「
陣生は、娘の誤解を解くために近寄っていく。
だが、彼女は後退りして、父と距離を置こうとする。
「い、嫌ぁぁー!式までパパ達のプレイに巻き込まないでよ!ママは泡吹いてるし、どんだけハッスルすれば気が済むのよ?パパの性欲超獣!絶倫魔獣ゥゥゥー!」
「だから、
「パパが授業参観に来たら、〝授業散寒〟になっちゃうじゃないのよ!」
「もう、何を言ってるか意味分かんねーよ。お前、上手いこと言おうと思って滑ってる芸人みたいになってるぞ!」
「言わないで!これはセンス無いくせにギャグ小説書き始めた
もはや、パニック状態となった式には、陣生とまともに話をする事は出来なかった。
ちなみに、2人が話してるこの間も、
大丈夫か?詩乃夜?その体勢のままで気絶してる方が無理ないか?
[うるせーガキね!陣ちゃんワチキに任せて!]
その時、陣生の脳内にジュリアナの声が聞こえる。
「えっ?ジュリアナちゃん、何する気?」
[ワチキの
「おおー!やっと、ジュリアナちゃんが
陣生は、彼女の言葉を聞いて拍手する。
「パパ、何をブツブツ言ってるの?ジュリアナって誰よ?ひょっとして隠し子なの?」
ジュリアナの声は、陣生の脳内にしか聞こえないので、式がこのように誤解してしまうのも無理はなかった。
(このまま式が騒いでると
そう考えた陣生は、彼女に任せる事にしたのである。
「よーし、頼むよジュリアナちゃん!式、少しだけおネンネしなよ♡」
[OK!陣ちゃん!くらえクソガキ!
「え?ち、ちょっと待って!し、昇龍拳!?か、体が……」
ジュリアナの声が聞こえると同時に、
「
誰に向けて言ったのかは分からないが、式はプレイヤーが勝利した後の格ゲーみたいな台詞を言って、何故かM字開脚ポーズで気絶してしまった!
「式ー!大丈夫か?別の意味でおネンネさせちゃったじゃないかー!ちょっと、ジュリアナちゃん!またまた何してくれてんだよー!『魔力で眠らせてあげる』って言って、何で
[魔法使うなんて一言も言ってないよ。仮に、陣ちゃんの体じゃ精気が足りてても魔法使えないよ。
「紛らわしい言い方すんなよ!オッサンだって魔法使ったっていいじゃんか!あと全然カッコよくないからね?格ゲーじゃないんだからポンポン人を殴っちゃダメだぁぁ!!ジュリアナちゃん、さっきから
結局は、陣生の期待してた〝魔法少女らしさ〟とは程遠い〝
こんな脳筋プレイな魔法少女が、いまだかつていただろうか?
世には数多の魔法少女がいるが、多分ジュリアナだけだと思う。……というか、他にいて欲しくないのである!
「うるさいなぁ〜。眠れないじゃない」
その時、テンプレ展開のごとく次女の燕が眠そうな目を擦りながら台所に現れた。
「え?何でママとお姉ちゃんが気絶してるの?しかもママは下着姿だし!パパ、一体何があったのよー?」
燕は、気絶中の姉と母を見て騒ぎ立てる。
[また、うるせえチビなクソガキが一匹現れたわね。陣ちゃん、今度はワチキの〝竜巻旋風脚〟で黙らせてやっていい?]
彼女の言葉と同時に、陣生の両足が自分の意思とは関係なく動きかける。
「ダメに決まってるだろー!もう頼むから俺の家族を殴らないでよ!これ以上殴るなら、俺の精気を分けてあげないからね!もう俺、食事したり眠ったりしないぞ!そうすりゃ、俺の精気も無くなってくるから
[う!陣ちゃんの精気をもらえないのは困るわ!分かったわよ。じゃあ、どうすんの?]
「パパ、さっきから誰と喋ってるの?」
「
「は?パパ何を言ってんの?」
父の言う事が理解できない燕が、首を傾げて問いかける。
「逃げるんだよォォォーーーーーッ」
[ジョ〇フ・ジョー〇ターかよー!]
ジュリアナのツッコミを無視した陣生は、自室に駆け込み0.1ミリ秒という宇宙刑事も顔負けの速さでスーツに着替えると、玄関に向かって走り出す。
「燕ちゃん!パパ今日はいつもより早く会社に行かなきゃいけないから、ママと式をよろしくな!」
「えー!パパ、深夜手当はいくら払ってくれるのー?」
燕の声に答えることなく陣生は家を飛び出した。しかし、行く当てもお金も無いので、結局最寄り駅近くのネカフェで一夜を明かす事になった。
[へー。現代にはこんな便利な所があるんだね。ワチキが封印された1996年には、ネカフェなんか無かったかな?]
「初めてインターネットカフェが出来たのは1995年6月みたいだから、その頃は一般的じゃなかったかもね」
陣生は、個室のパソコンで検索した内容をジュリアナに説明する。
〝ドンドン!〟
「おい!さっきからうるせーぞ!」
隣室から壁を叩く音とクレームの声が聞こえた。
「す、すみませーん!」
(あ!よく考えたら、ジュリアナちゃんとは声を出さなくても、心の中で会話出来るんじゃないのか?……ジュリアナちゃん!聞こえる?)
今頃になってこんな簡単な事に気がついた陣生は、心の声でジュリアナに問いかける。
しかし、彼女からの返事は無い。
(ジュリアナちゃんてば!聞こえないの?)
[あー?もしかして、心の声でワチキに話しかけようとしてる?言っとくけど、
(えー?そうなの……っていうか、本当は聞こえてんじゃないのか?)
パソコンの画面を確認すると時間は夜中の3時だった。
「もう遅いから寝よ。はああ……明日家に帰るの気が重いなぁ」
[気にしても仕方ないじゃん!大丈夫!何とかなるって。ワチキも眠くなったから寝るね。おやすみなさ〜い]
(誰のせいだと思ってんだよ!ったく!)
成り行き上ジュリアナを自分の体内に居座らせた陣生だったが、それを許可した理由は2つあった。
1つは、彼女を野放しにすると、全人類が半年くらい足腰が立たなくなるほど精気を吸われてしまうので、人々を守るという正義感のため。
もう1つは、魔法少女と共同生活することによって、年甲斐もなく流行りの『ウィ〇チウォッチ』 みたいなラブコメや、魔法による非日常なメルヘン的展開を秘かに期待してたのである!
会社と家庭で蔑ろにされてるアラフォー社畜オジサンだって、現実逃避したくなるし、
しかし、現実は残酷だった。『ウィ〇チウォッチ』的な展開は1ミリも起きなかったし、今後もフラグすら立ちそうにない。
ましてや、この作品が『ウィ〇チウォッチ』のようにYOASOBIが主題歌を担当してくれる事など天地が逆さまになってもあり得ない事であったりしちゃったりするような気がするのだ!……あれ?今の言い方だと、もしかしてワンチャンくらいあるのかな?
……そして、夜は明けて。陣生は通勤電車で会社に向かっていた。
毎朝の事だか、乗車率120%の満員電車であり、陣生は立ったままスマホを片手に『マジカル☆クミちゃん』のアニメを観ていた。
(はあー。やっぱり、『クミちゃん』は何回観ても面白いなぁ。通勤中の唯一のオアシスだよ)
[ふわ~!おはよ陣ちゃん。何?このご都合主義の固まりみたいなアニメは?魔法少女なんて、こんな綺麗な存在じゃないって!このアニメ作った奴は本物の魔法少女見た事無いんじゃないの〜]
(見た事あるわけないだろ!うるさいなぁ。アニメの台詞が聞こえないじゃないか)
声に出すと周りの乗客から不審者扱いされるので、陣生は目覚めたジュリアナへの不満を心の中で呟く。
「キャー!」
その時、陣生の目の前にいる20代半ばくらいの女性の乗客が悲鳴を上げた。
〝ビターン!〟
彼女は、振り向くと同時に陣生にビンタを食らわせた。
「い、痛ぁー!な、何するんですか!」
「この痴漢!いつまで堂々と人のお尻を触ってんのよ!」
「え?」
気がつくと、スマホを持ってない左手が彼女の〝おヒップ〟を鷲掴みにしていたのである!
「うわー!ご、ごめんなさい!これ、ジュリアナちゃんの仕業でしょー!」
陣生は、慌てて手を離すと周りの目を気にする事も忘れて叫んだ。
[アハハ。この女の精気が美味しそうだったから、つい
「見りゃ分かんでしょ!大騒ぎになってるでしょーが!」
「何、逆ギレしてんの!?私はジュリアナって名前じゃないわよ!私の源氏名は〝マリア〟よ!……って、どうして私がキャバ嬢だって知ってんのよ?誰か、この痴漢を捕まえてください!」
マリアという源氏名のキャバ嬢は、大声で喚き出した。
「ち、違うんです!これは貴女の
「キャー!私に〝
マリアは、更に大声を上げる。
「違ーう!あと、魔神は普通歩くもんじゃないでしょーか!?」
痴漢扱いされても、律儀にツッコミを入れる陣生であった。
このまま痴漢で捕まると、陣生は社畜として〝性器不能〟……じゃなくて、〝再起不能〟である!
この調子で書き続けると、この作品もある意味で再起不能になりそうな気がするが、今はそれどころではない!
陣生、絶対絶命の大ピーンチ!待て次話を!