食事を終えた私達は、少し休憩する事になった。正直、少し物足りないけどワガママを言える立場じゃないことだけはさすがにわかる。
なので私は大人しく、ゆっくりお茶らしきものを飲むリュドヴィックさんを待つことにした。
だけど、やっぱり気になったことを訊きたくなって、私はリュドヴィックさんがコップから口を離したタイミングで訊いてみる事にした。
「あの、リュドヴィックさんは騎士団でどんな立場の方なんですか? 私……じゃなくて俺……じゃなくて、自分より上だというのはわかるのですが」
「男でも『私』というのは、何もおかしくないぞ? だから無理して直そうとしなくていいと思うが?」
あ……確かにそう言われてみれば、そうかも?
アルベリクさんも一人称が『私』だったことを思い出したし、『前世』の世界でだって普通にあった。その事に気づいて、羞恥心でいっぱいになる。
そんな私の心中など知らないで、リュドヴィックさんは咳払いをすると先程の質問に答えてくれた。
「オレの騎士団での役割は、今は悪いが言えん。ただ、お前の教育係だと思ってくれていればいい。あぁ、オレが船に義妹と共に乗っていた事も気にするなよ? いいな?」
私が同意する前に、この話は終わりだと言わんばかりにリュドヴィックさんはお茶の続きを飲み始めてしまった。それを見て、私も諦めてお茶らしきものを飲む。
「にっが!?」
あまりの苦さに思わず舌を出すと、リュドヴィックさんは少し口角を上げて笑っていた。うぅ! ズルい!
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薬湯の効能である程度回復したとはいえ、まだまだこの身体に慣れていない私にとって、リュドヴィックさんの鍛錬は地獄以外のなにものでもなかった。
でも、泣き言を言ってもダメなのはわかっている。リュドヴィックさんの視線がそう言っているし、なにより……負けず嫌いだったりするんだ、『私』が。
「次、行くぞ!」
「は、はい!」
私は双剣を構え直す。今日の鍛錬も、木人形相手だけど服が重たくなったことで、私の動きは鈍くなっていた。
「身体に叩き込め! 戦闘で死なないためにもな!」
昨日と今日で、リュドヴィックさんのことが少しだけわかってきた。この人、スパルタだ!
「もっと腰を据えて! 力は入れすぎず!」
「はい!」
リュドヴィックさんに身体の節々を叩かれながら、私は木人形に向かって、ひたすら双剣を振るうのだった。
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日が落ちて辺りが真っ暗になり、私は今日の鍛錬を終えた。
がくりと膝から崩れ落ちる私を、リュドヴィックさんが見下ろしてくる。
「まぁ、昨日の今日だからな。安心しろ、お前が死なないようになるまでは面倒見てやるから」
優しいけど、厳しいな。リュドヴィック
私が疲れで何も言えないのを、同意と見たらしい。リュドヴィックさんは一人頷くと当たり前なんだけど、私にとってとてつもない難問を突き付けて来た。
「さて、汗も流したことだし……湯浴み場に行くぞ」
「はい……?」
嘘でしょ~!?