私がこの世界に転生してから三ヶ月が経った。
その間に、私は『騎士』として『勇者』として、リュドヴィックさんをはじめとした色々な人から指導を受け、メキメキと剣の腕を上げていった。
元々の『私』は運動が得意な方だったし、この身体にもすっかり馴染んだしで、最初の頃のような醜態を晒すようなこともなく、また『男』としての自覚も確実に芽生えて来ているのがわかるようになって来た。
そんなこんなで、今日も私は鍛錬……のつもりで本部に行くと、リュドヴィックさんに声をかけられた。
「イグナート。今日からオクタヴィアン卿とオレとの三人で任務に行く」
えっ……任務って……実戦!?
「え、あ、あの?」
「お前もここに来て三ヶ月だ。そろそろ実戦経験も欲しい。そういう訳だから、行くぞ」
相変わらず圧が強い……!!
「了解です……」
正直まだ覚悟なんて出来てないんだけど……。
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「今回の任務を説明する。場所はアスケラとの境界沿いの町、アイナラミだ」
「場所はわかりました。それで、任務というのは?」
オクト君が真剣な表情で、リュドヴィックさんに訊く。リュドヴィックさんは頷くとこちらに視線を再度向ける。
「任務内容は最近、この近辺を荒らしている……ゴブリン退治だ」
ゴブリンってあのゴブリン!?
やった、雑魚だ!!
内心でガッツポーズをする私。困っている人には申し訳ないけど……赦して下さい。初任務なんです……。
「ゴブリンとはいえ油断はするな?」
「ハイ」
……ごめんなさい。
「では、馬車に乗って行く。道中、気を緩めるなよ?」
「了解です、リュドヴィック卿!!」
「は、はい!」
そう返事をしたものの……私は気になることがあり、リュドヴィックさんに訊いてみた。
「あの、町まではどれくらいかかるんですか?」
「ざっと五日間程度だが?」
そんなにかかるの!?
驚いていると、オクト君が私の両肩を勢いよく叩いてきた。
「いっだぁ!?」
「はは! 相変わらずリアクションいいのな!」
そう言ってからかってくるオクト君のおかげで、緊張が解れた。……全く、かなわないなぁ。
「準備はいいか?」
そんな私達のやりとりが終わるのを待っていてくれたらしい、リュドヴィックさんに声をかけられた。
「は、はい!」
「今行きます!」
オクト君と私が返事をすると、リュドヴィックさんが歩き出した。その後を追いながら、気を引き締め直す。
いよいよ……実戦、か……。