目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

蝶舞山揺 弐 その6

 目の前の男より、後方でバンから降りた男の方が何かに気付いたようだ。

 赤い青白い炎の男に叫んだ。


 「ヤバい! 逃げろ!」


 余裕を見せたかったのか、仲間の声にも男はちょっとイキって首だけで振り返る。


 「あぁ? 何で?」


 パンパン!


 2回。

 意外と軽い音がした。


 「ああああああああっっっ?!」


 イキった男は、両の足の甲を撃ち抜かれていた。

 一瞬で全身の力が抜けて、その場に崩れ落ちる。

 痛みは、少し遅れてやってきた。


 「あああぁっぁあ??? 撃たれた? オレ撃たれた?!」


 目から、涙が大量に出ていた。

 炎も、とっくに消えていた。


 「何で? 何で? 何でなん?!」

 男の質問に答えたのは、後方の男だった。


 「アホゥ! 二丁拳銃デュアルウィールドのゴスロリ言うたら、“速水颯太”と“モノアイ”をヤったまゆらの仲間で、“責眼せきがんのルネ”しかおらんやろ!」

 「え? そうなん、、、」


 言われ、崩れ落ちた頭を必死に上げて、下からゴスロリを見上げた。

 涙を流す眼に映ったのは、、、

 隻眼せきがん赤眼せきがん責眼せきがんのルネ。

 結界内で彼女を知らないEG使いは、バカかだ。


 汚物を見る眼で、美しい顔が自分を見下みおろしていた。

 まさに意味なく、他人ひとめ立てるような眼つき。

 それに喜びさえ感じてる、変質的な眼。

 赤い、、、左眼。


 男の目に、ルネの小鼻が膨らんでいるのが映った。

 あからさまに興奮している。


 視線が自分から外れ、後方の仲間へと変わっていた。

 男はルネが興奮している理由が分かった。

 丁度、引き金を引くところだった。


 頭上で火薬の破裂音。

 飛び出る薬莢やっきょう

 さっきまでイキっていた男の耳に、仲間の悲鳴が聞こえた。

 後方の男が、右ももを撃たれていた。


 「なんで、、、オレらEG使いやのに、当たんのん?」


 涙を流しながら、素直に口から出ていた。

 その口に、ルネの黒いブーツの先が襲い掛かる。

 勢いでそのままコンクリートに後頭部を打ち付け、意識がぶっ飛んだ。

 一瞥いちべつも与えず、今度はルネの方から黒いバンへ歩き出す。




この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?