あの告白以来、俺は陸に住むことを決め、準備のためにリィゲリアと共に海へ戻った。
一方、ホタルたちは研究のため、一か月間海に出ることになった。
「えー……今回の調査は…って、おい!深海!」
「……」
「深海、聞いてるのか!」
「あ、はい!なんでしょうか?」
「なんでしょうか?じゃない!ちゃんと話を聞け!」
「あ、はい……すみません」
私のしたことが大事な会議で怒られるとは……。
普段ならこんなことはないのだが、先日の件のせいで会議の内容が頭に入ってこない。
『俺と番になってくれないか?』
優しい声、そしてあのコバルトブルーで美しい瞳。
あんなに真っすぐに見つめられて告白されたのは初めてだ。
しかも、人間でもない別の種族に……。
異種間恋愛に関しては人とイルカの論文などを読んだことがあるから抵抗はないが、まさか自分があのヒトを好きになるなんて思ってもみなかった。
「…はぁ」
「どうしたの?溜息なんてついて、何かあったの?」
ヒフミが不思議そうに私を見つめてきた。
「何かあったわけじゃないけど、生物の求愛がこんなにも複雑だとは思わなかった」
「姉さん、何言ってるの?頭でも打ったの?」
「打ってないよ。ただ、生物って複雑だなって思っただけだよ」
「はぁ……ほら、変なこと言ってないで、さっさとレポートを書きなよ」
ヒフミは私の頭を資料で軽く叩き、それを私に渡してきた。
「はい、今回の海底調査の報告書。一応、姉さん班のリーダーなんだから、しっかりしてよね!!」
そう言ってヒフミは自分の部屋へと戻っていった。
私はヒフミから渡された資料に目を通し始めた。
本来、私は海洋生物がメインなのだが、学会に出す資料には確認のため、リーダーの私が目を通すことになっている。
その資料の中で、一つ気になることが書かれていた。
『謎の古代文字が書かれている海底遺跡について』
その資料には遺跡について詳しく書かれており、写真が複数挟まれていた。
「……海底遺跡。与那国島の遺跡とは違って、今回は……え?」
私は数枚の写真を見たとき、あることに気が付いた。
「この文字のような模様……リヴィアタンの腕にも」
思い出した。この模様のような文字はリヴィアタンの腕に書かれていた。
何が書かれているのかは分からないが、なんだろう、この胸騒ぎ。
資料に書かれていた遺跡は直感的に、触れてはいけないものだと思わせる。
「なんだろう……初めて見るものなのに、見覚えがある」
私はそれなりに記憶力がある方だ。
一度見たことがあるならともかく、この遺跡は初めて見るものだ。
それなのに、私の身体が覚えているのは何故?それにこの胸騒ぎ……。
「リヴィアタン……」
私は服の下に隠していたネックレスを出した。
船に乗る前、リヴィアタンからお守りだと言われ渡された。
そのお守りは何かの鉱石で作られた指輪、照明に照らすとそれは光によって輝く海のような色になった。
『もし、お前の身に危険が迫ったら、迷わず指にはめろ』
リヴィアタンにの言葉を思い出し、私はその指輪を優しく握りしめた。