「『全てを見た魔女』……ですか?」
『アウストラリス』って……名前被ってる……。益々気になる……。
そんなことを考えていると、ランベールさんが話を続ける。
「その名の通り、本当に『全て』を見たそうですよ? 過去から現在、そして未来に至るまで……」
「……そんな人が……?」
正直信じられない。だってそれって……つまりはチート? あれ? そういえば……転生したら大体チートになるとか『前世』だと聞いたりしたけど……私、暴走したらしいし、なんなら入院したし……しかも相手ゴブリン……。
「イグナート卿?」
気落ちしていたら、ランベールさんに再び声をかけられた。
「ボクが言いたかったのはですね? イグナート卿のお悩み、もしかしたらその魔女殿に見て頂いたらどうでしょう? と言うことなのですよ」
「はい……?」
いきなりそんなことを言われても……実在するかもわからない人を頼るの? というかそもそも、アウストラリス山ってどこにあるんですか……?
「ふふふ、まぁ考えといて下さい。ただの提案ですので」
「あ、ありがとう……ございます」
戸惑いながら、私はランベールさんに挨拶をして部屋へと戻るのだった。
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「はぁ……」
部屋に戻ると、自分のベッドに寝転がる。疲れた。
思考がグルグルしてまとまらない。とりあえず、深呼吸をして、頭をリセットする。
「『全てを見た魔女』ねぇ?」
ランベールさんと話して得た収穫。本当にそうなら……私の『ギフト』……なんとか出来ないかなぁ……。
「いやいやいや、訳のわからない人頼っちゃダメでしょ!!」
そうだよ、自力でなんとかしなくちゃ。だって……私の力……なんだよね?
《左様。貴殿の力也》
こんな時に来た!! ちょっと……遅いよ!!
私の反論に、この天の声? らしき人? なのかわかんないけど、とにかくその人が続ける。
《貴殿よ。我との邂逅を望むか?》
はぁ? そんなの望むに決まってるじゃないか! なんで私を転生させたのか? それも男に! とか、色々訊きたい事が山ほどありますよ!
《さすれば……招こうぞ》
そう言われた瞬間、私は急激な眠気に襲われ……気づけば眠っていた。