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3:「リリック・エコー」の氾濫と、ヘンテコリン式おでんタイムマシン(未遂)

田中一郎が未来の歴史学者ジクウ・ルリコと共に「時間冷蔵庫(クロノ・フリッジ)」で過去へとタイムワープしてしまった頃、地上では説明不能の奇妙な現象が多発し始めていた。


人々が日常で何気なく発する言葉やふと口ずさむ歌のフレーズ、あるいは遠い昔に誰かが言ったであろう「ダサいダジャレ」の断片などが、コトノハの残響(エコー)となって時空を超えて現代にランダムに、しかも脈絡なく具現化し始めたのだ。「リリック・エコー現象」である。


例えば、満員電車の中で、突然どこからともなく「♪窓に西日の当たる部屋は~ あなたの好みではなかったかしら~♪」と、数十年前のフォークソングの切ない歌声(のコトノハ)が響き渡り、乗客たちが一斉に感傷的な気分になって涙ぐみ始める。

あるいは国会で真面目な予算審議中に、遠い平安時代の貴族が詠んだ「月日は百代の過客にして…いや、待てよ、『ひゃくだいのぱすたきゃく』ってパスタの新メニューみたいじゃね? ププッ」という超絶ダサいダジャレ(のコトノハ)が議場にこだまし、審議が一時中断する。


「リリック・エコー」は時と場所を選ばず、あらゆる「言葉の記憶」を無差別に掘り起こし、現代社会にシュールでカオスな混乱をもたらし始めた。


この異常事態に、地上に残されたみさき、ヘンテコリン博士、怜花、そしてなぜか事件解決の鍵を握っていると信じて疑わない佐藤君は、純喫茶カオスの地下ラボで対策を練っていた。

「うーむ、この『リリック・エコー』は、単なるコトノハ現象の再発ではないのぅ…」ヘンテコリンは、壁一面に貼られた古今東西のダジャレ年表(自作)と、踊る冷蔵庫が残した霜の成分分析結果を睨みながら唸った。「時間軸そのものが不安定になり、過去の『コトノハの澱(おり)』のようなものが現代に漏れ出している…。田中君と未来人が過去へ飛んだことがトリガーになったのか、あるいはもっと根深い何かが…」


その時、冷蔵庫の霜から採取された微量の「未来エネルギーの残滓」にヘンテコリンが開発した「ダサ力コンバーター(最新型・おでん風味)」を接続すると、驚くべきことにモニターにジクウ・ルリコからの断片的なメッセージが映し出された!

『…タ…カ…ノ…リキ…カコノ…「サイキョウノダサリョクハッシンゲン」ヲ…チュウワ…シナイト…レキシガ…メチャクチャ…』

どうやら田中とルリコは、過去の特定の「強大なダサ力の発信源」を無力化するために様々な時代を飛び回っているが、そこで何かトラブルに巻き込まれているらしい。


「やはりか!過去のダサ力の暴走が現代のリリック・エコーを引き起こし、それが時間軸のさらなる歪みを招いておるのじゃ!」ヘンテコリンは膝を打った。「我々も田中君たちを助けに過去へ飛ぶぞ!『クロノ・フリッジ』の航路を逆探知し、追跡するのじゃ!」


しかし、冷蔵庫は行ってしまった。タイムマシンがない。

「ご安心を!」ヘンテコリンは不敵な笑みを浮かべ、ラボの奥から新たな発明品を引っ張り出してきた。それは…巨大なコンビニのおでん鍋に、無数の古時計とそろばん、そして何故か大根おろし器が取り付けられた、理解不能な代物だった。


「これぞ我が最新作!『ヘンテコリン式・おでん出汁(だし)循環型クロノ・ジャンパー(通称:時をかけるおでん)』じゃ!未来エネルギーの痕跡と、ここに残された佐藤君の強烈なダサ力ポエムの『リリック・エコー』を触媒にすれば、理論上は後を追えるはず!」

「おでんでタイムリープ!?」みさきと怜花は絶句。

佐藤君だけは「僕のポエムが時空を超える力に!やはり僕は選ばれしダサ力救世主!」と感涙にむせんでいる。


果たして「時をかけるおでん」は無事に時空を超えられるのか。そして田中一郎と未来の歴史学者ジクウ・ルリコが向かった「過去の最強ダサ力発信源」とは一体何なのか。物語は時空を超えたダサ力(ぢから)修復アドベンチャーへと、そのシュールな舵を切った。

醤油染みのプレリュードは、やがて壮大な(そして出汁の香ばしい)歴史改変交響曲へと発展していく!


(TT) ←(たぶん、おでんの湯気と、過去への不安と期待と、もう何が何だか分からなくなってきた読者の顔)

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