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第45話 はじめての学校行事

結果から言うと、あの小僧は停学になっていた。

停学中はペナルティとして色々とをこなさないと復学が出来ないらしく、話を聞く限りではこれが相当大変らしい。


まぁ、なんで大変かは言うまでもない。


男ってだけで無条件に国からの給付金で学校に来れてるんだから、罰則も国益が多少でも絡むものを求められるんだろうな。


そんなこんなで時間が流れて、日差しが少し強くなった6月後半に予定されていた体育祭が始まる。

とはいえ、甘酸っぱいような誰かと一緒にドキドキしながら登校……なんてことも無く、相変わらず詩織さんに学校まで運転してもらって、いつも通りに教室に行く。

詩織さんは体育祭を観れない事を残念そうにしていたけど、桜花高校の体育祭は保護者や家族は観戦することは出来ず、グラウンドの中にいるのは生徒のみとなっている。


俺は教室から椅子を持ち出して、グラウンドの決められた場所であればその椅子を自由に置いて良い。

うちのクラスの場所も決められているけど、俺はそのエリアのど真ん中に座るように言われた。


「いや、俺は最前列がいいんだけど」


「別にいいけど、他クラスからも見られることになるわよ」


そう凜花さんに言われたけど、今更である。

好まれてるか嫌われてるかは別として、俺は多分全校生徒に知られてるだろうしな。

どうせなら他の生徒の活躍とかも見てみたい。

桜花高校のグラウンドはかなり広い、俺が昔通ってた高校よりもだいぶ広いし、グラウンド全体を明るくできるほどの巨大な照明設備なんかも揃っている。

俺は少しゴリ押ししつつも、そのまま最前列まで行く事にする。

右隣には凜花さんが座り、反対には樹里の椅子が置かれてるけど、樹里は体育委員で東奔西走とうほんせいそうしているらしい。

それなら別に樹里の椅子じゃなくても良いんじゃないの?と思ったけど、クラスの女子一同としてはそれで良いらしい。

意味は分からないけど、良しとするなら俺に異論は無いけどさ。


やっと椅子に座って周りを見ると、他のクラスも続々と座り出している。

話に聞いていた通り、女子を侍らせているというか、女子から強制的にお世話されてる男もいるし、小僧のように生意気そうな男もチラホラ見かける。

見てわかるのは基本的にクラスに男は1人しかいないようで、休みなのかは知らないけどそもそも男がいないクラスが約半分ほどか?

それでも男が居ないからって生徒が腐ってる訳でもなくて、みんな体育祭を楽しもうという意気込みは全体から感じられる。


グラウンドの周りをぐるりと生徒達で埋め尽くされたところで、開会の挨拶がはじまった。

生徒が中央で整列するとか、そういうのではなく、みんな椅子に座りながら話を聞くスタイルのようだ。

校長の話からはじまり、お決まりの選手宣誓と生徒会長の開催の宣言で体育祭は幕を開けた。


あとはまぁ、なんと言うか……。

保護者目線って訳じゃないけど、参加する競技がないので少し拍子抜けなところもある。

それでも自分のクラスの女子が勝てば嬉しいものだな。


「いぇーい!」


うちのクラスで200m走で1位を取った子がみんなとハイタッチしていくので、俺もハイタッチに参加したりとか、大声で応援したりもしていた。

俺も混ざって勝ったらみんなで喜んだし、負けてもみんなて励ましあったりしていた。


そんな中でも、ちょっと気になって他のクラスの男の動きを見ていたりしたけど、まったく動きらしいものは見えない。

自分のクラスの人間が勝っても興味が無いのか、どうでもいいといった感じだ。

それぞれが今やりたいことをやっでるだけのようにも見えるし、なんと言うか……男はクラスの輪の外にいるような感じだった。


「ねぇ、凜花さんや?」


「どうしたの?」


「普通の男って、みんなあんな感じなのか?」


親指で肩越しに別のクラスの男を指すと、凜花さんはウンウンと頷いた。


「まぁ、普通はアレよね。中学の体育祭の時は女子と一緒になって応援してる男子なんて一人もいなかったわ」


うーむ、やはりあれがスタンダードなんだな。


「俺もそうするのが良いのかな……」


「神埼君はありのままでいてください!」

「他人を真似ることなんてないよ!」

「むしろ他所が薄情なんだよ、神埼さんくらいのほうが私は好きだよ!」

「わたしもそう思います!」


「お、おう。わかったよ」


それほど大きな声で言ったつもりは無いけど、周りの人達から腕をつかまれたり、抱きつかれたり、揺さぶられたりと猛抗議を受けたので、それは辞めることにした。


それよりなんか周りの女性の視線が集まってる気がするんですけど!?


俺はこの視線を知ってる。

これは、いつも俺がジロジロ見られるタイプの奴じゃない、この世界に来て初めて感じるタイプの視線だ。

午前中は競争関係が多く、平和に終わったが……やはりと言うか、問題は午後の部から発生した。


「おらぁぁぁぁああああ!!!」


「くたばれやぁぁぁ!!」


「おっしゃぁっっ!!!」


雄々しい雄叫びを上げる女性陣。

午後の部からは騎馬戦やら棒倒しみたいな競技が目白押しだ。

3年の騎馬戦には例の風紀委員の江田〇平八の騎馬もいて、その上には長身の中野さんが乗ってるのでハチマキの高さが3mくらいの位置にある、あれは反則だろ。

倒すことも出来ず、ハチマキも取れない無敵の騎馬が完成していた。

ジャイ〇ントロボかな? 大作くんデカイけど。

相手の騎馬達が蜘蛛の子を散らすように逃げていくのを見てる分には面白いな。


そして問題の、うちのクラスの騎馬戦だ。


やっぱりと言うか、案の定と言うか、相手のクラスの戦意がとても高い、1部の生徒は気炎を吐いたり、鼓舞したりしている。

騎馬戦だったら俺も出たかったけど「男子のやる競技じゃない」らしく、俺は大人しく1人で応援することにした………。


結果としては、うちのクラスの惨敗だった。


友情パワーとか、俺の声援が届いて真の力が、なんてことも無く。

逆に俺が応援する度に相手の戦意が上がってるようにも見えた。現実は非常である。


「そうなるよねー、あんなん無理じゃね?」


「樹里、仕事は終わったのか?」


「もちっ! あとは夜の部だし、あーしはもう遊ぶよ! その為に午前と午後を頑張ったんだからっ!」


「そうか、よく頑張ったな。あとはゆっくり遊べよ」


「神っちも! あーしと一緒に遊ぼっ!」


樹里にはいつも世話になってるし、ここで目一杯付き合うのもいいかもな。


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