翔と拓海の場合……
2人とも就活でお疲れモードであったため、クリスマスは翔の家で過ごしていた。
家に来る前に2人でデザート店に寄って、4号サイズのクリスマスケーキを買ったが、その時の翔のケーキを見る目がキラキラしていたのが印象的であった。
「どれも美味しそう……迷っちゃうね」
そう言って笑うだけで、拓海はドキッとしてしまう。
店から出た時に女子大生2人に話しかけられたが、
「家でこのケーキ、2人で食べるんだ。悪いね」と言ってくれたのも嬉しかった。
元からモテる翔は一時期、女子への対応に困って相手のペースに流されそうになっていたが、今では堂々としており拓海を大事にしてくれる。
そんな翔と比べて拓海は両想いとなれたことは嬉しかったものの、未だに翔の恋人モードの振る舞いについていけないこともある。親友の期間が長かったからだろうか。
だけど、それで2人のバランスが取れているのかもしれない。翔が飽きずにいられるのは、拓海がこれまでと同じようなノリで喋ってくれることも大きい。
「おお……美味そうなケーキだな。こんなの自分では買わないよ」と拓海が言う。
「僕も1人暮らししてからは買ってなかったな」
「え? 彼女と一緒に買って……という事はなかったのか?」
「女の子はイルミネーションやレストランの方が好きだからね、家でまったりクリスマスを過ごせるのは拓海だけだから」
「翔……」
「毎回外行くのも疲れるからね、今年は拓海と過ごせて嬉しいな」
「俺も……何かホッとできるよ」
ケーキを食べながら就活の話やゲームの話で盛り上がる2人。
「今日ぐらいはいいよな、拓海、ゲームしよ?」
「おう」
「……やっぱり拓海が先」
「え?」
「……クリスマスだから」
「クリスマスじゃなくたって……俺達いつも同じことをしているじゃないか、翔……」
翔に押し倒されると拓海は抵抗できない、というより……その先を期待してしまう。やっぱり好きだな……と思いながら翔のキスを受け入れる拓海であった。
※※※
怜と日向も自宅でクリスマスを過ごしていた。
「ひな、これ1月からのランチメニュー」
クリスマスチキンも少し食べていたが、さらにお洒落なプレートを出されて日向は喜んでいる。
「これが1月からのランチ……!」
「メインは他にもあるが、今日はこれだ。惣菜は日替わりにすると思う」
数種類の惣菜やサラダとメインのポークソテー、そしてスープとパン。
「怜さん、すごい……美味しそう!」
「まずは……最初のお客さんというか、ひなに食べてもらいたくてな」
「一足先にランチメニューの実食、いきます!」
「そう言われると緊張するな」
日向がポークソテーを一口食べる。
「……このお肉美味しい! カボチャサラダも食べよっと」
「フフ……良かった」
「……怜さんも食べる?」
「え?」
「はい、あーんして」
日向にそう言われると恥ずかしいが口を開けてしまう。
「うん、美味いな」
ひなが美味しそうに自分の料理を食べているのを見ると、幸せな気持ちになるな……
怜さんの料理は、全部美味しくて優しい味がするな……
そう思いながら、2人で仲良く食事を楽しんでいた。
「美味しかったー! ……はぁ眠い」
就活もあって疲れている日向はソファに座ってあくびをしている。
「お疲れ様、ひな」
「……」
スースー
怜の美味しい料理で満足したのか日向はソファで寝ていた。
「最近の就活生も忙しそうだな……」と怜が言いながら片付けをしている。
そして、
「……ひな、寝てしまったかな」と言いながら怜が日向の隣に座る。
寝顔も可愛いと思いながら、だけど起きてほしいような気もして怜は日向の頬にキスをした。
「……ん? 怜さん……」
「あ……悪い、起こしてしまったかな」
怜の顔が近いので日向の頬がほんのり染まっていく。
「ううん……怜さんと過ごしたいから大丈夫」
日向がぴょんと怜に抱きついた。
※※※
お正月は日向と怜、翔と拓海、凪と広樹の6人で初詣に行った。またこの6人で出かけられるのが楽しみ……と思いながら日向は怜と待ち合わせ場所へ向かう。
新年の挨拶をしつつ、6人でワイワイと喋りながら向かう。
「あのさぁ、初夢に怜さん出てきたんだけど」と早速日向が怜の話をしている。
「すごいや日向くん……夢でも怜さんに会うなんて」と凪。
「怜、愛されてるな」と広樹も言う。
「……俺も初夢にひなが出てきたから」と怜が言うので、どれだけお互い好きなんだと思う広樹たちである。
「父さん、新年早々惚気ているし」と翔。
「相変わらず熱いな、あの2人は」と拓海。
そして神社でお参りをする。
就活が……うまくいきますように!
と、日向、凪、翔、拓海は必死で手を合わせていた。
健康第一……健康第一……
と、怜と広樹も手を合わせる。
そういえば、ランチ営業のことをまだ皆に伝えていなかったので怜が話した。
「ランチは1月中旬から始まるから……もし時間があれば是非」と怜がチラシを渡す。
「父さん、昼も働くの?」と翔が気にしている。
「そうだな、夜はあまり出ないと思う。あと2人のバーテンダーが慣れているからな。彼らが中心になるかと」
「そうか、身体のこともあるからいいんじゃない?」
「色々あったからな。だが翔、俺はまだまだ元気だぞ」
「それなら良かったよ。で、ひなくんとの時間を増やすってわけか」
「……分かっていたか」
「……分かるよ。あれだけ仲良い所を見せられるとね。うちも仲良いけど」
そう言って翔が拓海の肩を抱き寄せる。
「おっと翔……いきなりだったからびっくりした」と拓海。
広樹と凪もランチメニューに興味津々である。
「すごいや、こんなにお洒落でしかも身体に良さそう……ヒロさんにもぴったりだ」と凪。
「これは人気出そうだな……行列が出来るんじゃないか?」と広樹も言う。
「どうかな、新規の客が入ると良いのだが」
「怜さんなら大丈夫だよ、これすっごく美味しいし」と日向。
「先に食べたの? いいなぁ」と凪が羨ましそうである。
「日にちが合えば一緒に行こうか、凪」
「うん! ヒロさんと行きたい」
皆の予定を合わせるのは難しそうではあるが、ランチも6人揃ったら楽しいんだろうな……と思う日向であった。