由美さんは完全に燃え尽きてしまい、ガニ股の状態でスヤスヤと眠りについていた。
ちょっとやり過ぎちゃったか?
女性にとって、これはあまり見られたくない姿だろうから、そっと布団をかけて姿が見えないようにする。
前の体より体力があるからか、1度したくらいじゃ全然収まらないけど、この状態の由美さんを相手にするのは可哀想だからそっとしておくこう。
俺は気持ちを切り替えて裸のまま風呂へと向かい、未使用の湯船の横でシャワーを使って軽く汗を流して身を清める。これは禊のようなものだ。
なんせここからは、お待ちかねの開封の儀が待っているからだ。
俺は体を隅々まで拭いて、丁寧に髪を乾かし、服のシワを伸ばしながら着る。
さてと、お楽しみの時間だ!
とりあえず袋から中身を見ずに、1冊目を取りだす。
これは表紙がロボット系の漫画のやつだ、パッケージを破って中身を見る。
この作品はどちらかというとスーパーロボットだな、メカニックの見た目はボト〇ズの正式主力ATに似てるけど、やってること真ゲッ〇ーだコレ。これでは
でも1話を読み終わった段階で結構面白いから、これは後でじっくり読もう。
さて、次にとりかかろう。
次も見ずに手に取る、これはラノベか、表紙の女の子がメチャクチャ可愛いやつ!
期待して中身を見ていく、フルカラーの絵は最高なんだけど……なんだかなぁ。
思ってたのと違うというか、なんだこれ?
普通に学園恋愛ものかと思ったら登場人物は全員女の子で学校が海に繋がってて生徒が潜水艦に乗り出したぞ?
しかも1人1隻で戦うのか?
うん、まぁ、そういうこともあるか。
いや、ないか?
そもそも潜水艦って1人で動かせるもんじゃないよな?
ガル〇ンを見習って欲しい。
うーむ、これはよく分からん枠として、家でじっくり読もう。
さて、時間もあまりないから次に行こう。
次は…っと、次もラノベか、これは結構見た目が攻めてる奴だ。
つい釣られて買っちゃったもののひとつで、タイトルも『私はご主人様の下僕になります!』って大分ストレートなやつ。
表紙の女の子の服もギリギリ下着が見えないとかそんな話ではなく、さらにその中身の具がギリギリ見えないくらいの、スレスレなやつだ。
さて、中身は…………うん、これ普通に全年齢で売っちゃいけないやつだわ。
レーティングを確認するもR-18みたいな記載はどこにもない。
これ全年齢向けなのか?
抜いた後じゃなかったら普通にイケるレベルで過激な内容だな……。
「うー……ぅん……あれ?」
そんなこんなで開封の儀を執り行っていたけど、由美さんが目を覚ました。
本当はこのまま開封の儀を続けたいけど、そこはぐっと我慢する。
「ウチ……寝てた……?」
「おはよう、少し休めた?」
「あぇっ!? お、おはようございます!」
由美さんは自分の今の格好に気がついて慌てて布団を被り直した。
その様子を見て開封の儀を再開しようとしたら、彼女が割って入ってきた。
「あ、それっ、下僕になります!の1巻? ウチもそれ好きなの」
え? これを女の子が見てるの?
かなり過激なのに見れるのか……いや、女の子だからこそ見るのか。
この作品は前のふたつとは違って男の登場人物がいるみたいだし。
「この作品ってもしかして人気だったりするの?」
「かなり売れてるよ……この前30万部突破したって、ウチの仲間はみんな見てるかな」
ラノベで30万ってかなりのヒット作じゃないか?
そういう事なら、面白いことが約束された勝利のラノベとして、読むのは温存しておくのも悪くなさそうだ。
鼻歌混じりで開封の儀を進めて、半分くらいの本の精査が終わる頃に、由美さんが服を着て俺の横に座った。
「本屋の時から見てたけど、なんで全部1巻だけなの?」
「あぁ、俺は漫画もラノベも好きなんだけどさ、最近のものはまるで知らないんだ。だからこうやって色々買って、続きが読みたいやつだけ改めて買おうとね」
「………そう、そうなんだ……なら今度ウチのオススメの本を貸そうか?」
「本当か!? それはすごく助かる!」
「ハヒッ、じゃ、じゃあ連絡先を……そのー、交換したいなって………」
「もちろんだよ!」
俺は携帯を取り出して由美さんと連絡先を交換した。
いやー、オススメを教えてくれるなら無駄に本を買わずに済むかもしれないし、初めは不審者っぽかったけど優しい人なんだな。
「ありがとう! これからも宜しく!」
これがこっちの世界に来て、いや、前の世界の時から含めて、初めて心の底からオタク仲間と呼べる友人との出会いだった。
「は………はひいぃぃぃ〜………」
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トーキン
< 99+ 里穂
U民『助けて!』
里穂『お前もか! いい加減、凜の助けてコールも鬱陶しいのに』
U民『いや、コッチのはもっと現実的だから!』
里穂『チャットの仕方がいつもと違うから、何となく緊急事態ってのは分かった、とりあえず話せ』
U民『処女捨てた』
里穂『嘘乙、ネタにしても何番煎じだよ、もう味がしねぇよ』
U民『マジなんだって!』
里穂『あっそ。おめでとうとでも言えばいいのか? クソが! もう終わりな、この話』
U民『それがさ、相手が凜の想い人なんよ』
里穂『続けて?』
U民『凜がさ、例の条件無しの男子にアトム書店をオススメしたって言ってたじゃん?』
里穂『言ってたな』
U民『ウチも買いたい本があったから行ったんだけど、そしたらあの写真の人がいたんだよ!』
里穂『マジかよ、すげぇなそれ。んで、いくら払った?』
U民『何も払ってないわ! ウチから声をかけたんだけど、そしたら話の流れで何でもしてくれるって言うから……』
里穂『さすがにそれは嘘だろ? ネタにするならもう少し練ってから来いよ』
U民『嘘じゃないって! その男子と施設に行って捨ててきた、疑うなら連絡先交換したから、次会った時に写真送る』
里穂『いやいや、信じられねぇ。オレは凜の話でも半信半疑だってのに』
U民『里穂になら紹介できるし、彼もだいぶオタクだから仲良くなれると思ったけど、そこまで疑うならこの話はリナリーにするね』
里穂『待て、それは話が違う』
U民『でも信じられないでしょ?』
里穂『分かった、信じるから。でも凜はどうするんだ?』
U民『それを相談したかったんだ、どうしたらいい?』
里穂『………どうもこうもねぇよ、オレは関係ないからな! 巻き込むなよ!』
U民『そんな事言わないで助けて!』
里穂『とりあえずリナリーも入れて3人グループ作って作戦会議するぞ』
U民『お願いします! お願いします!』