「おや? ふふふ、おかえりなさい」
寮に戻ってすぐ、ランベールさんが優しく出迎えてくれた。
「ただいまです! あ、ランベールさん、折り入って相談があるんですけどいいですか?」
オクト君の言葉に、ランベールさんが穏やかな笑みで訊く。
「はい? なんでしょうか?」
「実はですね……」
オクト君が私の事情を話してくれた。それを真剣に聞くと、ランベールさんは私の方へ視線を向ける。
「おや、それは困りましたね。……イグナート卿、失礼しますね?」
「はい?」
戸惑う私の身体を、ランベールさんが触ってくる。
いきなり採寸をされて、困惑する私。しばらくして、ランベールさんは私から離れると静かに告げた。
「ええ。このサイズなら、ボクのお古で間に合うでしょう。お代は要りませんので。取ってきますから、しばしお待ちくださいね?」
そう言って、ランベールさんがどこかに行く。言葉通りしばらく待つと、洋服一式と寝巻きらしき物を持って戻って来てくれた。
「はい。これなら、入るかと。ふふふ、きっとお似合いですよ?」
「ありがとうございます。似合うかどうかはわかりませんが……」
私が遠慮がちに言うと、ランベールさんは相変わらずの優しい笑顔で返してくる。
「いえいえ、お役に立ちましたなら幸いですよ。さて、お二人はこの後?」
私達は顔を見合わせる。数秒考えてから、オクト君が口を開いた。
「汗流したくねぇか?」
「まぁ、そうなんだけど……」
いや、覚悟はもうリュドヴィックさんと入るようになってから決まっていたじゃないか。
今更だよ。そう、今更。単にまだ見慣れないだけ。だけだから!
「よし、じゃあ湯浴み場に行くか!」
「ハイ、ソウデスネ」
私は諦めてオクト君と一緒に、寮にある湯浴み場へと向かった。
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寮の湯浴み場も黒レンガ造りで、円形状の広くて綺麗でくつろげそうな空間だった。
男の人ばかりでなければだけど……さ。
どうやら、この時間は入浴タイムらしい。沢山の体格の良い男の人達がいたる所にいる。
「参ったなぁ……」
もしかして、リュドヴィックさん?
私が苦手だってわかっていてポーリスでは人の少ない時間、選んでくれてた? ってくらいの人の多さだった。
「うん? どうした?」
オクト君が不思議そうな顔で、こちらを見てくる。
「いや、私、どうやら裸の付き合いっていうの? 苦手みたいでさ……はは」
「そっか。……まぁ、そのうち慣れるって!」
そう言って私の右肩を叩くと、湯に浸かりへ行く。私も後を追って、湯に入るのだった。
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「ふぁ〜……いい湯だったな!」
「うん……」
なんとか、無事に汗を流した私達は着替えを終えていた。
今のオクト君の服装は黒のTシャツにラフな灰色のパンツで、私の服装は白の無地に紐が付いたシャツに黒いスッキリしたパンツだ。
どちらの服装も、動きやすく寝やすそうだった。
「さ、部屋に戻ろうぜ? ま、お前にとっちゃはじめての部屋だけどよ!」
「あはは、まぁね……」
こうして、私達は部屋へと向かった。