「ドリームメーカーにとって休養していた6歳7歳時期が1番のピークだったかもしれません。」
飛田社長がターフのドリームメーカーを見ながら静かに口を開いた。
あのマッチレースの時のドリームメーカーはまさに絶頂期だった。
おそらく無事でいたならば、翌年日本で、いや海外でも成功していただろう。
1番いい時期にターフを走れなかったドリームメーカーの5年にも及ぶ怪我との戦い。
この有馬記念が、今後の彼の新たな伝説の幕開けになるかどうか試される。
僕はターフを見据えた。
すでにゲート入りは始まっている。
『さぁ枠入りは順調…
いや!ドリームメーカーが入りません!
やはり5年ぶりのレースに興奮しているのでしょうか?
暴れ馬で名を轟かせたドリームメーカー!
その気性は今だ健在か!?』
ドリームメーカーがゲートに入らない!?
僕の胸の鼓動が激しくなった。
「アハハハ!」
飛田社長の笑い声。
飛田社長~!笑い事じゃないですよ!
ドリームメーカーがゲートの数m前でピッタリ止まって動かないんですよ!?
…って…あれ?
ゲート付近の誘導係もなにもせずにドリームメーカーをただ見ている。
「やっぱり凄い気合いが入ってるわ。」
瑶子さんも笑いながら言う。
僕はさらに目を凝らして遥か先のドリームメーカーに視点を集中した。
「田辺さん!ドリームメーカー劇場へようこそ!
開幕の【儀式】をご覧あれ!!」
飛田社長はそう叫ぶとドリームメーカーを指差した。
「フン…
フン…
フギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーァァァァァァァァァァァァ!!!!!」
ドリームメーカーが叫んだ…!!
ゲートから遥か馬主席の僕の鼓膜を突き破る絶叫の雄叫び…!!
そしてドリームメーカーは自らゲートに入って行った。
『さぁ有馬記念!!
ゲートが開いてスタートしました!!』