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第10話 キュンラボ四天王降臨

「全然振り向いてくれない生意気な大学生の女の子に苛立っていたけれど、その子が別の男とデートの約束を取り付けていたことを知って、いてもたってもいられなくなり車で飛び出してきた。……そういうことだよね」


「ああ」


「で、なんで彰は今ここにいるのさ?そこは彼女の元へ行って引き止める場面でしょ。」


長い前髪をかき分けながら南城岬は呆れて話しかけていた。岬はキュンラボの男性キャラクターの一人でミシュランの星を獲得してるオーナーシェフだ。

藤堂彰、西本峰、南城岬、北野慶太、俺たち4人東西南北がキュンラボのメインキャラクター(王子)である。西本はプロ野球選手で北野はアイドルだ。


朱音がデートに行くことを知り、いてもたってもいられなくなり車で飛び出してきた藤堂が向かった先は、キュンラボの男性キャラクターでイケメンシェフの南城が経営するレストランだった。


「なんで彰は今ここにいるのさ?そこは彼女の元へ行って引き止める場面でしょ。」


「俺から行くなんて……むしろあの女から来るべきだろ」


プライドの高い藤堂は自分から会いに行くことが許せなかった。岬は、藤堂の性格を熟知しているので苦笑いをしつつため息をついた。


「彰、急に呼び出しておいてなんだよ。俺たちだって忙しいんだぞ(デートで)」

キュンラボのメインメンバーである西本峰と北野慶太も現れた。


(これは長くなりそうだぞ……。)

岬は他のメンバーの登場に、藤堂が話を聞いてほしいと見て店の中へ戻って行った。



今日の予約状況を確認するとランチの予約は入っていなかった。

「悪いけど今日のランチは貸切にしようか。代金はすべて藤堂につければいいから。」


スタッフと話している間に他の3人は話をしていたが、藤堂が端的にしか話さないため意味が分からないようだ。岬が代わりに説明をする。


☆☆☆


「なんだよそれ、お前男らしくないな。さっさと女のところへ行けよ。腕握って『お前のデート相手は俺なんだよ』とか言って抱きしめろよ。」

熱い胸板に大きなお尻と太ももの逞しい肉体と爽やかなルックスのプロ野球選手・西本峰が言う。


「彰はさ、キュンラボのメンバーなんだよ?女の子を楽しませるのが目的なんだから怒ってばかりいないで僕みたいに笑顔を振りまいたらどうかな?」

笑顔で両手を振りながらアイドルの北野慶太も助言している。


「お前ら、勝手に言いやがって……。」


「そもそも呼び出したのは彰だろうが!!!」


峰と慶太が同時にツッコミを入れてきた。やはりキュンラボメンバーは美貌に加えてツッコミ力も求められるのだろうか……。


「自分のプライドも分かるけど、そこでムキになっていたら何も始まらないぞ。」

峰が藤堂の気持ちに寄り添いながらも言うと、自覚のある藤堂はバツの悪そうに頬を膨らませてテーブルに肘をついた。


「ね、それならその子が遊んでいるところを遠くからこっそり覗けばいいんじゃない?」

アイドルの慶太は良いことを思いついたと言わんばかりの笑顔で言ってくる。


「な、なんでそんなことをこの俺が。」


「だってそうすれば相手の子の好みのタイプも分かるかもしれないし好きなデートプランも見えてくるかもよ。」


「いいじゃないか、そうしろよ。一人じゃ心細かったら一緒に行ってやろうか?(笑)」

峰と慶太が楽しんで言っている様子を岬はやれやれという表情をしながら聞いていた。


「べ、別に行ってやってもいいけど…………。」


(え……!?今なんて?)

3人は言葉にしなかったが同じことを思ったのだろう。互いに顔を合わせて視線で合図を送っている。


「なんや、めっちゃええやん。藤堂行ってきやー!」

こっそり聞いていたシェリが姿を現した。


(おいっ、慶太なんて事言うんだよ……。 by峰)

(いや、峰だって行ってやろうかとか言ってたじゃないか。 by慶太)

(……面倒だけど、シェリさんにも聞かれたし慶太も峰も諦めて行くしかないんじゃないかな by岬)


3人は藤堂とシェリに聞こえないように小さな声で話をしていた。どうせ藤堂は行かないと突っぱねると思っていたので、この展開は誤算だったのだ。


「ほな、朱音に話聞いて時間と場所分かったら連絡するわ!みんな上手くやるんやで!!」


(……『みんな』、ね。)


朱音の気分転換のお出かけはシェリにより、デートと伝えられキュンラボ四天王が影で観察することとなった。まさか同級生と遊びに行くことがこんな大ごとになっていたことを朱音は知る由もなかった。



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