< 0 すみれ
神埼『遅くなってごめん、ID登録したよ』
すみれ『気になさらないでください、登録して頂けただけでも嬉しいです、ありがとうございます』
神埼『いえ。ところでどうしてIDを俺に?』
すみれ『仲良くなりたかった、という理由では駄目でしょうか?』
神埼『そんなことないよ、俺も嬉しいけど。この前の彼氏に悪いでしょ』
すみれ『やはり勘違いなさっていますね、先日の方はお付き合いさせてもらっている訳ではありません』
神埼『そうなの?』
すみれ『はい、あの方は私の親の紹介でして、婚約者にどうかと進められただけです』
神埼『それだけであんな仕打ちを受けるなんて』
すみれ『あの方は特に乱暴な方のようでしたね。お試しで数日は一緒に居て耐えていたんですが、限界でしたのでもう婚約はお断りしました』
神埼『それにしても高校生で婚約なんてするのか』
すみれ『それは私の家の事情も加味するお話となってしまいますので、追及しないで頂けると助かります』
神埼『わかった。そういえばクッキー美味しかったよ、ありがとう』
すみれ『市販品の物で恐縮です。手作りも考えたのですが殿方に手作りのものを渡すというのは私には難しくて』
神埼『気持ちだけでも十分だよ。あとそんな改まらなくてもいいよ、同じ学校の学生なんだしもっと気楽に行こう』
すみれ『それはもう少し時間を頂きたく思います』
神埼『わかった、それはすみれさんのペースでいいから』
すみれ『恐れ入ります』
神埼『それにしても昨日の今日でお礼に来てくれるとは思わなかったよ』
すみれ『それは私の母からすぐに礼を返しなさいと発破をかけられまして』
神埼『なるほどね』
すみれ『もちろん、私としてもすぐにでも返したい気持ちがありましたので教室まで
神埼『なんか俺のほうが恐れ多い気持ちになっちゃうよ、それにすみれさんは可愛いからきっとこれから良い婚約者に巡り合えると思うよ、頑張って!』
すみれ『あの、それはどういう意味でしょうか?』
すみれ『神崎様、さきほどの意図をお教え願えないでしょうか?』
< 2 ジュリ
神埼『さっき教えられたとおり登録したぞ、これで良いんだよな?』
ジュリ『おー、神っち、やっとトーキン入れたんだ!』
神埼『学生はこれでやりを取りするんだな。連絡先聞いた人はみんな電話番号で聞いてたよ』
ジュリ『番号からトーキンに自動登録する設定もあるよん』
神埼『本当か? ちょっと調べてくる』
ジュリ『たしかアカウントから設定でできるはず、あーしもやったけど昔すぎて忘れた』
神埼『できたかな? いつも助かるよ。今日の事もありがとうな』
ジュリ『気にしないでいいよ、でも神っちって甘すぎるしアレじゃいつかヤバくなるよ?』
神埼『俺も反省してる』
ジュリ『気になったんだけど、そんなんで中学はどうしてたん? 地獄だったっしょ?』
神埼『樹里なら話してもいいか。実は俺、昔の記憶がないんだよ』
ジュリ『マジ?』
神埼『本当だぞ。だからこれから色々教えてくれると助かる、あとこれは他言無用で』
ジュリ『ってことは中学の記憶もないの?』
神埼『誰とどんな話をしたとか、中学の思い出とか、そういうのはまったく無い』
ジュリ『はぇー、そんなのあるんだね。そういうのってドラマの話だと思ってた』
神埼『だから今後、学校で俺が変な事をしだしたとか、女の子の目線で危ないなって思ったら止めて欲しいんだ』
ジュリ『おけまる!』
神埼『頼んだ』
< 5 U民
U民『神埼氏!?』
神埼『どちらさまですか?』
U民『この前の日曜日にお世話になった倉木 由美です。え? 人違い?』
神埼『あぁ! いや俺で合ってるよ、名前が違うから分からなかったよ』
U民『名前は変えて登録してるから……分かりにくい?』
神埼『いや、俺はまだ機械に弱くてそういうの知らないんだ、誰か分かればもう大丈夫』
U民『ほほう、ならウチが手取り足取りお教えしますぞ』
神埼『助かるよ。それで俺からも連絡したかったんだ』
U民『ウチに? 何か御用で?』
神埼『オススメの本を貸してくれるって話だったからさ、すぐに貸してくれとは言わないから教えてくれるだけでも嬉しいなって思って』
U民『もちろんそれは構いませぬが、長くなりますぞ?』
神埼『望むところだ!』
U民『では、また次の日曜日にアトム書店でどうですか?』
神埼『日曜なら空いてるから行けるよ!』
U民『あと神埼氏に同じ趣味の子を二人紹介したいんだけど、いいかな?』
神埼『同類だったら大歓迎だよ』
U民『かたじけない、時間はその二人と調整するから、あとでまた連絡するよ』
神埼『分かった、決まったら教えてね』