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蝶舞山揺 参 その5

 天王寺駅から伸びた線路に沿うように、なかなかの高層マンションが建っている。

 もちろん内側、結界内だ。


 そこは今、丸々一棟がEG使いの住処すみかになっている。

 天王寺駅周辺を縄張りにする悪名高きEG使い、サイラーだ。


 マンションの上階層に行くほどチームの上役が陣取り、下っ端は下層でせっせと働き、上からの命令を待つ毎日だった。


 まるで日本企業。


 どこの世界でも、いや、こんな世界でも文句も言わずにしっかり動いたものが出世していく。

 上に気に入られたものが、程よく出世していく。

 それが社会だと脳に刷り込まれ、一つ上の階層で暮らすことに憧れる。


 ピラミッドの出来上がり。


 これはサイラーではなく、ナンバーツーの三織優希みおりゆうきが考えた。

 言っちゃあ何だが、サイラーにこんな事は考えられない。


 こわす、つぶす、踏みにじる。

 それがサイラーのモットー。

 そんなサイラーとは一味違うのが、三織優希。


 彼は能力者ではない。

 ごく普通の人間ではあるがサイラーに気に入られ、ナンバーツーのポジションまで伸し上がった。

 こういう紹介をすると何だかかしこそうに思えたりするが、そんな事は無い(笑

 要はサイラーが喜びそうなアイデアを次々と出していき、ゴマをっていただけの話し。


 だが、バカでは無い。

 言葉たくみにサイラーを納得させて、チームを大きくして行ったのは確かに三織だった。


 これを深読みすれば、サイラー動かしていた。

 、、、と言う事になる。


 で、手に入れたマンションを使って集まったヤツ等に上下関係を目に見えるようにしてやれば、バカ共はへーこら頑張るだろうと、、、。


 お察しの通り、そんな事は無い。

 確かに多数はそうなったかも知れないが、少数派は必ず居る。

 最下層でただ、ただ愚痴グチを延々言う奴は必ず居る。

 どこの世界にも居る。


 その最下層と言うべきところに、は居た。

 錦戸良にしきどりょう


 目が合うと誰にでも笑いかけるが、それが卑屈ひくつすぎて引く。

 気持ちが悪い。

 笑顔を素直に受け取れない。

 絶対に心では反対の事を思ってると、勘繰かんぐらせる。


 そんな、卑屈な笑い。


 そもそも、そんな錦戸が何でここに居るのかが分からない。

 だってサイラーのチームだ。

 どこのEG使いのチームより攻撃的で、凶暴な戦闘集団のかたまりだ。


 そこに、錦戸、、、。

 自分も強くなりたかったのか?




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