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第102話 11月2日:嶋村 蓮

 バスが到着し、町へと降り立つ蓮。


「……どうしようかな」


 勢いでここまで来てしまったが、ここからどうしていいかわからない。

 でも戸惑っていては時間を無駄にしてしてしまう。


 そこで、前にもやっていたように聞き込みを開始する。

 通る人に、片っ端から結翔の写真を見せて、見たことないかを聞いていく。


 これが以前、氷室から聞いた方法だ。


 氷室は、蓮は子供だから話を聞きやすいと言われたが、10人中、3、4人くらいしか話を聞いてくれない。

 しかも、全く手がかりはなし。

 前回やった時と同じだ。


 もうダメかなと思った時、氷室が、聞く場所も重要だと思い出す。

 そこで、蓮は、テレビで見た場所に行ってみることにした。


 今度は結翔のことではなく、この前テレビで出ていた、事件の場所を聞いたらすぐに教えてくれる。


 向かう途中で何回か人に聞きながら、何とかその場所に辿り着いた。


 確かにテレビで見たのと同じ風景だった。


(ここに結翔がいた。間違いない)


 今でもはっきりと思い出せる。

 テレビに映っていたのは結翔だった。

 見間違いじゃないと、確信できる。


 でも、一瞬映ったあの顔。


 あれは昔から知っている、親友だったころの結翔ではなかった。

 同じ、結翔なのに、不気味というか、まるで別人のような、そんな感覚がする。

 いなくなる前の結翔のまま変わっていない。


 それでも蓮は結翔に会いたかった。


 一番の親友。


 きっと、ああなってしまったのには理由があるんだと思う。

 だから、蓮はそれもなんとかすると考えている。


 一緒なら、どんなことだって乗り越えられると信じていた。

 まずは結翔に会わないと先に進めない。


 テレビでここが映った時に結翔がここにいた。

 ここで聞き込みをすれば、見た人は多いかもしれない。


 そう思い、近所で聞き込みを開始する。

 それでも、やはり、見たことはないと言われてしまう。


 それでも諦めずに聞き込みを続けた。


 すると――。


「ん? ああ、最近、よく見る子か?」


 古家に住む、お爺さんがそう呟くように言った。


「え? どこ? どこで見たの?」

「あの家だよ。事件があった。毎日散歩に行くんだけど、よく、あの辺にいるのを見たぞ」


 蓮は慌てて、あの家へと走って戻る。


「あっ!」


 そこには結翔が立っていた。

 周りを見渡している。


 そんな動作を見て、蓮は咄嗟に隠れてしまう。


 家の壁の陰から見ていると、結翔は周りに誰もいないと思ったのか、家の中へと入って行った。


(結翔……。何してるんだ?)


 蓮は結翔の後を追って、家の中に入ろうと思うが躊躇してしまう。


 せっかく見つけたんだから、早く話したい。

 だが、今の結翔は何か変だ。


 それが蓮を本能的に思い止まらせていた。


(どうしうよう?)


 ここまで来て、やっと結翔を見つけたのに、このまま帰るなんてできない。

 でも、結翔を追って、家の中に入るのは何か怖いと感じる。


 そこで、蓮は思い出した。


(電話だ!)


 持ってきていた携帯電話を出し、氷室へとかける。


 すると数秒で出てくれた。


 正直、出てくれるかも怪しいと思っていたから、ホッとする蓮。


「探偵さん!」

『ああ、蓮か』


 蓮はすぐに切られないように、すぐに本題を伝える。


「見つけたんだ!」

『見つけた?』

「そう! 結翔がいたんだ!」


 蓮がそう言うと、氷室が少し戸惑った声で質問してきた。


『……どこにいるんだ?』

「えっと、南瓶堀って町」

『なんで、いるんだ?』


 驚いたような声を出す氷室。


「テレビで見たんだよ。この前、ニュースやってて、その画面に映ったんだよ、結翔が」

『そうか……。この町にいたのか』

「どうしたらいい?」

『すぐそこから離れろ』

「え? なんで?」

『いいから、言うことを聞け』

「なんでだよ! せっかく見つけたんだぞ!」

『言うことを聞くって約束したよな?』


 氷室の、その言葉に怒りが一気に噴き出す。


「先に約束を破ったのはそっちだろ! なにが結翔を見つけてやるだよ! 嘘つき!」

『……それは悪かった。だから、とにかく、その場から離れろ』

「嫌だね!」

『すぐにそっちに行く。今、どこにいるか教えろ』


 蓮の怒りは余計に膨れ上がっていく。


「俺が先に見つけたのが悔しいんだろ! ぜってー教えねぇ!」

『馬鹿。そんな……』


 蓮は電話を切る。


(こっちが探してくれって言っても探してくれなかったくせに、見つけたら手柄を横取りする気なんだ)


 すぐに氷室から電話がかかってきた。


 蓮は携帯の電源を切る。


(あいつはあてにならない。俺がなんとかしないと)


 さっきまで感じていた恐怖を、怒りが上回る。

 壁の陰から飛び出し、結翔が入って行った家へと入って行く蓮。


 まだ朝だというのに、家の中は薄暗い。

 その不気味さに、怖さが蘇ってくる。


 蓮はそれを吹き飛ばすように大声で叫ぶ。


「結翔! どこだ!? いるんだろ!?」


 わざと足音を大きく歩く。


「結翔! 結翔! 俺だ!」


 すると、暗がりから人影が現れる。


 蓮は驚いて思わず、体を震わせてしまう。


「蓮……くん?」


 現れたのは、間違いなく結翔だった。

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