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稚知謀大 壱 その3

 嘘ではない。

 自分でも解ってる。

 本当の事を聞いてもこう言ってしまう関西人の口癖が、佳穂の口から出ていた。


 「今アンタは、結界内にケンカを売りに来た女として見られてる。あんな動画上げたからな。えぇ遊び相手や」


 佳穂は、背筋が寒くなるのを感じた。

 季節のせいではない。


 「遊び、、、相手って、、、」

 「教えといたるわ」


 ――しゃーから、何でエラそうなん?

 ツッコミは止めない。


 「ショボい使い手ほど自分の能力使いたがんねん。使いたいねんけど、強いヤツとはやりたない。確実に自分より弱いヤツを常に探しとんねん」


 受話器の向こうで、イヤな笑い顔をしているのが、何だか想像出来てしまった。


 「確実に自分より弱いヤツ。今で言うたら、佳穂ちゃん、アンタの事やな」

 「何それ」


 何でそうなるのよという気持ちが、口調を強くさせていた。


 「オレに怒ったってしゃーない」

 「そやねんけど、、、あたしEG使いちゃうで」

 「そんなん関係無いねん。ショボいEG使いにしたら、子供が初めてオモチャを使いたくなる心境やからな」

 「キモ」


 佳穂の顔が、クシャっとなる。


 「EGも使えんシロートの女が、しかも結界内の悪口言う女やから、殺されても誰からも文句は出んやろぅと単純に考えるわな」

 「そう取るか、、、」

 「ショボい使い手には格好の餌食えじきやな。ちゃうか?」


 言われれば、全くもってその通りだと思った。

 子供が初めてオモチャを使いたくなる心境、、、。

 手に取るように解る。

 低能な奴らが考えそうなことだ。


 「ホンマやな。あたし、ヤバいな」

 「分かってくれた? メモっとけよ」

 「、、、うん」


 佳穂は、自分の置かれた立場が何となく解った。

 結界の中に入った自分の末路を、簡単に想像できてしまった。

 次の言葉が出ない。

 無言でも、神妙になった佳穂の雰囲気は伝わるのだろう。

 ゴキゲンだった声も、妙に優しくなっていた。


 「大丈夫か?」


 ――え? 心配してくれんの?


 そこにちょっと驚いた。

 EG使いに、心配されるなんて、、、。




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