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流星-5



翌日、社来ファームの社長【吉野善吉】から電話があった。今や日本最大の生産牧場であり、輸入種牡馬ノーザンテーストやトニービン、サンデーサイレンスの成功により世界屈指のオーナーブリーダー(馬主兼生産者)となった。親父とは古く、昨年の繁殖時期にダンスインザダークの余勢種付株を特別に安く回してもらいファンタジアに付けたのだ。


そのファンタジアの仔は吉野氏に売却することが決まっている。


まだ生まれていない事を告げると、今年もまたサンデーサイレンス系種牡馬の余勢種付株を回してくれるとの事。もちろんファンタジアに付けて生まれたら吉野氏に売る事になる。

ファンタジアのように母系にノーザンダンサーが入っているとロイヤルチャージャー系との相性がとてもよく、サンデーサイレンスが日本で成功したのは、母の父にノーザンテースト(ノーザンダンサー直仔)が多いからとも言われている…ってなんかの本に書いてあった。


スタッフ二人にそれを告げると、

「ほんまでっか!今年はアグネスタキオンとかスペシャルウィークとかディープインパクトとかだったらええでんな~!」

と、宝田。ちょっとイラッとする。


「………」

もちろん瑤子はシカト。超クビにしてぇ。



それにしても早く生んでくれよファンタジア…。おまえがうちの牧場を支えてるんだよ…。


そんな事を考えているとき、派手なシルバーのメルセデスが敷地内に入ってきた。

俺が世界で一番嫌いなヤツ、龍田ファームの二代目の龍田 仁(タツタ ジン)。


社来ファームには劣るが、日本生産界屈指のオーナーブリーダーだ。

昨年のダービーをドラゴンアローで制し、ドラゴンベリーの仔でクラシック全制覇を成し遂げた。

「いつ来ても汚い牧場だな~」


こいつはムカツクやつだ。

しかし小~高校までいつも同じクラスの隣の席。

腐れ縁とはこの事だ。


「うるさい、バカ死ね!」

今度こいつが来たら、うちの軽トラをメルセデスにぶつけてやろう。

俺は心に誓った。




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