目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

稚知謀大 壱 その4

 少しの沈黙。

 再び、佳穂が先に口を開く。


 「あ、でも、、、」

 「何や?」

 「このスマホ、ヤバかったらどうしたらえぇん? 使えんようなったら、もう誰とも繋がれへんやん?」


 ごもっともな質問だ。


 「EG使いはな、EGを使う時、身体の周りに自分独特の電磁波を纏うねん。防御なるし、攻撃の準備にもなってんねん」

 「そんなん聞いてないねん、、、」


 構わず話しを続ける。


 「それをな、自分のスマホにも纏わすねん」

 「あぁ~~、、、」


 そういう事かと、先がちょっと読めた。


 「そしたら浮遊するEGとか、他の使い手からのちょっかいを防げんねん。みんなやっとるわ」

 「へ~、そんなんみんなしてんねんや」

 「簡単な事や。そやねんけど、自分で持ってな出来ひんねん。しゃーからそのスマホはアカン。話し終わったらスグ電源落として大阪駅戻って」

 「え~~!? 戻るん?」


 あからさまに嫌な声を上げた。

 さすがに『メンドクサ』ってな言葉は口にしなかった。


 「そや。一回戻って。大阪駅に荷受け所があるから、そこのいなちゃんってやつに声掛け。安全に話せるケータイ渡すわ。あ、稲田いなだね」


 ――何やろ、この段取りの良さは、、、?


 疑問にも思うが、佳穂は声の言う事を聞く事にした。

 他にたよる人なんて知らないし。

 そもそも頼って良いか解らないが、そこまで慎重しんちょうにもなれない。


 「何て? その稲田さんに、何て言うん?」

 「俺から、、、“モノアイ”に聞いてきたって言い」

 「ものあい?」


 そうや、と答える声が自分の名を出した時、少し自慢気になっているのに佳穂は気付かない。

 モノアイは続ける。


 「そこでケータイ渡すわ。取り敢えず急いで。マジでスマホはもうヤバいわ。時間も時間やし」


 大きく息を吐き、自分を納得させる佳穂。


 「なんやよう解らんけど、手伝ってくれるんやね」

 「そや。しゃーから、はよう」

 「解った」


 佳穂はその場できびすを返した。

 妹を助ける確率が上がるなら、ちょっとぐらいだまされても良い覚悟は出来ている。




この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?