田さん、ここに固い地面はありませんよ」

 「そうだよね……」

 「耳鳴りでも起きたんじゃないのか?」

 「霧音ちゃん、体調大丈夫? 」

真城くんが心配そうに私の体調に気を使ってくれている。


ちょっとだけ、その気遣いが嬉しかった。

 「真城くんってこういう時、大袈裟おおげさだよね」

 「霧音、そんなこと言うてあげるなよ。こんな美少年にも保育士って意外な夢があるし、未来の保育士はこのくらいの優しさの方がいいだろ! 」

そう言って響は真城くんの肩に手を当てる。



 「……僕の夢……そんなに変? 」

 「意外だなって思っただけだよ真城くん」

 「そうだよ!霧音の言うとおり、みんな意外に思ってるよ!さっき真城くんの夢が“保育士”って言った時、質問しようと思ったら真城くん、すぐに霧音にバトン渡すから、一旦スルーしたけど! 」

  咲の元気溢れる熱弁に、真城くん意外の全員が大きく顔を縦に振る。


 「そか、なら良かったー!響がイジってるのかと思ったよ」

焦ってる真城くん……可愛くもなれるんだ……


 「まぁ、霧音の夢に話題が持っていかれてたのも事実だけどな、俺も“晴天の元でライブ”をするって考えはしたけど、まさか“夏を取り戻す”なんて夢は流石に思いつかなかったし、俺の夢は美亜に当てられたし……」

 「ちょ、響!…私は響が好きなバンド達から着想を得ただけだよ!偶然だから元気出して! 」

 「“奇跡のライブ集団”な……年に20回もない晴天の日に見事にライブを成功させたバンド達」

 「そうそう!『メタルン』とか『夕日の壊し屋』とか『心頭滅却コアラ』とか! 」


 「そうそうメタルバンド達、俺も……ん?なんで美亜は、俺の好きなバンドをそこまで知っているんだ? 」

 「!!……違う違う違う違う!!……響が友達と話しているのをたまたま聞いて覚えてただけ! 」

 「?……そうか、意外だからびっくりした」

 「そうそう、たまたまだよ、たまたま……ハハハ」


焦ってる様子のみーたんを、私と咲はイジりたくて不敵な笑みが思わず浮かんでしまっていた。

 咲……もうイジりたくてイジりたくて仕方がないんだ……顔が、変態おじさんみたいに!!……まぁ私もイジりたくて、しょーがないけど。


 よだれを垂らしながら咲が口を開く。

 「たまたまねぇ……なんでそこまで知ってたのかね〜〜」

 「咲の言うとおりだねー。たまたま聞いたバンド名ってそこまで覚えれるんだー……」


 みーたんは男子たちには見えないよう一瞬、殺意を込めた目で睨んできた


 『ひぃ!! 』

 「霧音殿、ここは一旦身を引くとしますか」

 「そうですわね咲殿、ここは戦略的撤退としましょうか」


 「おい、2人は何を話しているんだ?面白そうな話なら俺たちも混ぜてく……」

--ビュゥゥゥー〜ー

いつも通り冷えた空気の中、突然さらに冷えた風が私たちを襲う


 「きゅ、急ですね!みなさん、僕からの提案なんですけど、明日のこともありますし、もう短冊を飾ってからすぐに帰りませんか!? 」

 「天貝くんに賛成」

 「そうだね、夜はさらに冷えるって言ってたんでしょ」

私とみーたんの賛同を聞いたみんなは、急いでところどころ雪の被った竹に各々の短冊を飾った。



 「さ、みんな帰ろ!私とみーたんはみんなと方向違うし距離もちょっとだけ遠いから」

 「俺はすぐそこだから、3人とも気をつけて」

 「あたしたちは駅方面だから、また明日ね! 」

 「さぶっ!明日ブロー集合ですよ! 」

 「響、霧音ちゃん、美亜ちゃん、また明日ね」


 私たちはそのまま解散した。響とは公演出口までは一緒だったけど、そのまま二手に分かれみーたんと一緒に響と解散する。

 「じゃあな、明日! 」

 「響の家温めておいてよね」

 「おう、任せとけ、多分必要ないけどな! 」

 「一応だって、一応」

 「響くんまたね! 」

 「おう! 」

そして、私たちの家近くまで到着した。


 「さっぶ!明日大丈夫なのかな……」

 「雪関連の警報は出てないから大丈夫なはずだよ」

 「みーたんがそう言うなら大丈夫か」

 「響くんの家のバーベキューかー、久々だなー」

 「そう?半年前もやったじゃん」

 「え、あれ半年前なの!? 」

 「そうだってー、あの時みーたんちょっと体調悪くて、あんまり参加できてなかったけど」

 「そうだったね……」


みーたんは不思議そうな顔で私のお腹付近に目をやっていた

 「キーちゃんのそのポケットで光ってるの何? 」

 「え?何も入れてないよ」

私はそのまま、みーたんの見ているポケットに手を入れた。

何か、硬くて冷たい感触を手に感じた。取り出してみると、何かの“”だった。


 「え、いつの間に、どこでポケットに入って……」

 「それ、キーちゃんのじゃないの? 」

 「……うん、違う、おも……ちゃの鍵? 」

その鍵は銀色だけど、なんとも説明のできない感触で、鉄でもないし、木でもない独特の感触だった。

 何より特徴的なのは、その鍵の持ち手が二股状に分かれている。


 「誰かの悪戯いたずらかな? 」

 「えー、キーちゃんにそんな悪戯する人なんているのー?報復が怖いよ」

 「なんで私がそんなキャラなのよ」

気がつけば、私たちの家の前についていた。私とみーたんは隣の家同士だ。


 「ま、明日考えるか。……明日どうする? 」

 「んー、私がキーちゃんのインターホン押すね」

 「じゃ9時半前ぐらいで待機しとく」

 「わかった。じゃあね」

 「みーたん、また風邪ひかないようにね! 」


私たちは自分の家に入った。










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