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第27話 リヴィアタンストーリー6

アトラス神殿にて――。


「やはり、逃げられたか」


ポセイドンは兵士から渡された資料を見て、溜息をついた。


「さて、二人の情報は?」

「はい、リヴィアタンは依然として行方不明です。人間の女については、偵察部隊の報告によると、マーレの海面で乗り物に乗っているとのことです」

「なら、今すぐマーレに向かい、アレを使っても構わない。その女性を捕らえよ」

「アレをですか?……分かりました」


ポセイドンの指示を受けた兵士は、その場を去っていった。

ポセイドンは玉座の間に誰もいなくなったのを確認すると立ち上がり、玉座の後ろに優しく触れ、魔力を流した。

玉座はポセイドンの魔力に反応し床がゆっくりと開き、その先から大きな球体の水槽が二つ現れた。


「人間と鰭人。この世界の均衡を保つためには、鰭人と人間の番は禁忌とされている。それは、大いなる力が世界を壊しかねないからだ。そう伝えられてきた」


二つの水槽の中には、女性が膝を抱えるようにして入っていた。

ポセイドンはその水槽の一つに優しく触れた。


「実際、その大いなる力がどう使われているのかは誰にもわからない。そうだろう、カーハ?」


カーハと呼ばれた女性は、水槽の中で目覚めることなく、静かに眠っていた。


その頃、ホタルは――。


「はぁ?嵐?どういうこと?今朝の予報では雨すら降らないって……」

「安全を考慮し、このまま港に……」


部下が言いかけたその時、突然、ドォン!と船が何かにぶつかる音が轟いた。


「な、何!?」

「俺、確認してきます!」


部下がそう言って私の部屋を出て行った。


「ここは日本海溝の真上。座礁なんてありえない…ましてや今の時代に船の衝突なんて……まさか」


私は先日のことを思い出した。


「鰭人が私を狙っているのか……」


嫌な予感がし、リヴィアタンからもらった指輪をはめ、急いで甲板の方へ向かった。

できるだけ人がいない場所を探していると、ちょうどその時。


「姉さん!」

「っつ!?」


ヒフミが私の目の前に現れた。


「どこに行ってたの! みんな緊急招集されたんだよ!早く皆のところに行こう!」


ヒフミの性格から、私を探しに来たのだろう。

しかし、今はヒフミを危険な目に遭わせたくない。


「ヒフミ、私の話を聞いて……」


ヒフミをどうにか誤魔化してその場を離れさせようとしたその瞬間、突然。


『青き波のさざめきよ、深き闇を抱きしめ、星々の囁きの中、夢の世界へ誘い給え。月の光、銀の道、水面に映るは幻、潮の香り、心を解き、静けさに身を委ねよ』


どこからか歌声が聞こえてきた。


「なにこの歌声?……姉さん!?」


ヒフミはホタルの異常な行動に気づき、柵を乗り越えようとするホタルを止めた。


「何やってるの姉さん!?死ぬ気!?」

「行かなきゃ……」

「行かなきゃじゃないよ!馬鹿なことはやめて!」


必死にホタルを止めようとするが、ホタルの力は強く、あっさりと振り払われた。

そして、ホタルはそのまま海へ身を投げた。


「姉さん!まずい!早く海上保安庁に!」


ヒフミは急いでその場を離れた。



冷たい…あれ?私なんで……海に?


私は意識をゆっくりと取り戻した。


「なっ!?」


気が付けば身体を縄のようなもので縛られていた。


「やっと目覚めたようだな」


男の声がし、私が顔を上げるとそこには複数の鰭人に取り囲まれていた。


「さて、お嬢さん。あなたにはリヴィアタンを捕まえるための餌になってもらう」

「なっ……」

「おとなしくしていれば、俺たちはお前さんには手は出さない」


そんなこと言われても、アンタたちから嫌な感じがでているのがバレバレなんだけど。

でも、いまここで私が反抗してもこの勝ち目がない……どうすればいい。

私は不安から、指にはめた指輪を見て気づいた。

指輪は何かの発信機のような感じで光が点滅しており、徐々にその光が強くなっていった。


「まさかこの指輪……」


私はこの指輪がこの状況を打破するカギだと確信した。


「あとはこの人たちをどうするかだ……」


私は鰭人にバレないように、頭の中で作戦を練り始めた。

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