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ヒャルマーとの戦い

「ビュル、手を出すなよ」


 思念でビュルに伝え、ヒャルマーに襲い掛かる。

 背も小さく、武器を持たないドワーフに対し、リーチで上回る俺の攻撃は簡単に当たる。

 数度、顔を殴り、腹を蹴り、目を突き、足を払うも、あまりダメージはない。

 それどころか、よろめいてすらいない。

 やはりドワーフは打たれ強い。

 しかし、俺を捕まえようとする、その動きは遅い。緩慢だ。


 ヒャルマーは殴られ、蹴られながらも口から礫を吐いた。

 石の礫は小さいが、速度も速く威力も高い。

 小屋の柱部分すらも貫いて穴をあけていた。


 お互いに無言で殴り合う。

 いや、俺が一方的に殴り、たまに放出される礫を躱すといった事がしばらく続いた。


 やつの肉体はどうなっているんだ。

 俺は拳を解いて指を伸ばす。

 俺の手を掴もうと伸ばしてきた手を払いのけ、肩口に指をそろえた突きを差し込む。

 分厚いゴムのような手ごたえだったが、それを突破した。

 泥と砂が、その傷口からあふれた。


「ほう、それがお前の体の正体か。泥人形」

 俺は挑発するように、わずかに肩をすくめて見下すように言い放った。

「骸骨ごときが…」

 先ほどとは違う、濁った声。

 ヒャルマーは何かを投げるようなそぶりをすると、その手からパチンコ玉のような金属球が数個放たれた。

 ショットガンのようだ。俺のあばらと骨盤の一部がはじけ飛んだ。


「ケイ様!」

「手を出すな。ヤツの力はなんだ。わかるか」

 右腕から僅かに伸びた木の枝を押し込める。

 思念でビュルと会話しながらも、戦闘は続く。

 しかし、あの「ショットガン」のような技は、連発できないようで、一定の貯めの後に放つのがわかると、躱すのは容易だった。


「土と油を使った錬金術と土魔法を合わせた物です。あの肉体も同様です」

 そうか、中身があるのかわからんが、それで守っているのかもしれんな。


 俺は手刀や突きを多用し、蹴りもつま先の先端を鋭く刺さるような角度で攻撃を続ける。

 段々と崩壊していくヒャルマーは、茶色と黒の、ゾンビと変わらない色になっていく。

 何か、怒声や文句を言っているが、俺は一切答えずに攻撃を繰り返す。


 元々のリーチの差もあるが、もはや一方的だった。

 踏み出したヒャルマーの太もも目掛け、つま先をねじ込むように蹴り上げると、足がちぎれた。


 転倒したドワーフに馬乗りになり、その首を徹底的に突き、最後は引きちぎった。

 髪を掴み、もげた頭を持ち上げる。

「悲願も成らず、こんな骸骨ごときにやられるのか」

 俺自身は、コイツにたいして怒りを感じていない。

 ただ、少し興味があった。

 かつて、俺を倒した「ドワーフ」という種族と、このヒャルマーの使う技に。


「お前はなんだ?ゾンビではないのか?」

 俺が生首に問うと、生首は眉間に皺を寄せた。

「黙れ、骸骨。ワシはかつての王族…」

 俺は生首の髪を掴んだまま、倒れている胴体部分に叩きつける。

「自分の頭で砕かれる肉体の感覚はあるのか?」

 素直に感じた疑問を生首に問いかけるも、生首から出てくる言葉は罵詈雑言だけであった。

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