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第3話 超下痢体質から脱出したい……

次の日の朝、屈辱以外のなにものでもないが私は毎朝のミッションとガチャを回す。


テッテッテーン


変な効果音と共にガチャが開く。アイテムは便箋、ミッションは「CEOと出逢うために行動を起こす」だった。


(え……、便箋ってファンレターでも書けっていうの?今時、手紙?会うための行動って何なの?向こうから登場しないの?)


この手のゲームを今までやってきたことがない私は、戸惑った。アイテム?ミッション?そしてそんなに簡単に会えるものなのだろうか。


家を出ようとするとうさん臭いwifi、正式にはラムチャを確認する。強制モードが発動されたせいでクローゼットの奥に押し込んだラムチャは常に私の身の回りに存在していた。今も勝手にカバンの中に入っている。


(ラムチャか……)

私は、トラ柄で下着姿(?)で、角が生えたあのキャラクターを思い浮かべる。怒り狂って雷でも落としてこの機械を壊してくれないだろうか。超現実主義だったはずの私だが、いつのまにか非現実的な想像をするようになっていた。


アパートを出て交差点で信号待ちをしているとラムチャが光る。真っ暗だったはずだが液晶画面は薄ピンクに光り、何やら文字が浮かんでいる。


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CEOに会えそうな場所へ行ってみよう。

▶公園

 カフェ

 食堂

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(この3つから選べってこと……?え、わざわざ行くの面倒くさいんだけど。今日は2限からで朝食べ忘れたから食堂にでも行こうっと。)


私は食堂を選択した。まだ食堂の食事提供時間ではないので、コンビニでおにぎりとお茶を買い、空いている場所に座って時間を潰していた。CEOどころか学生すらいないほぼ貸切状態だった。


(んーー静かでいいねぇ!こっちの方が集中できるんだよね、ここ穴場かも。)


そんなことを思い喜んでいたが、その日の夜に再び電話が鳴る。今回も画面には触れていないの自動的に通話に切り替わった。


「おい、朝のはなんなんだ!」

「え?」

「なんで俺が行きそうな場所を選べっていって食堂なんだよ。いるわけないだろ!!」


(……こんな怒りの電話をよこしてくるなら自分から来ればいいのに。)


「もっと考えろよ、大学の食堂なんて俺どころか出逢いすら転がってないだろ。お前本気でやる気あるのか?」


CEOの藤堂に叱られてこちらも腹が立ってきた。


「そんなこと言うなら、そっちから来ればいいじゃないですか。ゲームの中でちやほやされているからって調子乗らないでください。そもそもあなたに興味ないんです。」


「な、……」


普段、藤堂を喜ばせ振り向いてもらい進展させようと頑張っているユーザーとは違う。私はこの人に興味がない。こんな態度で返してくるユーザーがいないため藤堂は返す言葉に困っていた。


(え……言い返せないってこの人、豆腐メンタル?)


「いいですか?周りの女性がみんな貴女のことを好きだと思ったら大間違いです。CEOだからって偉いとか好かれているなんて勘違いしないでください。」


(はっはっはっ!言ってやったぜ!!この勘違い俺様CEOが!)


この日の夜、私は爽快感で心地よい眠りについた。しかし、翌朝ときめき不足でトイレに駆け込み30分以上座り込んでいた。


(くっそーー。最低限のときめき貯めなきゃトイレに籠る生活になるのかよ。)


藤堂のことは好きになれないが、トイレに引きこもる生活はしたくなかったため日常生活に支障がない程度にポイントを貯めようと誓うのであった。


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