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第4話 短冊

パラパラと雪が降る中、グッグ……っと通り過ぎていく人々に踏みしめられ、固まった氷と雪の間の道を歩いていく。

私たちは男子と女子で別々の会話をしていた。

 男子の会話を聞くと、明日の予定のことについて話しているっぽい。肉をどんなのにするかとか、親から貰える今回の予算だとか。

私たちは今日の短冊についての話をしていた。


 「咲とみーたんはどんなこと書くつもりなの? 」

 「美亜ちゃんは、響くんとのことだよね。あたしはあれかなー?……」

 「なんでそうなるの!?私は今回書くことは決まってるよ」

私と咲はまだ書くことがはっきりと決まっていなかったので、みーたんのその発言に話題を切り替えた。


 「美亜ちゃんの決まってることって……? 」

 「え、書くこと決まってるの?みーたん」


 「決まってるよ、教えたところで別に面白い訳ではないよ」

みーたんが口を開き、その短冊へ書く内容を口に出そうとする。私はそれを遮るようにみーたんの口を抑えた。


 「ちょっと待った。よし、予想大会しようよ」

 「霧音、いい考え! 」

 「わかった、でもヒントをあげると2人にはすぐに分かっちゃうから……んーどうしよ」


 「ちょっと3人、こっち今から大会するよ」

私は前を歩く男子たちに声をかけた。一番に反応したのは真城くんだった。

 「大会?なになにー面白そう」

優しい笑顔でこちらを見ながら後退してくる。その後、響と天貝あまがいくんがそれに気づいたかのように、こちらに集まってきた。



 「そんなゾロゾロ集まってまでするものじゃないよー! 」

みーたんは目を瞑り、3人を拒否するように両手を振っている。


拒否している様子を見てか、響は全員に話しかけるよう、その場の空気を変えた

 「短冊予想かー俺はまだ自分のやつを考えていなかったから、美亜のを聞いてから考えるよ」


 みーたんは全く悪くないけど、今の拒否行動で変な空気になりかけていたのを察しての発言だろうな。響、昔からそういう気遣いの出来る男だよねー……やるな響、みーたんはこういうところに惹かれてるのかな?


 響のその発言のおかげか、この場には“どんな内容でも良い”という空気感が流れる。


 「わ、分かった、私の内容当てたあと、みんなのも順にしようね、約束。あと、もしも当たらなかった時グダグダするのも嫌だから1人1回答ってことで」

 『うん! 』


まずは私から最初に予想した。

 「みーたんの短冊の内容か、今回ヒントはないんだよね。んー旅行したいところがあるとか? 」

 「全然違う、キーちゃんと咲ちゃんにはヒント出せないってのがヒントかな」


天貝くんが察したかのように意見を出す

 「そ、それって、恋バナとかの関連ですか……」

 「ち、違います!! 」

 「あ、分かったかも……」

その響の発言に周りの目は響に集まる。

響は考えるように斜め上を見上げながら、回答した。

 「実家の飯屋の安泰あんたいとか? 」

 「ん〜……ほぼ正解! 」


 「水野さんの家って飲食関係なんですか? 」

天貝くんはまだ知らないが他の全員はみーたんの家が定食屋さんなのを知っている。天貝くん以外は『なるほどね』と顔を縦に振りながら、各々の反応を口に出していた。


 「あ、駿しゅんは知らないんだっけ。美亜の家の飯は美味いぞ」

 「ごめんね、てっきりこの5人は全員知ってると思ってた、天貝くんが知らないことを知らなかった」


みーたんの発言に天貝くんは慌てた様子で「全然!全然! 」と問題ないとアピールする。

そしてその天貝くんに真城くんが提案する。

 「それなら、明日はバーベキューがあるから無理だろうけど、近いうちにみんなで食べに行こうよ」

 「うん!みんな来てよ、天貝くんにも知ってもらいたいし!」

 「わかりました、その時はお邪魔します! 」

 「みーたんの所のご飯美味しいからなー、楽しみー……おっとごめんなさい」


通行人と肩がぶつかり、私とその人は軽く会釈えしゃくした。


それを見た響は提案しながら歩き出した。

 「ここ道が少し狭いし、目的地の城山公園までは歩きながら話そう」

全員その意見に無言で同意し歩き出した。



 「美亜ちゃんのほぼ正解ってどういうこと? 」

咲は不思議そうな顔で、みーたんの顔を見る。


 「私の夢は家を継ぐことだからさ……今は高校2年で多分このまま大学に進んでーとかだとは思うの、お母さんは私に継がせる気はないらしくて」

 「え、美亜ちゃんのところって赤字なの!?」

 「ちょっと咲、その発言はデリカシーがないよ」

 「ふふふ……ありがとうキーちゃん、でも全然黒字なの、逆に赤字とかだったら私も別の道を考えたりするんだけど、愛知でも少しだけ名が通ってるし、お客さんも少なくない」

 「それなら、なんで?」


咲は質問を重ねた。男子たちも無言でみーたんの家の話に耳をかたむけていた


 「『これは、私が始めた夢』だから、美亜も自分の夢を見つけなさいって、私の夢が店を継ぐことなのに、お母さんは使命感で継ごうとしてるって勘違いしているみたい。何度も話しているんだけどね」


真城くんがそれを聞いて、笑いながら

 「そっかー夢か、俺たちもそれでいくか。でもそこまで真剣にまだ考えてはいないな、響って夢とかあったっけ? 」

 「美亜ほど真剣なのはないな、夢って言っても人によって大なり小なりはあるだろうけど、よし決めた俺が短冊に書くもの……ヒントは仕事とかではないな」


短冊予想大会のターゲットが響に変わった、だが全員が考えるまもなくみーたんは答える。

 「どうせバンドのフェスをしてみたいとかでしょ」

 「美亜、すぐにわかりすぎだろ! 」

響は驚いた顔でみーたんに突っ込んでいた。そのまま響は続ける。

 「霧音は決まったか? 」

 「え? 」














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