バスが到着し、町へと降り立つ蓮。
「……どうしようかな」
勢いでここまで来てしまったが、ここからどうしていいかわからない。
でも戸惑っていては時間を無駄にしてしてしまう。
そこで、前にもやっていたように聞き込みを開始する。
通る人に、片っ端から結翔の写真を見せて、見たことないかを聞いていく。
これが以前、氷室から聞いた方法だ。
氷室は、蓮は子供だから話を聞きやすいと言われたが、10人中、3、4人くらいしか話を聞いてくれない。
しかも、全く手がかりはなし。
前回やった時と同じだ。
もうダメかなと思った時、氷室が、聞く場所も重要だと思い出す。
そこで、蓮は、テレビで見た場所に行ってみることにした。
今度は結翔のことではなく、この前テレビで出ていた、事件の場所を聞いたらすぐに教えてくれる。
向かう途中で何回か人に聞きながら、何とかその場所に辿り着いた。
確かにテレビで見たのと同じ風景だった。
(ここに結翔がいた。間違いない)
今でもはっきりと思い出せる。
テレビに映っていたのは結翔だった。
見間違いじゃないと、確信できる。
でも、一瞬映ったあの顔。
あれは昔から知っている、親友だったころの結翔ではなかった。
同じ、結翔なのに、不気味というか、まるで別人のような、そんな感覚がする。
いなくなる前の結翔のまま変わっていない。
それでも蓮は結翔に会いたかった。
一番の親友。
きっと、ああなってしまったのには理由があるんだと思う。
だから、蓮はそれもなんとかすると考えている。
一緒なら、どんなことだって乗り越えられると信じていた。
まずは結翔に会わないと先に進めない。
テレビでここが映った時に結翔がここにいた。
ここで聞き込みをすれば、見た人は多いかもしれない。
そう思い、近所で聞き込みを開始する。
それでも、やはり、見たことはないと言われてしまう。
それでも諦めずに聞き込みを続けた。
すると――。
「ん? ああ、最近、よく見る子か?」
古家に住む、お爺さんがそう呟くように言った。
「え? どこ? どこで見たの?」
「あの家だよ。事件があった。毎日散歩に行くんだけど、よく、あの辺にいるのを見たぞ」
蓮は慌てて、あの家へと走って戻る。
「あっ!」
そこには結翔が立っていた。
周りを見渡している。
そんな動作を見て、蓮は咄嗟に隠れてしまう。
家の壁の陰から見ていると、結翔は周りに誰もいないと思ったのか、家の中へと入って行った。
(結翔……。何してるんだ?)
蓮は結翔の後を追って、家の中に入ろうと思うが躊躇してしまう。
せっかく見つけたんだから、早く話したい。
だが、今の結翔は何か変だ。
それが蓮を本能的に思い止まらせていた。
(どうしうよう?)
ここまで来て、やっと結翔を見つけたのに、このまま帰るなんてできない。
でも、結翔を追って、家の中に入るのは何か怖いと感じる。
そこで、蓮は思い出した。
(電話だ!)
持ってきていた携帯電話を出し、氷室へとかける。
すると数秒で出てくれた。
正直、出てくれるかも怪しいと思っていたから、ホッとする蓮。
「探偵さん!」
『ああ、蓮か』
蓮はすぐに切られないように、すぐに本題を伝える。
「見つけたんだ!」
『見つけた?』
「そう! 結翔がいたんだ!」
蓮がそう言うと、氷室が少し戸惑った声で質問してきた。
『……どこにいるんだ?』
「えっと、南瓶堀って町」
『なんで、いるんだ?』
驚いたような声を出す氷室。
「テレビで見たんだよ。この前、ニュースやってて、その画面に映ったんだよ、結翔が」
『そうか……。この町にいたのか』
「どうしたらいい?」
『すぐそこから離れろ』
「え? なんで?」
『いいから、言うことを聞け』
「なんでだよ! せっかく見つけたんだぞ!」
『言うことを聞くって約束したよな?』
氷室の、その言葉に怒りが一気に噴き出す。
「先に約束を破ったのはそっちだろ! なにが結翔を見つけてやるだよ! 嘘つき!」
『……それは悪かった。だから、とにかく、その場から離れろ』
「嫌だね!」
『すぐにそっちに行く。今、どこにいるか教えろ』
蓮の怒りは余計に膨れ上がっていく。
「俺が先に見つけたのが悔しいんだろ! ぜってー教えねぇ!」
『馬鹿。そんな……』
蓮は電話を切る。
(こっちが探してくれって言っても探してくれなかったくせに、見つけたら手柄を横取りする気なんだ)
すぐに氷室から電話がかかってきた。
蓮は携帯の電源を切る。
(あいつはあてにならない。俺がなんとかしないと)
さっきまで感じていた恐怖を、怒りが上回る。
壁の陰から飛び出し、結翔が入って行った家へと入って行く蓮。
まだ朝だというのに、家の中は薄暗い。
その不気味さに、怖さが蘇ってくる。
蓮はそれを吹き飛ばすように大声で叫ぶ。
「結翔! どこだ!? いるんだろ!?」
わざと足音を大きく歩く。
「結翔! 結翔! 俺だ!」
すると、暗がりから人影が現れる。
蓮は驚いて思わず、体を震わせてしまう。
「蓮……くん?」
現れたのは、間違いなく結翔だった。