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第24話 リヴィアタンストーリー3

あの後、俺とホタルは秘密の場所で何度も会って話をした。

彼女は少し抜けたところがあるが、頭も良く、学者としての知識は豊富だった。

そんな彼女と話すことは、俺にとって唯一の楽しみで、月日が経つにつれて彼女への気持ちが少しずつ強くなっていった。


そして、ホタルと出会ってから一年が経った頃、俺はいつもの場所でホタルを待っていた。


「……遅いな」


今まで彼女が遅刻することはなかった。

それに、波がやけに静かすぎて、嫌な予感がしたその時だった。


「きゃぁぁ!」


西の方からホタルの叫び声が聞こえ、俺はすぐに声の方へ急いで向かった。


「ホタル!」

「リヴィアタン!」


彼女がいる場所に辿り着くと、そこにはアトランティスの処刑隊が彼女を取り囲んでいた。


「これは、リヴィアタン」


処刑隊のリーダー、リオルが俺に声をかけてきた。


「リオル、これはどういうことだ!」

「見ての通り、今から処刑をするのです」

「処刑だと?」

「えぇ、この女は我々の大切な戦士を誑かしました。だから処刑をするのです」


俺の問いにリオルは冷静に答え、大刀を召喚した。


「我々鰭人は主神であるポセイドン様が定めた掟、オーシャンバトル以外で人間と関わることは禁忌です!禁忌を犯した者には最大の苦痛を……」


大刀をホタルに振り下ろした。


「させるか!」


俺は瞬時に腕に防御の術を展開し、大刀とホタルの間に身を投じて攻撃を受け止めた。


そして、背後にいる彼女が傷つかないように、防御術をかけた。


「リヴィアタン!」


背後からホタルの心配する声が聞こえてくる。

俺は彼女を安心させるために、冷静に声をかけた。


「怖い思いをさせてしまってごめん。俺がこいつらを片付けるまで、そこから動かないでいてくれ」

「わ、分かった」


ホタルの返事を聞いた瞬間、俺は彼女を守るために腹部へ蹴りを入れた。


「あなたはそれほど地獄に堕ちたいのか?」

「あぁ、そうだ。何もしないで殺されるくらいなら、大切な者を守って地獄に堕ちるほうがましだ!」


俺は防御の術の上から肉体強化の術をかけ、リオルの間合いに入って首を狙ったが、攻撃を弾かれた。


他の奴らも俺を狙って、攻撃をしかけてきた。


流石は処刑隊、戦士とは別のポセイドン様直属の部隊だ。

部隊は罪人を一撃で仕留めるように訓練されている。


しかし、一人一人が急所を狙ってくると、戦いづらい。

攻撃をかわしながら、手刀で確実に首を落としていく。


「やはり、部下ではあなたを止めることはできませんね」

「なら、お前が来たらどうだ?」


「そうですね……ではこれはどうです?」


リオルが不気味な笑みを浮かべた瞬間、俺の左太ももに矢が刺さった。


「……っ!?」


どこから飛んできた!?辺りを見渡しても、弓兵の気配はなかった。

それよりも、俺の防御を貫通してきた。


「ふふ、驚きますよね?周りを探しても無駄です。私の弓矢は捉えることができません。それに、その矢のやじりには魔力封じが込められているのです」


リオルがそう言った瞬間、右肩にも矢が刺さった。


「ぐっ……」


肩と太ももに刺さった矢を抜くと、生暖かい血が垂れ落ちる。

鏃には魔力封じが込められているため、防御を貫通してくるうえ、俺の魔力を削っている。

俺は奴と距離を取るために、素早くその場を離れ、岩を盾に身を潜めた。

魔力を耳に集中させ、周囲の音の反響を使って弓矢の位置を確認しようとするが、弓矢の位置が見えない。


「無駄ですよ」


俺の左腕に矢が刺さった。


「ぐっ!?」

「それに、あなたが死ねば、あの女の防御術が解ける」


ホタルをあそこに置いている以上、俺がここでやられるわけにはいかない。

それに、この状況では向こうが有利なのに、なぜ仕留めてこない?


「まさか……」


俺はあることに気付いた。


「いい加減出てきてください!」


しびれを切らしたのか、リオルは再び俺に攻撃を仕掛けてきた。

そして、奴の矢が俺の脚に触れようとした瞬間。


「今だ!」


一気に魔力を脚に集中させ、瞬時に加速術を発動し、リオルの方へ向かった。


「なっ!?」


リオルは大量の術式を展開し、俺に向かって矢を放った。


「やはりそうだな……どうやら、ターゲットの距離と弓の数が関係しているみたいだ!」


俺は素早く矢をかわしていくと、その光景を見たリオルは焦りを見せ始め、奴の魔力に反応して矢の数は徐々に増えていった。

そして、背中や足に数十本の矢が刺さったが、俺は止まらなかった。


「な、何故だ!何故、そこまでして人間を助けようとする!」


リオルは俺に大刀を振り下ろすが、寸前でかわし、構えた。

次の攻撃が来る瞬間、拳に全魔力を集中させた。


「……愛してしまったからだ」


大刀の刃が俺の肩に触れるその時、俺の拳がリオルの腹に入り、勢いよく後ろへ飛ばされた。


「……はぁ……はぁ……つぅ……」


まずい、血を流しすぎた……頭がまわらない。


「リヴィアタン!しっかり!」


朦朧とする意識の中、ホタルの俺を呼ぶ声が聞こえた瞬間、視界が真っ暗になった。

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