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第11話 他の知られてない星座をも生み出したい欲張り

 本気になり始めた。

 それは、……やはり、そういう意味で?

 それとも、主人を一人に統一させて、そろそろ本気でプラネタリウムの完成を狙いだしたと言うことか?


 プラネタリウムの力は凄まじく、破壊兵器という言葉は或る意味当たっている。

 黄道十二宮を揃えれば、きっとありとあらゆる刺客からは逃れられるほど強靱にはなるのだろう。防御も攻撃も治療も、そういった面に強いのを知っている。


 蟹座が良い例で彼のお陰で、瀕死体験は何度もしたが、それでも今日までこうして生きているのは彼が己に乗り移って敵へ攻撃すると、大抵相手は死ぬからだ。


 彼の機嫌が良くても、体の一部は必ず失うくらいまで攻撃する。とりあえず、黄道十二宮一人でこの威力とは、凄まじい。全員が揃ったときは。


 それ故に前の主人は急に怯えて――爆弾抱えてるようなものだから――、一切の星座を最初から作り直すように封印してから、捨てたと聞いた。鴉座から。


 だから己が手にしたときは、何の星座もなかったようだ。

 何故覚えているかと聞いたら、星座には以前の主人の記憶が誰だかはなくとも、情報だけは脳に残っている星座もいるという返答を貰った。



「ふむ……」

「ふむ、じゃないの!! 陽炎ちゃん、もうこうなったら、肛門塞ぎなさい! 肛門さえ塞げば、男同士は……」

「馬鹿、便が出ないだろ! って、何でお前、どっからそんな知識得てるの! 俺の教育法が間違ったように見られるから、人前では猥談はするな!」

「あら、教育法が間違ってるように見られてもあたしは平気よ。間違って育てた責任をとってよ、体で」

「……愛属性な奴って、変態ばかりな気がしてきた」


 ため息をついて、陽炎は大犬座から離れるように衣服を選んでいる冠座の方に歩み寄る。

 一生懸命に一番似合わなさそうなものを選んでいる彼女。だけど他の者が見たら、それは素晴らしく陽炎にはぴったりと似合うであろうセンスの良い物。

 彼女の能力は確かにあるのだから、彼女が選ぶのとは逆を目指せばそれは己のために生まれた衣服のような存在感になる。

 それに陽炎も冠座も気づかない。



「冠座ー、服決まった?」

「一番似合わないっていうのが、結構難しい注文よ。私、ほら、センス良いから」

「うん、だよな」

「それで? 果物と赤蜘蛛、どっちを優先するの?」


 その言葉にむぅと唸る陽炎。

 星座は見たいし、新しい仲間とも話してみたい。だがそれをしてみると、蟹座からのドメスティックバイオレンスが待っている。蟹座に力で勝てる者は今のところ居ない……。


「あー、でもいざとなったら、大犬座の力で逃げればいいか」


 大犬座は交通を操ったり、逃げやすくしてくれたり、乗り物になってくれる。

 なので、長距離行動や、逃げるときには重宝されるものなのだ。

 陽炎の呟きに、じゃあ果物? と、冠座は首を傾げて、服を押しつけて試着室へ陽炎を押しやる。


「いいや、両方にするよ。そしたら、赤蜘蛛の周辺もやったじゃんって言えるからね。同時進行でいこう」

「陽炎ー、余計なお節介かも知れないけれどね、二兎を追う者一兎も得ず、っていうよ?」

「……――うん」

「それに、あいつら三人が何か企んでるっぽいことがさ、星座関連なら……集めるのやめてしまえばいいのに、って思う。陽炎は、十分やったよ。百も痛み虫を集めて、頑張ったよ」


 冠座の言葉に何か考えにふける様子が、試着室越しから感じられる冠座は陽炎の返事を待つ。

 陽炎は数分経って、着替え終えながら、返事をする。


「でもさ、俺、鴉座作ったときに、あんなに感謝されたの初めてなんだ。まさか自分を作ってくれる人がいるなんて!! って、泣かれたんだよ。……きっと、他にもそういう星座はいると思う。だから、……なるべく、作って、そんで俺も昼に完璧なプラネタリウムを見てみたいんだ」


 そう言って試着室から出ると、陽炎の衣服は陽炎の眼鏡に見合う上品な装いになっていた。

 その上にはマントではなく、コートを選んでみた冠座は、陽炎を半目で見やり、ふぅんと頷いた。


「陽炎はそういう知られていない星座を作りたいの? 黄道十二宮じゃなくて。黄道十二宮なら強い力持ってるよ。鳳凰を見てみなよ、鳳凰には何も力がない」

「力がある、ないだったら最初に十二宮作っておしまいじゃね? ……なんつーかなぁ、誰にも見つからない場所に閉じこめられて、見つけてくれたときの嬉しさって言うのは分かるからなぁ。鳳凰はあれでいいの、あの子で俺は癒される。愛だったらもっとよかったんだけどね、あの変態三人じゃなくてさ……!!」


 陽炎は顔を俯き、もう嫌だと言わんばかりに首をぶんぶんと振って、気苦労の多さを見せつけてくれた。何だかこう育児に疲れた主婦を見ている感覚だった、冠座は。


「はいはい、泣かないの。おーい、大犬、これでどうかしらー?」


 冠座曰く全くセンスが伺えない衣服に、大犬座はOKを出した。

 それに二人は首を傾げて、こういうのが本当にいいのだろうか、と疑問に思った。

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