「おーい、霧音」
声をかけてきたのは幼馴染の男子
「……霧音、霧音って! 」
「あ、ごめんごめん。なに? 」
「明日から三連休だから、初日だけオレん家でバーベキューしようと思ってて、3人もどうかなって」
「なんで私が代表者みたいになってるの」
「だって、ほら……咲と美亜は、変な会話してたしさ……」
少し笑いながら目を逸らす響を見て2人は反応した。
「こーーーらーー!やっぱり聞こえてたじゃん!恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしいぃぃ! 」
「ぷぷぷ……その着込んだ服の中には……」
2人を
「ちょ、ちょ、あまり聞こえてはいないから……」
それを私はこの面白い状況を維持するために火に油を注ぐ。
「
「うぉりゃぁぁぁぁ!!…………」
咲は顔を真っ赤にし謎の叫びをあげて昇天した。
「そ、それで、どう?人数は多い方が楽しいし」
「いつもの6人ね、私はいいけど2人はどう? 」
「……い……きます……」
咲は昇天しながらの返事。
「私もいけるよ……ぷぷっ」
笑いを
「よし、決まりだな!残り2人にも伝えておくよ。買い物から一緒に行動しようと思ってるけど良いか? 」
「何時にどこ集合? 」
「尾張旭駅近くのブローに10時集合で」
「スーパー集合ね、りょうかーい」
「そんじゃ、よろしく! 」
『よろしくー』
響は手を振りながら笑顔で去っていく、それを見えなくなるまで目で追いかけ続けている子がいる。みーたんだ。
「みーたん……やっぱり響のことが……」
--プシューー!!
みーたんの口から飲みかけの水が咲へと飛んでいく。
「ち、違う!たまたま! 」
「えー、私まだなにも言っていないよー。ねー、咲」
「ふっふっふっふ、このかけられた水は許してやろう……貴様の恋心をバラすと共にな!! 」
「だから違うんだって!! 」
咲とみーたんは形成逆転し、咲は追いかけられている。
「私の周りを周回しない、ほらほら〜午後一発目の授業、英語だけど、提出物大丈夫? 」
「あたしのクラス、午後は提出物なーーし! 」
「そのポーズ、なに? 」
「横綱が手を広げている時に、頭を上から叩かれたポーズ」
「なにそれ、そんなポーズあるの……」
「ないよ、オリジナル」
咲と話しているとみーたんはいなくなっていた。遠くからササササとペンが走る音が聞こえる。
「美亜ちゃん……いつ見てもすごい早さだね」
「うん、みーたんはギリギリの時は何故かIQが上がって、怒涛の早さで問題を解けるからね。一応提出物を期限外まで持ち越したことはないって言ってた」
みーたんは目を大きく広げ、
「あの早さで解いているのに、美亜ちゃん、8割程度は正解するんでしょ」
「うん、すごいよね」
「あたしもクラスに戻るね、約束してたことあったの思い出した」
「うん、いってら〜」
——そして午後の授業になり、それも終わって放課後。
ふぅ、今日も疲れたー、今の天気は……まだ雪は止まってないかー……
「まっ、でもそこまで降ってないし、大丈夫か。……みーたーーん」
「はいはーい、今日部活は? 」
「顧問も体調不良でいないし、明日のこともあるから今日はいいよ。」
「なら一緒に帰ろ、今日は七夕だから寄り道して短冊でも飾りに行かない? 」
「わかった、行こう行こう。咲は行けるかな? 」
「はいはい!行けるよ! 」
咲は教室と廊下の間から顔を覗かしている。目を輝かせながら。
「いく前に提出物があるから、2人ともちょっと待ってて」
私は昨日に提出するつもりだった、紙を職員室に提出しにいくために、2人とは反対方向に歩き出す。
「キーちゃん、靴箱の前ねー」
「はいはーーい」
この提出物が何かは私は知らない、親へのアンケートと言って渡されたが、内容は見てもいないし興味もない。ただ、昨日持ってくるのを忘れて今日1人職員室に向かっているこの状況に後悔していた。
「はぁ、別に悪いことしてる訳ではないのに、なんでちょっとモヤッとするんだろう。このめんどくさい感じが嫌なのかな?それとも昨日忘れましたー、ごめんなさいって感じに見えるこの状況が嫌なのかな? 」
1人、ぶつぶつと呟きながら歩くうちに、職員室が見えてきた。
今はまだ、16時前。
生徒たちから距離を置くように、校舎の一階にひっそりと存在するその部屋は、雪の降る中、薄暗い空気を押し返すように、モヤのかかった窓ガラス越しに、ぼんやりと黄色い光を廊下に滲ませていた。
「職員室は入り口をいつも開けといてくれないかなー、わざわざ開けて先生たちに一斉に振り向かれるのが嫌なんだわ。私」
私が扉の前に着く前に、私をやや駆け足で追い越した人がいた。その人は、その扉の前で止まった。
「あ……霧音ちゃんもここに用? 」
「真城くん! 」
「いやー、俺昨日親へのアンケート出し忘れちゃって」
「え、同じ。ラッキー、真城くん助かるー」
「ラッキー? 」
そう言って、真城くんは職員室の扉を開けた。一斉に教職員たちの視線が真城くんに集まる。私はその真城くんの後ろについていき封筒に入れられた書類を提出した。
そしてそのまま職員室を2人で後にした。
「明日、霧音ちゃんたちも来るんだよね。集合場所とか聞いてる?」
そう、話すのは
よく私たちが3人で遊んでいる時にふらっと輪に入ってきて遊ぶことがあった程度だったけど、成長していくにつれてだんだんと仲良くなっていった人。
「うん、明日行くよ。よろしく」
「そっか、なら大丈夫だね。絶対来てね」
「一緒に途中まで帰る? 」
「え、今から帰るの?俺たちも今から帰るところだよ」
「響、部活休みなんだ……軽音部」
「そうらしいよ」
そう話しながら、私たちは下駄箱に着き、靴を履き替えた。 校舎の外に出ると、咲の声が響いた。
「こっちこっち!」
校舎を出てすぐ左手、そこには4人の男女が集まっていた。
「
「明日はよろしくお願いします!」
天海くんは、丸いメガネをクイッと掛け直しながら、丁寧に挨拶してきた。
この人は
見た目は茶色の天然パーマに、丸いメガネ。 冗談を言い合うときは、その髪型から“マリモ”なんてあだ名で呼んでいる。
響が周りの雲見上げてみんなに話しかける
「この後、雪が一時的に強くなるかもって先輩たちが話しているのを聞いたから、少し急ごう」
「その言い方……響たちも寄り道するんだね」
「短冊をかけるんだろ、俺たちも混ぜてくれよ。
「うん。行くよ」
男子たちは2歩分、私たちの前を歩くように校舎の外へと歩き出した。
「うしし……美亜ちゃん、よかったねー……」
「咲ちゃん!!しーーー!」
みーたんは咲にからかわれて、少し恥ずかしそうに怒っていた。
こうして、毎日のように雪が降る中、私たちは6人で一緒に帰ることになった。