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第62話 クリスマス、そしてお正月もやって来る

 翔と拓海の場合……

 2人とも就活でお疲れモードであったため、クリスマスは翔の家で過ごしていた。

 家に来る前に2人でデザート店に寄って、4号サイズのクリスマスケーキを買ったが、その時の翔のケーキを見る目がキラキラしていたのが印象的であった。

「どれも美味しそう……迷っちゃうね」

 そう言って笑うだけで、拓海はドキッとしてしまう。


 店から出た時に女子大生2人に話しかけられたが、

「家でこのケーキ、2人で食べるんだ。悪いね」と言ってくれたのも嬉しかった。

 元からモテる翔は一時期、女子への対応に困って相手のペースに流されそうになっていたが、今では堂々としており拓海を大事にしてくれる。


 そんな翔と比べて拓海は両想いとなれたことは嬉しかったものの、未だに翔の恋人モードの振る舞いについていけないこともある。親友の期間が長かったからだろうか。

 だけど、それで2人のバランスが取れているのかもしれない。翔が飽きずにいられるのは、拓海がこれまでと同じようなノリで喋ってくれることも大きい。


「おお……美味そうなケーキだな。こんなの自分では買わないよ」と拓海が言う。

「僕も1人暮らししてからは買ってなかったな」

「え? 彼女と一緒に買って……という事はなかったのか?」

「女の子はイルミネーションやレストランの方が好きだからね、家でまったりクリスマスを過ごせるのは拓海だけだから」

「翔……」

「毎回外行くのも疲れるからね、今年は拓海と過ごせて嬉しいな」

「俺も……何かホッとできるよ」


 ケーキを食べながら就活の話やゲームの話で盛り上がる2人。

「今日ぐらいはいいよな、拓海、ゲームしよ?」

「おう」

「……やっぱり拓海が先」

「え?」

「……クリスマスだから」

「クリスマスじゃなくたって……俺達いつも同じことをしているじゃないか、翔……」


 翔に押し倒されると拓海は抵抗できない、というより……その先を期待してしまう。やっぱり好きだな……と思いながら翔のキスを受け入れる拓海であった。



※※※



 怜と日向も自宅でクリスマスを過ごしていた。

「ひな、これ1月からのランチメニュー」

 クリスマスチキンも少し食べていたが、さらにお洒落なプレートを出されて日向は喜んでいる。

「これが1月からのランチ……!」

「メインは他にもあるが、今日はこれだ。惣菜は日替わりにすると思う」


 数種類の惣菜やサラダとメインのポークソテー、そしてスープとパン。

「怜さん、すごい……美味しそう!」

「まずは……最初のお客さんというか、ひなに食べてもらいたくてな」


「一足先にランチメニューの実食、いきます!」

「そう言われると緊張するな」

 日向がポークソテーを一口食べる。

「……このお肉美味しい! カボチャサラダも食べよっと」

「フフ……良かった」

「……怜さんも食べる?」

「え?」

「はい、あーんして」

 日向にそう言われると恥ずかしいが口を開けてしまう。

「うん、美味いな」


 ひなが美味しそうに自分の料理を食べているのを見ると、幸せな気持ちになるな……

 怜さんの料理は、全部美味しくて優しい味がするな……

 そう思いながら、2人で仲良く食事を楽しんでいた。


「美味しかったー! ……はぁ眠い」

 就活もあって疲れている日向はソファに座ってあくびをしている。

「お疲れ様、ひな」

「……」


 スースー


 怜の美味しい料理で満足したのか日向はソファで寝ていた。

「最近の就活生も忙しそうだな……」と怜が言いながら片付けをしている。


 そして、

「……ひな、寝てしまったかな」と言いながら怜が日向の隣に座る。

 寝顔も可愛いと思いながら、だけど起きてほしいような気もして怜は日向の頬にキスをした。

「……ん? 怜さん……」

「あ……悪い、起こしてしまったかな」

 怜の顔が近いので日向の頬がほんのり染まっていく。

「ううん……怜さんと過ごしたいから大丈夫」

 日向がぴょんと怜に抱きついた。



※※※



 お正月は日向と怜、翔と拓海、凪と広樹の6人で初詣に行った。またこの6人で出かけられるのが楽しみ……と思いながら日向は怜と待ち合わせ場所へ向かう。

 新年の挨拶をしつつ、6人でワイワイと喋りながら向かう。

「あのさぁ、初夢に怜さん出てきたんだけど」と早速日向が怜の話をしている。

「すごいや日向くん……夢でも怜さんに会うなんて」と凪。

「怜、愛されてるな」と広樹も言う。


「……俺も初夢にひなが出てきたから」と怜が言うので、どれだけお互い好きなんだと思う広樹たちである。

「父さん、新年早々惚気ているし」と翔。

「相変わらず熱いな、あの2人は」と拓海。



 そして神社でお参りをする。

 就活が……うまくいきますように!

 と、日向、凪、翔、拓海は必死で手を合わせていた。


 健康第一……健康第一……

 と、怜と広樹も手を合わせる。


 そういえば、ランチ営業のことをまだ皆に伝えていなかったので怜が話した。

「ランチは1月中旬から始まるから……もし時間があれば是非」と怜がチラシを渡す。

「父さん、昼も働くの?」と翔が気にしている。

「そうだな、夜はあまり出ないと思う。あと2人のバーテンダーが慣れているからな。彼らが中心になるかと」

「そうか、身体のこともあるからいいんじゃない?」

「色々あったからな。だが翔、俺はまだまだ元気だぞ」


「それなら良かったよ。で、ひなくんとの時間を増やすってわけか」

「……分かっていたか」

「……分かるよ。あれだけ仲良い所を見せられるとね。うちも仲良いけど」

 そう言って翔が拓海の肩を抱き寄せる。

「おっと翔……いきなりだったからびっくりした」と拓海。


 広樹と凪もランチメニューに興味津々である。

「すごいや、こんなにお洒落でしかも身体に良さそう……ヒロさんにもぴったりだ」と凪。

「これは人気出そうだな……行列が出来るんじゃないか?」と広樹も言う。

「どうかな、新規の客が入ると良いのだが」

「怜さんなら大丈夫だよ、これすっごく美味しいし」と日向。

「先に食べたの? いいなぁ」と凪が羨ましそうである。

「日にちが合えば一緒に行こうか、凪」

「うん! ヒロさんと行きたい」


 皆の予定を合わせるのは難しそうではあるが、ランチも6人揃ったら楽しいんだろうな……と思う日向であった。


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