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第25話 Win-Winの関係

声をかけられて、俺は振り向く。

見た目はかなり若い女性が俺を呼び止めていた。

同じ学校の同級生かな?と思ったけど、俺の記憶の中にはこんな子はいないな。


「……なにか?」


早く家に帰って本を読みたいのに。


「いやー、そのー。君みたいな男性がひとりでこんな店にくるなんて珍しいからさ……フヒヒ」


明らかに挙動不審な感じで話しかけてくる。

猫背でなんか明らかに怪しい感じだけど、顔が整ってる人だからあんまり嫌悪感は無いな。

でもお手入れをサボってるのか、髪とかボサボサだけど。

イメージ的にはポ〇モンのオカ〇トマニアみたいな子だな。


「漫画とラノベが欲しかったから来ただけだよ、それじゃもう行くね」


「あ、待って!」


「まだなにか?」


「良ければお話出来ないかなーって、お茶飲むだけでもいいんだけどー……ほら、君が買ってた作品ってコッチも好きなんだよねー……なんて」


そこでティンときた。

これ聞いたことあるわ、ナンパだわ。

まさか俺がナンパされる側になるなんて思ってもなかった。


ん? 待てよ。


むしろこれは丁度いいんじゃないか?

この子も見た感じは高校生だし、もし上だとしても大学生くらいだろうな。

若者であるこの子に色々と話を聞ければ納得のできる情報が得られるかもしれない。


「いいよ、それじゃ話しようか」


「え!? ホントに!!?」


なんでそんなに驚くんだよ。


「でも出来れば2人きりになれる場所がいいかな、俺が聞きたいことってあんまり人に話せる内容じゃないかもしれないから」


「ふ、ふたりきりィッ!?」


だからなぜそんな驚くのさ。


彼女が大きな声を出すから周りから凄い見られはじめた。

ただでさえ俺一人でも見られるのに、変に目立つのは勘弁して欲しいな。


「よし、とりあえず歩こう」


俺は彼女の手を取って引っ張る。

………なんかこの子、手汗がすごいな。


「ハヒッ」


人選を誤ったかもしれないな、これ。




とりあえず本屋前で集めた視線が無くなるまで歩き、そのまま彼女に話してみることにした。


「俺の名前は神埼 守、あなたの名前は?」


「うっ、ウチの名前は倉木 由美くらき ゆみッ」


「このままになっちゃうけど、話を聞いて欲しいんだよね、いいかな?」


「もちろんだよぉー、何でも話して!」


「じゃあ単刀直入に聞くけど、なんで俺をナンパしたの?」


「あやー、それはその……カッコイイなって思って……デュフッ」


そういう笑い方する人って本当にいるんだな。


「それってどういうつもりでナンパしたの?」


「どうって……お近付きになれたらなーって。あとそれの話とか」


それと言いつつ俺の持ってる袋を指をさした。

本当にこの子は漫画とかラノベが好きなタイプなのかも?


「なるほど、それだけでいいの?」


「ふぁ?」


「それ以上はしなくていいのって?」


「そ、そそ、それ以上とは!?」


あ、こりゃ駄目そうだ。


「ごめんね、なんか俺が勘違いしてたみたいだ」


俺が謝って手を離すと、慌てて向こうから手を握ってきた。


「ど、どこまでいいんですかッ!?」


おっ、乗ってきたな。

目がさっきと違って少しギラついてきてる。


「どこまでもって言ったら?」


俺が笑ってそう言うと、由美さんは真っ赤になった。

分かりやすい子だな。


「本当に? 本当にいいんですかッ?」


「でも、お母さんが心配しない? 怒られるような事は辞めた方がいいよ?」


「それは心配ないよ、ウチは放任主義だからっ!」


「そっか。でもさ、たぶん俺は由美さんとは付き合えないし、構うこともできないかもよ?」


「プフフッ、別にそんなの、ウチは気にしないよっ。気が向いた時に話せればいいよっ」


なるほどな、あくまでこの子の場合だけど肉体関係が持てればいい感じか。

若い子がこういう考え方なら、俺も考え直した方がいい部分がありそうだな。


情報がある程度掴めたので手を離そうとしたんだけど、割とガッチリ俺の手が掴まれてて離れない。


「あの? 由美さん?」


「良いんだよねっ! こんなウチでもっ! 良いんだよねっ!!」


アカン、なんか鼻息がすごい荒いしスイッチ入ってるぞ、これ。


「分かったから、ちょっと落ち着いて」


「ンフッンフフフフ」


「なら最後の質問、これに答えてくれたら何でもするから、落ち着いて聞いてくれ」


「い、いま、何でもするって!?」


俺は一息ついてから、核心を聞く。


「やる事やったら妊娠するかもよ? それでも良いの?」


これが俺の知りたい本命の質問でもある。

少しでも戸惑う素振そぶりを見せるなら、やはり気軽に手を出すべきじゃないって事だ。


「ぇ!? 妊娠するまで面倒見てくれるんですかぁ!?」


「……………ちょっと待って、なんでテンション上がってるんだ?」


「だって、生涯で出来ない人も多いのに、ウチなんかがいいんですかァ?」


「親御さんが泣かない?」


「え? なんでそうなるの?」


うわ、なんか急に素に戻ったぞ。

しかも意味が分からないみたいな顔されてる……。

やっぱ俺の考え方ってそんなおかしいのか!?


「わかったよ。話を聞いてくれたお礼として何でもするから、好きなところに連れてってくれ、俺は土地勘があまりないから道案内は任せる」


「フヒヒッ、分かりましたァー……」


擬音を付けるならニッチャァァァって感じで由美さんは笑っていた。

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