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第34話 四人での食事

 注文を終えてから、私は今更になってお金のことを思い出した。


「あ……の、リュドヴィックさん!」


「なんだ?」


 足を組みながらお水を口に含むリュドヴィックさんが、カッコよくてツラい。


 くっ、負けるもんか!


 私は勇気を出して、リュドヴィックさんにお礼を言う。


「お金、ありがとうございました! 助かります!」


「気にするな。……仕事で返してくれればいい」


 く、クール!


「あ……はい! 頑張ります!」


 思わずガッツポーズをすると、リュドヴィックさんがキョトンとした表情をする。


「なんだそのポーズは?」


 ……どうやらこの世界には、サンドウィッチはあってもガッツポーズはないらしい。理不尽!!


「あ~……なんでしょうね? あはは」


 全力で笑って誤魔化すしかなかった。しばらくして、注文した品が届く。心なしか、若い女性店員さんの頬が赤い?


「美味しそうですね!」


 私が言うと、オクト君とリュドヴィックさんの視線が刺さる。えっ、私なにかしました?


 オクト君は口元を抑え、リュドヴィックさんは睨んでいるかのような表情で見てくる。 なに? 本当になに!?


「あ、いや……なんでもねぇよ?」


「気にするな」


 二人してそういうと、私から視線を逸らす。えっ、やめてよ〜! そういうの傷つくから!


 困惑していると、ベルちゃんがトドメの一言を刺してきた。


「今のイグナートさんの表情が、可愛かったから照れちゃったんじゃないですか? ふふふ!」


 えっ……それって……私今、『女の子』の顔してたってこと!?


「恥ずかしいものをお見せシマシタ」


 く! 男らしくなろうというところで! 悔しい!


「まぁいいだろう? それより、食事にするぞ」


 あ、否定しないのですね……? 悲しい。


 リュドヴィックさんの号令で、みんなでお祈りをすると、食事をはじめた。

 ちなみに私が頼んだサンドウィッチの中身は、なんのお肉かはわからないけど……とにかくお肉と野菜がたっぷりでジューシーだった。


 ****


「美味かった〜! 寮のも美味ぇけど、こういう店のもいいですね!」


 オクト君、おかわりしてたけどね!

 ……まぁ、私も足りなくておかわりしたけど!


 どうやらこの身体を維持するには、相当食べないといけないらしい。燃費悪いなぁ~。


「食べられないよりはマシだろう。それより、お前達はこの後どうする?」


 あれ、意外。てっきり、解散とか言うのかと思ってたのに。


「あー……どうするよ? イグナート?」


「えっあ〜……」


 正直に言えば、お店巡りをしたい。したいけど! これ以上、『女の子』を出すのは王子様希望としては納得いかない!


 どうしようか思案していると、リュドヴィックさんが助け舟を出してくれた。


「なら、公共広場に行ってみるか?」


「公共広場ですか?」


 私が訊き返すと、今度はベルちゃんが答えてくれた。


「ちょうどこれから、広場で劇があるんですよ! 良かったら一緒に観ませんか?」


 なるほど。劇か〜。私のイメージする劇は某歌劇団なんだけど……面白そう!


「観たいです! オクト君、いいかな?」


「あー……いいぜ?」


 ん? なんか今、おかしかったような?


「決まりだな。食事も終えた事だし、行くぞ。……会計はオレが持つ。文句は言わせん」


 有無を言わせぬ圧に、私とオクト君は首を縦に振りお礼を言った。

 そうして、お会計を済ませた私達四人は次なる目的地へと向かうことにした。

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