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第24話 いざ戦場へ

寝る時間になってもまだ色々考えていた。

電気を消して、ベッドで横になって天井を見ているようで見えていない。

まぁ、元々出来の良い頭では無いけど、それでも俺の考え方ってものがある。

グルグルと自分の中で問答を繰り返していたけど、結局答えらしいものは見つからない。

そもそも、さっきの考えだって俺が勝手に考え進めて辿り着いたものだし、正しいとは限らない。

それに俺が知り合った全員がそう考えているように見えたか?と問われたら、違う気がする。


別に、考えても意味無いんじゃないか?


なんか、そう思えてしまった。

ごちゃごちゃ考えた所で俺の考え方が今更変えられないように、この世界の在り方だって変わらない。

お互いに害が無いなら共存だって出来るはずだ。


なんか吹っ切れてしまったな。


元々、俺は貞操観念なんてそこまで上等な物を持ってる訳でもないし、神埼少年の体で何がなんでも恋愛したいとか、結婚したいなんて理想もない。勝手に悪い方向に考えて気持ちを沈めるのは辞めよう。


もっと良い方向に考えるべきだよな。


仮に恋愛したい、もっと踏み込むなら性行為がしたいと考えた際に、人数的な問題もあるけど、この世界は圧倒的に女性が不利の立場だ。

これは俺の元の世界の男のあり方にも若干似てる。

あっちだと、結婚となると話は変わるけど、こと恋愛においては基本的に女性側に決定権がある。ならばそれをこの世界に置き換えた時に、俺の立場ってのはかなり特殊ってことになる。

男でありながら、コチラの女性的な思考も同時に持っていることになるはずだ。


俺が高校生くらいの時か……。


いや、これは参考にならない。

学ラン学帽で通学していた記憶なんか、今のこの時代になんの役に立つ?

もっと今を受け入れるべきだ。

彼女達は触りたい、触られたい、俺と同じくコミュニケーションを欲していたりする。


なら、彼女達の要望はもっともっと応えてもいいんじゃないか?


いや、一時の欲に身を任せるのは良くないはずだ。


でもその一時の欲の出処はどこだ?それを望んでいるのは誰だ?


だからといって、手を出すだけ出して知らんぷりは、彼女達にも申し訳が立たない。


それは、ちゃんとこの世界に沿っている倫理なのか?


………分からない。


これは情報が足りずに判断できる話じゃないし、考えたところでやっぱり意味は無いな。

俺はもっと色々なことを知る必要があるかもな………。

もういいや、とりあえず寝てしまおう。







「お兄ちゃん! 朝だよ、起きて!」


俺はヒナタに揺さぶられて目を覚ました。

今日は日曜なのに、ずいぶんと元気だな。


「ヒナタはこれから部活の試合に行かなきゃいけないから、お兄ちゃんお留守番よろしく!」


「それを言いに起こしたのか?」


「あとママから伝言。急な仕事が入って家を出るって、朝ご飯ももう作ってあるから食べててね」


詩織さんってたしか商社務めだったよな、急な発注でもあったのかな?


「わかったよ、起こしてくれてありがと」


「うん。それじゃ急ぐから!」


ヒナタはいつも慌ただしく俺の部屋から出ていくな。

そのまま起きた俺は用意されていた朝ごはんを食べる。

内容はご飯に味噌汁に目玉焼き、ごく普通の和風な朝ごはんだ。

誰もいないから皿を下げたり洗ったりと簡単な家事をこなして、神埼少年の服を着て外出の準備をする。


財布よし、スマホよし、地図アプリもよし!


地図の検索方法も完璧だし、この家の住所も既に登録済みだ。

ここまで抜かりは無い、準備は万全だ!


俺はキツめに靴紐を結んで家の扉を開く。

やはり見慣れない風景だけど、この手には地図かあるから迷うことはない。

道先案内人地図アプリは俺が望む宝の場所を狂いなく教えてくれている。


なんか色んな人から見られてる気もするけど、それどころではない。


家を出てから早歩きで20分ほど進んだ先に、目的の場所へと到達した。


「ここか」


思わず声が出てしまう。

その目的の場所は駅前の本屋「アトム書店」、盟友である凜花さんが教えてくれた場所だ。

話によれば、この本屋がここら一帯で一番の品揃えらしい。


見せてもらおうか、地域で一番の品揃えとやらを!


気分は某赤い人で自動扉を越えていく。

少し離れたところから歓迎の声が聞こえてくるが、今は捨ておく。

売り場は言うだけあってかなり広い、だが天井から吊るされたポップが俺の目標の位置を教えてくれた。

ふっ、甘いな。自ら位置を晒すとは!

まずは漫画コーナーを物色だ。

到着したが、漫画本は透明のパッケージで覆われていて中身を立ち読みすることは出来ない。


ええぃ! パケ買いしかないだと!?


こうなれば絵の好みで買うしかあるまい!

本棚は5、じゃなくてもっとあるな。

この無数の中から好みの物を探さなければならない。


やってみるさ!


俺は背表紙のタイトルだけで良さそうなのをピックアップして手に取る。

手早く表紙を確認しては俺の手の中で漫画が増えていく。


いや、これ表紙があんまり好みじゃないから戻そう。


とりあえずはタイトルと表紙が好みの物を全て1巻買いで6冊を選んだ、まずは読んで面白いものの続きを買うという絨毯爆撃のような買い方だ。

本来であれば週刊誌や月刊誌を買うべきなんだろうけど、続き物の途中から見たところで内容が掴めないだろうから、今は買わないでおく。


一通りざっと見終わり、次はラノベコーナーだ!


ラノベは漫画より種類はない、だが続刊しているものが多い。

とりあえず、タイトルが面白そうで続刊しているものの1巻目だけを取っていく、これに関しては表紙は気にしない、重要なのは小説の方だからだ。


「13点で14580円です」


「はい」


俺は心の中で敬礼する。


君はいい友人だったが、俺の物欲がいけないのだよ!


謀ったなーと今日初めて連れてきたお札が嘆いている気がするような、しないような。


「ありがとうございましたー」


その言葉に俺は手で挨拶する。

後はもうこの戦場本屋を後にするだけだ。

戦場に戻れば地獄に落ちると赤い人も言ってたし。

……いや、それは違う人か。


戦利品も大量に獲得して最高の気分だ、後は家に帰って読み漁るだけだな。


と思っていた矢先。


「ちょっといいですか?」


と、戦場から1人の女性が出てきた。


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