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第17話 妹との戯れ

とりあえずオカルトの本はそのままに、ブツに関しては丁寧に元に戻しておいた。

ふだでも貼ったほうがいいんじゃないか?


ゲームも本もないので暇を持て余し出した時に、詩織さんからご飯が出来たという呼びかけがあったので俺はリビングへと向かう。

昼食は豚のしょうが焼きだ、俺もしょうが焼きは好きだからこれは嬉しい!

味付けは最高だった、病院の食事も美味しかったけど、詩織さんの料理のほうがもう一段階くらい美味しく感じる。

神埼少年の好物って話だったし、もしかしたらそういうブーストみたいなのもあるんだろうか?


今はリビングのソファーに座って、満腹になった腹を抱えながらヒナタと一緒にテレビを見ていた。

この世界に来て初めてのテレビで気分が少し上がったけど、内容は元の世界のものとあまり大差はなかった。

ワイドショーにニュースにバラエティー、昼過ぎに放送されているのはこのあたりかな。

違ってるのは司会進行や出てくる芸能人のほとんどは女性で、男は一人居ればいいほうか?ってくらいに少ない。


「お兄ちゃんとテレビ見るのって、はじめてかも」


車に乗っていたときと同じようにヒナタは俺の右脇腹に抱きついてきている。

丁度いい高さにあるのでそのまま右手でヒナタの頭を撫でると、目を細めて「えへへ」と笑ってくれた。

比べるのも悪いとは思うけど、やっぱり元の世界の愚妹と比べて何倍……いや、何十倍も可愛い!


「テレビくらい一緒に見れるだろ?」


「それでも、してくれることなんて今までなかったから……」


「これからはいつでも出来るよ」


正直、今はテレビを見るよりもヒナタの頭を撫でている時間のほうが楽しいな。

今更だけど、ヒナタって鳶色とびいろの髪の毛なんだな、瞳も鳶色だ。

俺は黒系だし、詩織さんも黒い髪の毛だ。

染めてるのかな?と思ったけど生え際までしっかりと鳶色だ。


「おにいちゃん? どうしたの?」


撫でる手が止まったせいか、ヒナタはくるりとこっちに振り向いた。


「あぁ、いや。ヒナタの髪の毛の色って俺と違うんだなってさ」


「んー。たしか私とお兄ちゃんって違う精子だってママが言ってたよ。だからかも」


13歳の女の子の口から精子って聞くのはなんというか……こっちが恥ずかしくなるな。聞いちゃいけない事を聞いた気分になる。

そういや、朝倉さんも和姦とか言葉にしてたし、もしかしてそういうのに抵抗はないのか?

黙ってしまった俺をヒナタは覗き込み、不思議そうな顔をした。


「どうしてそんな顔を赤くしてるの?」


「頼むから、気にしないで」


「ヒナタ、そんな変なこと言ったかな?」


「いや、そんなことはないぞ! たぶん俺が考えすぎなだけだから」


「んー。ならいっか。それよりもっと撫でて欲しいな……」


ヒナタは俺の手を取って、そのまま自分の頭の上に俺の手を置いた。


「ヒナタはそんなに撫でられるのが好きなのか?」


「そうなのかも……されたことなんてないから、こんなの知らなかったよ……」


好きだって事ならいくらでもやろうかな。

俺はヒナタを撫で続けながらひとつのことが気になった。


「そういえば、今日って日曜日なのか?」


「いや、今日は木曜日だよ」


「え?」


今は昼過ぎど真ん中なんだけど。


「学校はどうしたんだ?」


「今日は休んだよ、だってお兄ちゃんが戻ってくるかもしれなかったし」


神埼少年ってそんなに家族に愛されてたんだな。


「ヒナタがお兄ちゃんを守らないといけないんだし、そのくらいはするよ」


「ヒナタが俺を守るのか?」


普通逆じゃないか?

兄が妹を守るってのは分かる話なんだけど。


「そうだよ、ママひとりじゃどうなるか分からないからね、こう見えてもヒナタだって鍛えてるんから!」


今にも喉をゴロゴロと鳴らしそうなくらい、トロッとした感じで撫でられ続けてるヒナタが強そうには見えないんだけどな。


「お兄ちゃんは高校に説明して休学届け出してるから、いつでも学校に復学できると思うんだけどね……」


「何かあるのか?」


「ほら、お兄ちゃんって受験に受かった後にすぐ入院しちゃったから……」


つまり、俺は高校に一回も行ってないのか。

リビングを見渡すとカレンダーがあり、そこには6月のものがあった。

ってことは俺は2ヶ月も高校が始まったのに行ってないって事になるのか!?

勉強についてはまるで心配してないけど、もう友人とかグループが出来上がってるんだろうな……。

そこにいきなり行っても、打ち解けられるか疑問だ。

そもそもこの世界って学校のクラスに男が一人いるかいないかって話だから、周りは全員女性なのか……難易度がハードからベリーハードに上がった気がする。


「でもお兄ちゃんって、もう女の人が怖くないんだよね?」


「そうだね、別に今はなんとも思ってないよ」


「だからあんなに看護婦さんたちと親しい感じだったの?」


「そうかな? 俺としては普通なんだけど」


「……嫌じゃないの?」


「全然そんなのはないかな。逆にどうして俺が嫌がる要素があるんだよ」


俺がそう言うと、ヒナタはニパっと笑う。


「今のお兄ちゃんなら学校でも大丈夫じゃないかな? むしろ張り切り過ぎないでって思っちゃう」


「ははっ、気を付けることにするよ」


そんなこんなで、途中から詩織さんも乱入しつつ、家族揃ってリビングで話しながら日が暮れていった。

こんな一日も悪くないなって、心の底からそう思えた。

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