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蝶舞山揺 弐 その2

 慌てて確認する楓。


 「降りた? 今降りたな?! バタン言うたんはドア閉めた音やんな?」


 ルネ、無視。


 「降りた? ルネ降りた? 降りたやろ? ルネ降り、、、」

 「、、、うっさい! 降りたわよ!」


 無視を決め込んだのに、応えるまで永遠に楓の声がイヤホンから聞こえると思うとウザ過ぎてツッコんでしまっていた。


 「やっぱ降りてるやん! どこやねん! どこで降りてん!? ウチに解かるように言わんかいな!」


 フィアット500の前に、ゴスロリが立つ。

 そこは二車線の、川沿いの道。

 信用金庫を襲った六人組は日暮れまで隠れ、それから一般人はもとより、警察さえ自由に出入りできない結界内へコッソリ逃げ込む予定だった。

 そのつもりだったのに、銀行員の誰かがどうやったか知らぬ間に非常ベルを押し、警察に連絡を入れていた。

 お陰で当初の計画はご破算、駆け付けた警官隊と小競り合い。

 だが、仲間のEG使いが警官隊を圧倒。

 まんまと大金を車に乗せて、包囲網からの脱出に成功した。


 EG使い、やはりその力は絶大。


 とは言え、逃げ出すのに成功したものの逃走用の黒いバンは大量のパトカーを引き連れる状態になってしまった。

 六人組の強盗団、あまり頭脳派では無いらしい。

 それでも、黒いワゴンの強盗団には余裕があった。

 なんたって結界内に逃げ込めば、だ。

 ナゼならこっちには、EG使いが居る。

 EG使い、結界内なら状態。


 もう少しだ!

 黒いバンは信用金庫の前の道を、一旦いったん南へ下る。

 大きな交差点で西へ行けば結界内なのだが、そこへ続くメイン道路の国道1号線はけた。

 そこには、城東じょうとう署が在る。

 警察署の前だ。

 何かしらバリケード的なモノがあるかも知れない。

 念のためだ。

 念のため、メイン道路を通り過ぎ、黒いバンは川沿いの裏道へ。

 コンクリートの壁沿いの道。

 二車線道路。


 そこは、楓が言ってた道、、、。


 細い道に、波手なサイレン音が響く。

 奇麗な二重の瞳が、小鼻こばなふくらませてそれを見てた。

 ちょうど裏道へ入った黒いバンが、パトカーを引き連れてこちらに向かって逃げて来たところだった。


 「楓、ビンゴ!」


 ルネ、感心。




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