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第41話 アイナラミに着いて

 ルクバトを出発してから一週間後。

 野営にも慣れてきた頃……ようやく目的の町、アイナラミ付近まで辿り着いた。


「ここからは徒歩で行く。境界故に、アスケラ魔道士団との共同作戦になる。気を引き締めろ」


「了解です!!」


「わかりました!」


 オクト君と私が返事をするとリュドヴィックさんが頷き、三人で歩き出す。


 アスケラ魔道士団……か。正直、かなりワクワクしている。というのも、アスケラは魔法都市らしいのだ。ルクバトにも魔法専門部署があったりするみたいだけど、一般的ではないんだとか。ちなみに、魔法が使える魔法騎士はいないらしい……残念。


 しばらく歩くと、アイナラミの町が見えてきた。少し南国っぽい木々や家々が並ぶ、The常夏って感じだ。……ちょっと、いやかなり団員服が暑いけどね!


 町に入ると、町人達が期待半分、不安半分って感じの表情で私達を見ている……気がする。


「リュドヴィックさん、どこに向かっているんですか?」


 私が訊くと、リュドヴィックさんは前を向いたまま答えてくれた。


「集会所だ。そこで、町長とアスケラ魔道士団と合流する予定だ」


 なるほど、集会所か。ん? でもゴブリンで魔道士団まで出てくるなんて……そんなにヤバかったりするの? え? 嘘でしょ?


「どうした?」


 私の態度を不審に思ったリュドヴィックさんが訊いてくる。


「いえ、なんでもありません!!」


「そうか? 早く行くぞ」


「はい……」


 ……スミマセン、本当は不安でいっぱいです。


 ****


 集会所に着くと、案内係の人らしい若い女性が現れ、会議室に案内してくれた。


「どうぞ、中で町長がお待ちです」


「対応感謝致します。では、中へ失礼します」


 リュドヴィックさんに続いて私とオクト君もお礼を言って中に入る。すると、そこには壮年の白髪頭の老人……というか多分町長さん? と、藍色のとんがり帽子にローブを纏った、いかにも『魔道士』って感じの人達が三人、綺麗に並べられた長テーブルを挟んで座っていた。


「よくおいで下さいました。私がこの町の町長でございます。そして……」


「我々が『アスケラ魔道士団』である。貴殿らの協力感謝である。我が『アンドレアス・コレット』、上級一等魔道士である。残りの二人が新米共、『ベニー・ブッチャー』と『ダニー・ファウラー』である。よろしくである。」


 赤いロングヘアに、右目に眼帯を付けたイケメンな男の人がそう言って、座っていた椅子から立ち上がり両手をクロスさせて頭を下げた。

 続いて、どっちがどっちなのかわからないけど、残りの二人も同じポーズをとった。

 なるほど、これがアスケラ式の挨拶なのね。


「自分がリュドヴィック・エアラ。ルクバト聖騎士二等騎士です。そして、オクタヴィアン・クレヴリー下級二等騎士とイグナート・アウストラリス下級二等騎士です。今回の任務、よろしくお願い致します」


 そう言って三人でルクバト式の挨拶で返す。アンドレアスさんは私達を見ると、私の方へ視線を向けて来た……気がする。


「ふむ? 片方はともかく、もう片方は妙な魔力であるな? まぁ、良いか。して、町長殿よ。あらためて今回の任務について話して頂きたいである!」


 ……語尾それでいいの? ていうか妙な魔力ってなに!?


 内心疑問だらけだったけれど、立ち上がっていた全員が席に着く。

 それを確認してから、町長さんが話はじめた。


「それでは……あの凄惨な事件から早いもので……」


 えっ、ちょっと待って。凄惨な事件!?


 動揺しているのは私だけではなかったようだ。オクト君と……あと、ベニーさんとダニーさんも驚いていた。


「凄惨な事件ってなんですか?」


 勇敢にもオクト君が訊く。さすが!!


「そのご様子だと、あの村の事件については部下の方々には話されていないのですね?」


 町長さんの確認に、リュドヴィックさんとアンドレアスさんが同時に頷いた。


 二人共知ってたんですか!? なら教えておいて下さいよ!


「コホン。では、あらためてあの凄惨な事件から話させて頂きますね」


 みんなが頷くので、私も頷いてしまったけれど……えっゴブリンってそんなに怖ろしい魔物なの!?

 私の動揺が収まらない中、話は進んで行くのだった――

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