「拓海はさ……僕のことどう思ってる?」
翔に言われたこの言葉。
俺は何と答えたらいいのか……
親友として俺がずっと憧れていた翔。いつしか翔のことが気になってきて……この流れでそのまま……自分の気持ちを伝えるべきなのか……?
拓海が迷っていると翔が話す。
「僕が……ひなくんのことを好きになった時……引いた?」
「えっ?」
「拓海はいつだって僕の味方でいてくれる。だけど……正直に言ってほしいんだ……本当はどう思ってる……?」
「翔……」
もしかして同性愛のことを気にしているのか? そうだとしたら……
「翔、そんなことで引くわけないだろう? まぁ最初は驚いたけどさ。今時好きになるのに……男も女も関係ないって言うし」
「拓海……」
「前に彼女が途切れなかった頃に比べたら……日向くん一筋だった翔は、それだけ真剣だったんだなって思ったよ。自分の気持ちを伝えることって勇気がいると思う。だから、翔はすごいよ」
拓海……お前はいつもそう。いつだって僕の一番近くにいてくれた。いつだって僕を励ましてくれた。何よりも……拓海がいて心強かった。どんな僕でも……受けとめてくれる……
「翔? 気にしていたのか? その……同性愛っていうの……」
「実は……前に葉月に言われたんだ。ひなくんや凪くん達のことを『変わった人たち』とか『おかしい』とか……」
「え……そうだったのか」
「もちろん彼女には言った。そんな言い方は良くないって……好きになるのに……男も女も関係ないって……」
「翔……」
「気づいたらさ、拓海のこと思い浮かべてて……あの時、ヒロさん達に今日一緒に連れて行ってもらえるように……頼んだんだ」
翔が……葉月にそんなことを言われていたなんて……なのに自分の考えを葉月にきちんと伝えたんだ……
拓海は翔を抱き寄せた。
「翔……辛かったんだな。そんなこと言われたら……俺なら傷ついてしまって何も言えない。あの葉月ちゃんにそう言える翔は……やっぱりすごいよ……」
「拓海……僕はこれまで女子に何言われても割と平気だったのに……葉月に言われたことは耐えられなかった……」
「分かるよ……頑張ったな……」
拓海が翔の背中をポンポンとしている。
ふと翔が気づいたように言う。
「拓海……お前も……同性を……?」
「……今はっきりとわかったよ。俺も彼女がいたことはあるけど……同性も好きになることがあるんだって……」
「え……」
「まだ分からないのか? 俺は……」
その時、翔が拓海の背中に手を回した。
「この僕が……気づかないわけないだろう? 拓海……バーでお前が隣にいなかった時、寂しかったんだから」
「おい、俺にも言わせろよ。お前が日向くんに夢中になっていた時から、ずっと……ずっと……モヤモヤしてたんだよ……だけど、親友だったらずっと一緒にいれるんじゃないかって思って……俺だって、お前への気持ちを認めるのに……躊躇してたんだ……葉月ちゃんと似たようなものだな」
「違う……拓海は拓海だって。僕の方こそ……一番近くにいたお前のこと……そのままにしてたんだから。拓海のこと、大事に思ってたのに」
「翔……」
「拓海……」
抱き合いながらお互いを見つめる2人。
「親友じゃなくなってしまうね……僕達」
「お前が望んだことだろう? 翔……」
「拓海だってそうじゃないか……」
「まぁ……そうだな」
「たっくんって呼ぼうか?」
「えっ……いや、お前ほど切り替え早くないし……いきなりそういうのも……」
「じゃあどういうのがいい?」
「どうって……」
翔の顔が近い……そのまま俺達は自然と唇を重ねた。
翔は慣れているのかもしれないが……俺にとってここまで温かくて、だけど情熱的なキスは初めてだった。ずっと一緒にいた翔とこんなことになるなんて……だけどもっと……こうしていたい……
※※※
その日の晩、拓海は翔の家で過ごした。
これまでの思い出話もしつつ、2人で様々なことを喋った。
「あの時の翔は……正直酷かったな」
「え、そんなこと思ってたのか?」
「ま、仕方ないといえば仕方ないか。どんな翔でも俺は味方になるって言ってたし」
「たっくん……優しいね」
「その呼び方、慣れないから無理」
「ハハ……そっか。じゃあ拓海」
「ん?」
「僕の気持ち……受け取ってくれる?」
「んっ……」
翔に唇を塞がれる拓海。そうだ……翔は……好きになったら一直線の人だった……
「翔……日向くんにもこんなことしてた?」と拓海が言う。
「……妬いてるの? フフ……ひなくんとは……そこまでは」
「そうか……」
「今ホッとしたね、たっくん」
「だからその呼び方やめろって……」
「そうか、拓海……」
そう言われながら翔に何度も口付けされてしまう。そして、初めてここまでのことをされた拓海は頬を赤らめ、それに応えるように身を委ねた。
「拓海ってさぁ……前もそうだったけど、格好いいこと言うよね」
「そうか? 翔の方が格好いいと思うけど」
「いや、拓海の方が……」
「翔だって……」
「ハハ……」
翔が本当に嬉しそうで、拓海も満たされた気持ちになるのだった。
日付が変わって日曜日。
昨晩、あんなことやこんなことがあったので……2人が起きたのは昼前であった。
「おはよ、たくみん」
「……呼び方変わってるし」
「いいね、あだ名のバリエーション多くて」
「翔が勝手に言ってるだけだし」
「たーくん、お腹空いた?」
「いくつ呼び方あるんだよ……外では恥ずかしいから言わないでくれよ?」
「……じゃあ家ではいいんだ」
「え……」
「フフ……拓海……期待してたね?」
「違うって……もう……」