「それで? お前達は何をしているんだ?」
リュドヴィックさんが興味のなさそうな声で訊いてくる。……相変わらず、ベルちゃんが絡むと辛辣になるなぁ。
そんなことを考えていると、オクト君が変わりに答えてくれた。
「イグナートがルクバトを巡りたいってんで、案内していたところです。……なんでか、商店街は最後でいいとか言うもんで、この時間に……」
言われてみれば、私達、朝からなんにも食べてなくない? やっば! ごめんよ〜オクト君!!
「ごめん、私のせいで……」
素直に謝ると、オクト君が笑顔で返す。
「気にすんなって! それよか、やっと商店街に来たんだし、ここいらで飯にしようぜ?」
「あ、ありがとう! そうしようか?」
そんな会話をしていると、ベルちゃんが何か言いたげな視線を送ってきた。なので、私が訊こうとすると、先にオクト君がリュドヴィックさん達に向かって声をかけてきた。
「リュドヴィック卿達も食事一緒にどうですか?」
さっすがコミュ力の塊、オクト君だ!!
「オレ達は……」
「いいんですか!?」
言いにくそうなリュドヴィックさんと嬉しそうなベルちゃん。二人の様子に、申し訳ないけどつい笑ってしまった。
「イグナート、何がおかしい?」
「ゴメンナサイ」
目に殺意が宿っているんですけど!?
「なにかご都合悪かったですか?」
オクト君って鈍感なの? リュドヴィックさんの視線を気にすることなく、訊く彼に私は驚いてしまう。
「オレ達はすでに食事を終えている」
あっ……。
リュドヴィックさんの横で、ベルちゃんがしょんぼりしているのがわかる。それを確認したからか、リュドヴィックさんが口を開いた。
「まぁ、お茶くらいならいいんじゃないか?」
さすがシスコン。義妹のそんな姿に耐えられなかったのか、リュドヴィックさんがそんな提案をしてきた。
「おっ、じゃあそうしますか! 場所はどうします?」
オクト君が訊くと、目を輝かせたベルちゃんが言う。
「じゃ、じゃあ! 喫茶店とかどうでしょうか!?」
ベルちゃんの鶴の一声で、場所が決定した。
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「ふふふ、楽しいですね!」
嬉しそうなベルちゃんに、オクト君が笑顔で返す。
ってかさ……少しは周りを気にしよう?
私達が入ったのは、可愛らしいアンティーク調の調度品が飾り付けられた、いわゆる『女性が入ったら喜びそうなオシャレなお店』だったのだ。正直、今の私には……かなり……乙女心をくすぐるお店だ!!
待った待った! それよりも問題は視線だ。三人もの大の大人の男が座っているのだ……それも『イケメン』が。つまり、とにかく目立つ訳で……。
「イグナートさん、どうかしましたか?」
コテンと小首を傾げるベルちゃんに、なるべく笑顔で返す。
「いや、こういうお店、緊張しちゃってさ……。あ、ベルちゃんが悪いとかじゃないから! 食事も美味しそうだしね!」
私が必死に弁明すると、ベルちゃんは嬉しそうに返してくれた。
「ならよかったです!」
ホッとしていると、みんなどんどん注文を決めていく。
ベルちゃんは木苺のパフェ、リュドヴィックさんはコーヒー、オクト君はミートソースパスタを。
……思ったんだけど、『前世の私』がいた世界と食べ物たいして変わらなくない? さすがはゲームの世界だ……。
妙な感心をしていると、みんなから視線を感じる。あ、はい。すぐ決めます。
……待って? サンドウィッチがあるのはどういうこと? 『前の世界』のテレビで観たけど、確かサンドウィッチなんとかさんが考案したからサンドウィッチなんじゃなかった? どうなってるの、この世界……。
私は困惑しながらも、好奇心には勝てず、お店自慢の日替わりサンドウィッチを注文したのだった。