修練所に着いて早々、リュドヴィックさんに装備している双剣を見せることになった。
私が手渡すと真剣な眼差しで双剣を見る。鈍色の片刃剣? だっけ? そんな感じだ。
これ、多分だけど『初期装備』ってやつだよね……?
一応、金属で出来た剣である事だけは助かったのかな? だって、木とかで出来ているとか恥ずかしいじゃない?
「……ふむ、銘もないか。無銘の量産品の双剣と言ったところか?」
「あはは……。そう、みたいですね?」
「笑っている場合じゃないだろうに……まぁいい。とにかく、構えてみろ」
リュドヴィックさんが私に双剣を返す。どうしよう? 剣なんて、今まで持ったことないよ?
とりあえず、『前世』での動画とかで観た持ち方をしてみる。確か、逆手持ちだっけ? あっているか不安になりながら、私は構えてみた。
リュドヴィックさんの鋭い視線が私に刺さる。
「えっと……」
「ふむ。構え方は覚えていたようだな」
よかった~! あってはいたみたい! だけど、次のリュドヴィックさんの言葉で私は固まった。
「そこの木人形に攻撃をしてみろ」
えー!? 攻撃するの!? そもそも木人形ってなに? 色々気になるんだけど……。
私は構えをそのままに、とりあえず攻撃をしてみることにした。だけど、私は盛大に攻撃を外してしまった。かなり恥ずかしいけど、仕方ないじゃん……。
だけど、リュドヴィックさんの目から圧を感じる。続けろという圧が。
そんな目でみないでよ〜! だって私、初めてなんだもの!
内心で泣き言を言いながら、何度も攻撃をしてみること数十分。
慣れない動きをしたからだろう、『前世』の頃より体力も、筋力もあるはずなのに私はへばってしまっていた。
「はぁ、もういい。やめていいぞ」
リュドヴィックさんの冷静な声が聞こえて、私はようやく攻撃をやめる。疲れ果ててその場に崩れ落ちる私へ向かって、リュドヴィックさんは視線を向けながら額に手を当て完全に呆れていた。
「お前な?」
「は、はい?」
「基礎も全くなっていないな? 仕方ない。オレは双剣使いではないが、基礎程度なら教えられるだろう。だから、これから鍛錬を開始する。幸いにもオレがルクバトに戻るまでまだ時間があるからな。みっちり扱いてやるから、覚悟しろよ?」
「はい……」
リュドヴィックさんの目が怖い。怖すぎる。イケメンに睨まれると、こんなに怖いのね……。あんまりそういう系のゲームとかしたことないからわからないけど、乙女ゲーム? あれで睨まれたりする時の主人公ってかなりタフだったんだね……。
妙な感心を抱きつつ、私はリュドヴィックさんの指示で、鍛錬を開始することになったのだった。