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蝶舞山揺 弐 その5

 赤い炎が、瞬間、

 炎なのに、

 これは、EG波でつくられた炎。

 間違いない、コイツはEG使い。


 燃える炎に包まれた男、だが熱がりもせずルネを指差す。


 「おのれかぁコゥラァァア!」


 炎をまとった男が、ルネを指差している。

 その異常な光景に、ルネは、、、?

 ちょーご満悦。


 「良き良き♡」


 炎を纏った男はバンから飛び降りると、わざとゆっくりルネに向かって歩き出す。

 その男の後方で、残りの二人も油断なくバンから出てくるのが見えた。

 ルネ、小鼻がふくらむ。


 「やってくれたなコラァ! 燃やすぞコラァ!」


 恫喝どうかつの言葉を発しながら、男が近づく。

 ルネは意にかいさず、ってか楽しそうに左腕を伸ばした。


 「なんやコラ! おらぁEG使いやぞ! が通用すると思っとんのか!」


 男が言うとは、ルネが構えた拳銃の事を言っている。

 何故なぜ男は拳銃を向けられているってのに、こんなにも余裕があって、しかも自信満々なのか?

 それは、EG使いの能力に関係する。


 EG使いは能力を発動させるとき、まとう波動が強力な磁場を発生させる。

 高等な使い手ほど、その磁場は比例して強力になる。

 それは、放たれた弾道の軌道すら変えるほどに強力。

 つまりEG使いには、拳銃の弾が当たらない。

 というのが、“常識”になっている。


 このEG使いが自信満々なのは、自分も拳銃の弾丸の軌道を変えられるほどの使い手だと自負しているからに違いない。


 こんなヤツらがゴロゴロ居るので、警察がいまひとつEG使いたちに積極的に手を出せない理由の一つであり、また大きな理由でもだった。


 それを知らない訳ではないのに、構わずルネは男に照準を合わせていた。

 微笑えみすら浮かべるゴスロリに、男は逆にあきれた。


 「おまえ、マジで燃やすぞコラ、、、」


 当然、男は歩みを止めない。

 近づく二人。

 至近距離。


 「えぇ根性しとんのか、アホなんかどっちや?」


 止まった。


 ルネが伸ばした左腕の、1メートル先に男が立っていた。

 この距離になっても男は、ルネのことに気付かなかった。

 左眼だけが、赤く染まる。

 人を意味なく、めるような赤い眼。





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