私達は一層目まで降りてきた。役所を背にして、商店街まで進む。
だいぶ歩いて慣れてきたのか、思ったより早く着いた。
「おお……!」
最初に入った時も通ったはずなんだけど、あの時は……テンパってたのかな……印象が全然違うというか……今日の方が、断然景色が良い。
「おお……って。お前、ここ通ったんじゃねぇーの?」
オクト君の鋭いツッコミに、私は苦笑しながら答える。
「あ、いや……なんかあらためて見たらいいなぁって……」
そう言ってはぐらかした。ごめんね!
「そうか? ま、とにかく行こうぜ?」
オクト君に促され、私は商店街に足を踏み入れた。
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商店街は大通りを挟んでお店が並んでいた。お肉屋さんに魚屋さん、青果店に雑貨屋さん……様々なお店の数々に、思わず目を奪われそうだった。
何度も言うけれど、私はルクバトに入る時もここを通っている。なのに、この賑わいは……休日ということもあるだろうけど、本当にあの時の私は、余裕なかったんだな……。
そんなことを思いながら、オクト君と商店街を歩く。ううっ……ウィンドショッピングしたい欲が!!
その時だった。
「あれ? イグナートさん?」
可愛らしい声が聞こえてきたので、そちらを向くと、そこにはピンクのフリルがついたワンピースを着たベルちゃんがいた。
「ベルちゃん!」
つい嬉しくなって頬を緩めると、ベルちゃんの近くから強い視線を感じる。
「……あ、コンニチハ……リュドヴィックサン?」
イケナイ。怖くてカタコトになってしまった。
「……オクタヴィアン卿とイグナート。奇遇だな」
目が笑ってないですって!!
そんなリュドヴィックシスコンお義兄様の服装は、濃い赤のフリルシャツと黒革のベストに、紺色のパンツにブーツだった。
……この世界の服装って、もしかしてバリエーション少ない?
「こんにちは! リュドヴィック卿……とそちらは?」
「義妹のベルだ」
「なるほど! 俺はオクタヴィアン・クレヴリー、よろしくお願いします! お二人は買い物ですか?」
さすがはオクト君。空気を変えてくれた!
「ベルです、オクタヴィアンさん! はい! リュド兄が今日はお休みだからって!」
リュドヴィックさんと一緒に過ごせるのが嬉しいらしい。満面の笑みを浮かべるベルちゃんの愛らしさにホッコリしてしまう。……だから、そんな目で見ないでくださいってお義兄様!