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第7話 謎の鍵2

 「ただいまー」

 「おかえりー……その様子だと、お風呂ね。沸いてるわよ」

 「さすが私のお母さん。サンキュー」

 「ついでに洗濯物畳んでおいて」

洗面台へと入り、扉を閉める。そこには洗濯籠せんたくかごの中にすでに乾いてある、衣類や下着が山盛りになっている。

 私の家では、ラフな衣類や下着が洗面台付近に収納されるので、この山盛りの乾燥した衣類の半分は少なくとも、ここにあるプラスチックのタンスに入ることとなる。


 「……私がお風呂に直行することわかってて残したな……」

思わず愚痴がこぼれるが、私は着ているアウターとブレザーをハンガーにかけ、ニット、シャツ、スカートを洗濯機の中に放り込んだ。


 「そうだ、あれここに置いたっけなー、みーたんに……もらった、トリートメント……」

下着姿で探す姿が鏡に映る。鏡の横にそのトリートメントは存在した。


 「あった!……髪乾かしてから使うやつって言ってたよなー、ふむふむ…………やっぱりそうだ」

 そして、鏡の中の自分と目が合った。その後、その光の反射越しに自分の体型を観察する。


 「あれ、ちょっと、ちょっと! 」

下着の上に乗る脂肪が以前より増えている気がする。ほんの少し青ざめてきた


 「肉が…………あれ、あれ?」

その脂肪に絶望するのは、つかの間だった。


 「胸、ちょっと大きくなった? 」

自分の胸をなぞってみる。やっぱり少し大きくなっている気がする。


 「近いうちに、新しい下着買うか〜」

下着を洗濯機に投げ入れ、浴室に入った。そのままシャワーを立ちながら頭から浴びる。溜めた湯とシャワーから出てくる湯気で浴室は真っ白だ。

 ……今日は、なんだか疲れたなー、風邪ひく前兆かな、頭がボーッとする。短冊……楽しかったな。夢かーー……変なこと書いちゃったな。


 「ま、いっか。短冊なんて叶うわけじゃないし。何書いてもいいし」


--パチャーン

私は体と髪を洗い終え、浴槽にかった。


 「はぁーーーーー……芯まで温まるー」

顔は緩み、肩の力は抜け、自然と何もない真っ白な天井に顔を向ける。そして、今日、引っかかることがあったのを思い出す。


 あの鍵、ほんとにどこでポケットに入ったんだろう。……学校出た時点で入ってたのかな?いや、多分短冊付近で……子供たちもいたし、小さい子の悪戯にでもあったのかな。もしかしたら、誰かの鍵を隠す的な……


 「それなら、鍵の持ち主は子供ってことじゃん!……返せるかな……」


 今はあんまり頭が回らない。


 「今日は早く寝よう。明日のバーベキュー、楽しみだなー。響の家、大きすぎてほぼ室内でバーベキューできるから……あれ?あれってバーベキューなのかな。ただの室内焼肉……いや、半分外はんぶんそとだしバーベキューか…………出るか」


 私はいつもより早くお風呂を切り上げた。

体を拭き終え、髪を乾かし終え、みーたんから貰ったトリートメントを髪に馴染ませる

 「♪〜〜……これ、いい匂い、さすがみーたん私のことわかってるー♪」


ほんの少しだけ甘い匂いが鼻を通る、このいかにも強い匂いって感じじゃないのが良い。


 「サラサラー。みーたんのとは匂いが違うな……私のために選んでくれたんだなー……あ、そうだ。かぎ


 かけてあるアウターのポケットに手を入れて鍵を取り出す。やっぱり変わった形をしている。


 「鍵の先端、シンプルすぎる。やっぱりオモチャだろうなー、それにしてもこの触りごごちはなんだろ。ずっと握ってたい」


 鍵を観察を終えて、山積みになっている乾いた衣類たちが目に入る。もう1度その鍵をアウターのポケットに戻した。


 「忘れてた、たたも」……


 私は洗濯物を畳み終え、その衣類たちの半分は洗面台付近のタンスにしまい、もう半分は各自の部屋へと収納するものなので、それらを持ち2階廊下の各部屋の扉の前に置いていく。


 「今日のご飯は何かなー。この匂いは……わからない」


--ガチャ


リビングへの扉を開け、テーブルに並びだしていた料理を確認する。


 「手羽先か、匂いで当てられないわけだわ」

 「あら、気分じゃなかった? 」

 「ううん?1人で晩御飯クイズしてただけ」

 「そう、今日はお父さんと洋介ようすけは今日帰ってくるの遅いから2人で食べましょ」

 「え、洋介何かあったの? 」

 「友達の家でご飯食べて帰ってくるって」

お母さんはそう言って私のご飯をテーブルに置き、エプロンを脱いだ。

そのまま、お母さんと私はお互い向かい合って、座った。


 『いただきます』


 テーブルには手羽先の他、小さく添えられたポテトサラダと、惣菜コーナーで買ってあるであろうプラスチックの容器に入った煮物が並べられている。

互いに会話よりも先にご飯を食べ始めた。私はご飯よりも先におかずのタレのかかった手羽先をとり、食べ始めた。


 「ん!この手羽美味しい! 」

 「そう?よかったー、ちょっとチャレンジしてみたけど霧音がそう言ってくれるなら成功ね」

 「うん!過去1の美味しさだよ」

 「そんなに?今回私も味見してないのよね〜」


お母さんは手羽先にお箸を伸ばしたけれど、取らなかった。


 「ん?……霧音、何その鍵」

 「え?」


私がお箸を持つ右手側、テーブルのはじの方に、さっきアウターのポケットに戻したはずの、あの鍵があった。


 「私、さっきポケットに入れたはずなのに……」

 「ぼーっとしてたんじゃないの?で、何よその鍵」

 「わかんない」

 「え〜〜何を隠してるの〜? 」


ニヤニヤと笑うお母さんに冷静に事情を説明した。


 「ふーんてっきり、みーちゃんか“男”かどっちかのプレゼントかと思った」

 「ちょ、お母さん!なんでそうなるの」

 「最近色気付きだしてるじゃない?好きな子でも出来たのかと思ってたのよ、今日だって、髪の毛気にしていい匂いするなって、ふふ」

 「もう、そういう余計なこと気づくのやめなよ。みーたんから貰ったトリートメント使っただけだよ」

 「そうなのね、残念。それにしても不気味ね、もう捨てちゃえば? 」


 私はテーブル横に置いてある鍵を見た。確かにここに置いた覚えはないし、お母さんの言うとおり不気味と言われれば確かにそうだけど、不思議と私はその鍵に対して、マイナスな感情は湧かなかった。

 むしろ、綺麗な鍵だなって見惚みとれていた。


 「ご馳走様でした」


 空いたお皿を自分の目の前に集め重ね、おいてある鍵を手に持ち、立ち上がる。


 「あら、まだ手羽先残ってるわよ」

 「明日食べる、ちょっと太ったから」

 「え〜〜!!やっぱり男!? 」

 「だから違うって!美味しかったから明日も食べたい、ちゃんと私の分取っておいてね」

 「は〜い……クスクス……」


 お母さんは絶対に勘違いしている。それでも私は強く訂正しなかった、今訂正したところでその勘違いが強まってしまうことは、お母さんの性格的に目に見えていたから。


 「明日、響の家でみんなでバーベキューだから、今日は早く寝る。今日はもう降りてくるかわかんないから先に言っとくね、おやすみ〜」


 「そうなのね、わかった。おやすみー」


就寝前の挨拶をし、廊下に出たのち階段を上がり、自分の部屋に入った。


 「あ〜〜……変な勘違いされてるー、めんどくさい」

 そのまま、ベッドへ寝転ぶように倒れ込んだ。なんだか今日はすごく疲れていた。

そして、仰向けになり、鍵を再び観察する。


 「この鍵、ほんとになんなんだろう。……気にしすぎか」

 それにしても、単純な形だし、オモチャだろうけど。何かものすごく惹かれる。不思議な鍵だ。……まぶたが重い。


 「嘘……こんなに早く眠くなるなんえ……まぁ、いっか」










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