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第15話 お守り

俺はオルカの案を実行するため家に帰ろうと廊下を歩いていたら、クレイが俺を呼び止めた。


「こんなところにいたのね」

「なにか用か?」

「今さっき、オーシャンバトルの対戦相手が決まってね。丁度皆に報告していたところなの」


クレイはそう言いながら、俺に一枚の紙を渡してきた。


「早いな。もう決まったのか、対戦相手」


クレイから渡された紙を受け取り、それに目を通すと、そこには師匠の名前があった。


「まさか第一回戦で俺たちと師匠か……」

「あの男のことだから、アトランティスの要とも言われているあなたを潰したいのかも」

「あの人ならありえるな」


師匠とアオは親子だ。もしできるなら二人を戦わせたくないのが本音だ。

でも、アトランティスを守るためなら戦わないといけない。

それに、アオも師匠に会いたい気持ちがあるのは確かだ。


「それと、あの子とは交尾れた?」

「……」


クレイの言葉に思わず嫌悪な表情をしてしまった。


「なによ、その表情は。先輩が心配して聞いているのだから、そんな表情はしないの」

「するしないも、お前が変なことしなければいいだけのこと」

「あら、バレてた」


俺の言葉にクレイは瞠目し、隠し持っていた媚薬入りの注射器を出してきた。


「別に良いのよ?私の媚薬を使っても」

「いや、お前の媚薬はに使わない」

「そう、つまんないわね」


不満そうな様子を見せるクレイ。俺からしたらこの女の媚薬を使うくらいなら、オルカの案の方がまだアオを傷つけずに済む。


「アオが家で待っているから、俺はそろそろ行く」

「そう。アオさんによろしくね~」


クレイは嬉しそうに俺に軽く手を振って、俺はその場を後にした。


そういえばアオの奴、なんで先に帰ったんだ?魚の研究をするなら、神殿で調べるのがいいだろうに。


「ただいま」


家の玄関を開け、一言声を掛ければ、リビングの方からアオの声が聞こえてきた。


「セラ!おかえり」


俺はそのままリビングの方に行くと、彼女は机に魔石や布のハギレなどを広げて、何か作業をしていた。


「何をしているんだ?」

「あっ、いや。か、片付けるね!」


アオは慌てて机の上を片付け始め、作業道具や材料などを自室に持っていった。

何故、そんなに慌てるんだ?別に慌てることもないだろうに……。彼女のそんな様子を見て俺は不思議に思うものの、気にすることはなかった。


「そういえば、オーシャンバトルの対戦相手が決まったぞ」

「え?もう決まったの?」


クレイから渡された対戦相手の紙を、アオに渡すと彼女はそれを受け取った。


「あぁ、俺も早いとは思ったが……ポセイドン様と向こうはさっさと終わらせたいらしい」

「私たちの対戦相手、やっぱりお父さんなんだね」


アオは紙に書かれた師匠の名前を見て愁色な顔をし、手に持った紙を机に置いた。


「もし、辛いなら…戦うのをやめるか?」


俺の問いにアオは戸惑うものの、一呼吸し俺の方を真っすぐと見つめた。


「やめないよ。確かに、お父さんと戦うのは辛いよ。でもね、ここで戦わず逃げ出したら、私は一生後悔する」

「……しかし、師匠となれば生きて帰れる保証は……」

「だから、なんで君は私たちが死ぬ前提で話す?私と君はオーシャンバトルに向けて、お互いを信じて今日まで修行をしてきたんだ。だから、私と君は絶対に生きて帰る。もちろんお父さんも連れてきて、事情を聞き出す!」


アオの真剣な眼差しは俺を話すことなく、ただ一点を見つめていた。

あぁ、そうだった……今まで、彼女は絶対に諦めたり逃げ出すことなんてしなかった。


「そこまで言われたら、心配なんて要らないな」

「もちろん。それに、セラがこんな素敵な家を建てたんだ。お父さんにも見てもらわないとね」

「あ~それはちょっと……」


アオは父親としての師匠しか見ていないため、弟子から見た師匠は何においても厳しくて、何回も半殺しにされてきた。

そんな師匠が、俺が建てたこの家を見たらどう思うのだろうか?

俺の技術的にも不安と恐怖でしかないが、今考えてもしょうがない。

師匠のことを考えていたら、アオが声を掛けた。


「あ、セラにあげたいものがあるんだよ」

「あげたいもの?」


アオは何か取りに自室へ行き、小さな何かを手に持って戻ってきた。


「はい、これ」


アオから渡されたのは、手のひらサイズの小さな布袋だった。


「これは?」

「お守り!この世界のお守りはよく分からなかったから、こっちの世界のお守りを作ったんだ。中には綺麗な魔石が入っているよ」


彼女の手作りお守りは可愛らしく、お守りの真ん中にはこっちの文字で「必勝」と刺繍されていた。

俺は嬉しさのあまり、彼女を優しく抱きしめた。


「セ、セラ!?」

「ありがとう……アオ」


これは絶対に勝たないといけないな。

師匠に勝つ為にも、今夜絶対にをしないといけない。


「ア、アオ……」

「なに?」


俺に呼ばれて、彼女は顔を見上げる。

海のような青く綺麗な瞳、童顔もあるさいか彼女の可愛い差が増し直視できない。

恥ずかしさと己の欲が沸々と込み上げてくる。


「そ、その……えっと……クレイの奴が言ってたんだ。同調率上げるには愛が必要だって!その、あ、愛を手っ取り早く上げるには……」

「手っ取り早く上げるには?」


ほら!言うんだ俺、ここまで来てなんで出てこないんだよ。


「その、えっと……お前と交尾がしたい」


俺の言葉にアオは一瞬固まるものの、俺の言葉をすぐに理解した。


「交尾……あー!なるほど、そういうこと!もちろんいいよ」

「…は?」


あっさりとした返答に、俺は思わず間抜けな返事をしてしまった。


「ほら、交尾るんでしょ?寝室に行こう」

「ちょ、ちょまっ」


アオは俺の手を強く引き、俺は彼女に寝室へ連れて行かれた。

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